「境界に生きた心子」

境界性パーソナリティ障害の彼女と過ごした千変万化の日々を綴った、ノンフィクションのラブストーリー[星和書店・刊]

感情の曝露 (6)

2017年01月24日 19時48分34秒 | 「DBT実践トレーニングブック」より
 
【例】 感情の曝露に対する マインドフルネスを用いる
 
 B夫さんは元妻と、 1週間交替で子供を育てていました。
 
 元妻と接触するたび 不愉快なことを言われ、
 
 何日も怒りを抱えたまま、 仕返しを考えていました。
 
 B夫さんは マインドフルになる練習を試み、
 
 元妻とは無関係の 現在の感情に焦点を当てました。
 
 驚いたことに彼は、 怒りより悲しみを 頻繁に感じていたのです。
 
 悲しみを観察すると、 お腹や肩に 重苦しい感覚を認識しました。
 
 自分はダメな父親だ, 人生を台無しにしてしまった、 などの価値判断が生じました。
 
 彼はこれらの思考を、 走り過ぎる列車だと想像して、 受け流しました。
 
 B夫さんは 悲しみと争いませんでした。
 
 悲しみを感じる権利を 自分に与えました。
 
 悲しみが 波のように盛り上がっては 鎮まるのを見ていました。
 
 彼はマインドフルな呼吸によって、 落ち着けるようになりました。
 
 感情の曝露の練習で、 B夫さんは 元妻への感情に取り組みました。
 
 彼は胸と首に 不穏な圧迫感を感じました。
 
 その怒りを言葉で表現しました。
 
 堅くて、 鋭い感じで、 深い嫌悪感を急増させました。
 
 無力感もありました。
 
 それは絶望感のようでもありました。
 
 物事が決して良くなることがない という感覚でした。
 
 B夫さんは 絶望感を遮断したい 衝動に気付きました。
 
 努めて感情を観察し続け、
 
 感情に捕らわれることなく、 感じたことに注意を当て続けました。
 
 絶望感を行動にしたい 衝動にも気付きました。
 
 彼は元妻に電話して 怒鳴りたい気になりました。
 
 そして、 車に乗って木に衝突する イメージが浮かびました。
 
 元妻は悪魔だ, 人生を目茶苦茶にされた、 などの価値判断が生じました。
 
 彼は努力して、 ひとつひとつの思考を列車に乗せて、 受け流しました。
 
 驚くことに、 絶望感は薄れ始めていったのです。
 
 後悔に近い感覚にまで 和らいでいきました。
 
 B夫さんは呼吸に焦点を戻し、 暗い落ち着きのようなものを感じました。
 
 素晴らしい感覚ではありませんが、 まだ我慢できるものでした。
 
〔「弁証法的行動療法 実践トレーニングブック」星和書店
(マシュー・マッケイ,ジェフリー・C・ウッド,ジェフリー・ブラントリー)
 訳/遊佐安一郎,荒井まゆみ〕より
 [星和書店の許可のうえ掲載]
 

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