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今日もまど・みちおさんの詩から。
「だいどころのうわさ」
だいこんが
だいこんおろしに されて
ただ ひとり
だいこんざつ したとき
その いたましさに
ほおを ぬらさなかったのは
にんげんだけだった
と あとで
さらや どんぶりや
ほうちょうや すりこぎなんかが
うわさ しあってたそうだ
『続 まど・みちお全集』から
🍁 🍁 🍁
まどさんのこうした詩を読んでいると、私たち人間は生き物の一つなのだと思うだけではなく、地球の構成要員、いや、宇宙の構成要員の一つなのだと思わせられます。
さらやどんぶり、包丁やすりこぎなどの台所で下働きしているものたちが大根の最期?の場面でにんげんだけが涙を流さなかったとうわさしあっていたようです。
だいこんをおろしている張本人のにんげんもそれを見ているにんげんも心を痛めることなく、なにごともなかったかのように淡々とふるまっていたのでしょう。
大根側に立ってみれば、大根をおろすということはいたましい目にあっていることなのですが、その張本人であるにんげんもそれを見ているにんげんも含めて誰一人としてにんげんは涙をながすことがなかったのです。
うわさをしているのはものたち。「それもそのはず・・・とかみさまならば▼おっしゃりそうだ はるかなむかし▼いきものはいきてないもののなかから▼うまれでたんだ つまりいきてないものが▼いきもののおかあさんだからだ」と別の詩で書いているまどさん。ものたちは人間より上位の位置付けです。ですから、ものたちのうわさはその通りのことと受け取れます。
この詩は宇宙の構成要員の一つにすぎないにんげんが見せた、他のものへの無関心と傲慢さを、だいこんおろしのエピソードを通して綴っているように思えます。
ユーモラスな中にピリッと辛みを含んだこの詩に、またしても、なるほどなーと思ったのでした。