先日、某中部地方で一人暮らしをしている弟が、彼女を家に連れて来ることになりました。はじめてのことなので、我が家はプチパニックに陥り、「母さん、その壁の古田敦也カレンダーははずすべきじゃないか?」とか、「あの子(弟)がグーパンチであけた壁の穴は何で隠せばいいかしら」みたいに、今思うとどうでもいい問題に、家族一丸となって立ち向かいました。
そして当日。仕事から帰ると、弟と彼女は琵琶湖花火大会に向かっていたため、すでに家にはいませんでした。花火終了後にもう一度帰ってくるということ。やはり兄としては、一度は顔をあわせておかねばならなと思うのだけど、正直何を話していいかがわかりません。
「はじめまして」
「はじめまして」 …以下赤字は弟彼女
「弟がいつもお世話になっております」
「こちらこそお世話になってます」
「…」
「…」
「…」
「…」
リアルに考えると、どう転んでもこうなってしまい、気まずいことこの上なしです。将来妹になるかもしれないのだから、ここは第一印象でブチかまさないと話にならない。そこで早速シュミレーションを行うわけだが、日ごろ真面目なことに頭を使い慣れていないせいもあってか、どうしても余計な方に暴走してしまいます。
「はじめまして」
「はじめまして」
「弟がいつもお世話になっております」
「こちらこそお世話になってます」
「お前にしてはびっくりするくらいかわいい彼女じゃないかー」
「えー、そんなこと…、あるけどさあ」 …以下青字は弟
「ちょ、なに言ってるのよ、もう!」
「おお、早速夫婦喧嘩か。仲がいいことで」
「や、やめろよ兄さん」
「もう、知らない(ぷんぷん)」
「はっはっは」
「あははは」
「うふふふ」
ありえない。我等兄弟にこれはありえない。5行目くらいから殴りあう兄弟の地獄絵図が見えます。いや、ここであえて弟を彼女の前で叩きのめし、彼女の母性本能をくすぐるという手もあります。でも、最近めっぽう体格のよくなった弟に逆に叩きのめされるかもしれないのでやめました。
「はじめまして」
「はじめまして」
「ときに○○さん、格闘技は好きかな?」
「は?」
「実は僕は日本拳法という武道をかじっていてねえ」
「え?え?」
「おっと失礼、『グラップラー刃牙』最強トーナメントで一回戦負けした武道についてここで語っても仕方ないな」
「え、えっと、K-1とかなら見たことあります。ボブ・サップとか。(気を使って話を必死で合わせる彼女)」
「じゃあ、あれは知ってます?琉球王家に伝わる琉球王家秘伝本部御殿手(うどんでい)」
「う、うど?」
「いやあ、御殿手十二代伝承者故上原清吉が全盛期にPRIDEのリングにあがったとしたらワクワクしますよね。」
「え、いや、その」
「ヴァンダレイ・シウバのシュートボクセ仕込の殺人ラッシュを軽々といなしていく上原先生。ああ、想像するだけでヨダレが」
「ちょ、兄さんやめろよ!」
「やかましい!今いいところだ、邪魔をするなぁッッ」
…ありえる。ありえるが、結局のところ先のシミュレーションと同じで、兄弟が血で血を洗う千年戦争に突入してしまうこと必死なので却下。
こうして考えると、どう考えても、共通の会話など思い浮かばない。好きなテレビ番組の話?いまどきの女の子が『草野キッド』を見ているとは思えない。お笑いブームにからめてみようか。いや、だめだ。村上ショージと江頭2:50くらいでしか笑えないのに、今時のクサレ芸人の話題なんかされたら発狂してしまう。おいしい食べ物屋さんを紹介しようか。…最近天下一品と王将、すき屋しか行ってねえ。そうだ、このブログを紹介してみよう。…こんなバカブログ、普通の良識ある一般市民にのぞかれるくらいなら舌噛んで死んでやらあッ!
……すまない、弟よ。俺はダメな兄だ。
そうこうしているうちに、結局、時間が遅くなったこともあり、家に戻ることなく弟達はそのまま車で帰っていったみたいです。はあ、どっとはらえ。