雨のち晴れ。最低気温5.2℃、最高気温13.8℃。
泉の沼公園
泉の沼公園
学園通りのイチョウ並木
イチョウの実
南幌町から泉の沼公園の水辺を訪ね、学園通りのイチョウ並木を眺めてきました。
並木の中に実をたわわにつけているイチョウの木があり、まるで、賢治さんが綴った『いてふの実』のようだと思いました。
この作品では、お母さんの木から、子どもたちが一斉に飛び立つ場面があり、悲しむお母さんと旅立っていく子どもたちに、お日様が「あらんかぎりのかゞやき」をなげかけるのです。
透明感のある描写に惹かれ、いつしか賢治ワールドを彷徨することに・・・・・。
ここでは、『いてふの実』の一部を引用させていただきました。
そらのてっぺんなんか冷たくて冷たくてまるでカチカチの灼きをかけた鋼(はがね)です。
そして星が一杯です。けれども東の空はもう優しい桔梗の花びらのやうにあやしい底光りをはじめました。
その明け方の空の下、ひるの鳥でも行かない高いところを鋭い霜のかけらが風に流されてサラサラサラサラ南の方へ飛んでゆきました。
実にその微かな音が丘の上の一本のいてふの木に聞える位澄み切った明け方です。
ー中略ー
東の空が白く燃え、ユラリユラリと揺れ始めました。おっかさんの木はまるで死んだやうになってじっと立ってゐます。
突然光の束が黄金の矢のやうに一度に飛んで来ました。子供らはまるで飛びあがる位輝やきました。
北から氷のやうに冷たい透きとほった風がゴーッと吹いて来ました。
「さようなら、おっかさん。」「さようなら、おっかさん。」子供らはみんな一度に雨のやうに枝から飛び下りました。
ー中略ー
お日様は燃える宝石のやうに東の空にかかり、あらんかぎりのかゞやきを悲しむ母親の木と旅に出た子供らとに投げておやりなさいました。
『ちくま文庫 宮沢賢治全集5』
いつのまにか、10月もあと3日となりました。残りのカレンダーは二枚。今年もあとわずかです。