Fさんの日々の記録と山歩き

 山歩きが生き甲斐の団塊世代オッサン、ある事無い事日々感ずるままに綴っていこうと思います。

山岳遭難事故で一番多いのは「道迷い」

2023年02月17日 | 日記

  毎月購読している山岳雑誌「山と渓谷6月号」で、「山岳遭難」の特集が大きく載せられていた。その中で遭難原因としては、「転落・滑落」などを押えて「道迷い」がダントツの一位だった。

 私も長年山歩きをしてきたので過去に幾度か山のアクシデントを起こしたが、幸い命に関わるような大きな事故には遭遇しなかった。・・だからこうしてブログをやってられるんですが。

 今は「GPS」という便利なツールがあるので、そうそう「道迷い」をする事も無くなったが、平成22年6月に単独で南アルプスの転付峠から笊ヶ岳を登った時に、今でも忘れられない「道迷い」を経験しました。その時の山行記録を、下記に抜粋して記してみたいと思います。

            記

平成22年6月11日(金)

転付峠 → 笊ヶ岳 → 生木割山 → 転付峠 

「・・・いよいよ笊ヶ岳へ最後の急登、幸い残雪が殆どないのがありがたい。左の小笊ピークがだんだん低くなる。そしてハイ松を掻き分けて誰もいない笊ヶ岳(2629m)に着いた。私にとって2度目の山頂です。

笊ヶ岳山頂
 前回登ったのは昭和62年の秋、この山に憧れていたOさんが前年富士山で遭難し、彼を偲んで山仲間5名で雨畑から登ったのです。その仲間も2名故人となってしまいました。時の流れの無情を感じます。

 帰りの長丁場を考えるとノンビリもしていられず山頂を後にする。偃松尾山への登り返しに大汗を掻かされ、大ガレを越えて生木割山に戻ると一休み、休憩を終え山頂から踏み跡を降り始める。

松尾山の大ガレ(奥の双耳峰は笊ヶ岳)
 その内ルートを見失ってしまった。コンパスを見ると全く違う方へ進んでいる。一旦山頂に戻り、今度はしっかり踏み跡を確認して降る。ところが又道が判らなくなってしまった。自分では間違いなく北北西へ進んでいると確信しているのに、コンパスは南東を指している。
 コンパスが信頼できなくなった。コンパスが駄目だと現在地すら判らない。一瞬頭が空白になる。右往左往して、ふと左の方を見ると本来見えるはずのない偃松尾山の大ガレが見えている。完全に尾根を間違えて降りたようだ。戻るしかない。必死で高みを目指し、ヤブを漕いで三度、生木割山頂へ戻った。既に1時間のロスだ。

 水を飲んで気を落ち着かせ、今度は最初からコンパス矢印を北北西に合わせ慎重に降る。間違えた道の右手の踏み跡が正しいようで、今度はズッーと北北西を降っている。残雪等に惑わされながらも天上小屋山との鞍部に着いた時は「これで帰れる。」と大きく安堵した。・・・」

 この道迷いは、生木割山頂から誤ったコースを降ったのが原因だった。しかし、この時私の目にはどう見ても正しいルートより誤ったルートの方が明瞭な道に見えたのです。

笊ヶ岳山頂

 笊ヶ岳方面から生木割山山頂を通過する時に、直進すると誤ったルートで、正しいルートは右へ曲がらなければならない。無意識だと人間は直進する傾向があり、過去にも幾多の人が直進ルートを歩いた為、誤ったルートの方が明瞭になったのではないだろうか。

 生木割山は入山者の稀な山で、私が歩いた時も誰一人会わなかった。訊ねる人もおらず、もしあのまま誤ったルートを突き進んでいたら大袈裟な遭難沙汰になっていたかも知れない。

 このアクシデントから学んだ教訓は、「もし山で道に迷ったら、現在地を確認できる正しいルートの位置まで必ず引き返す」その一文に尽きるのではと思います。

 

・・「人生は、イバラの繁る迷い道」・・

コメント
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