実は私も騙されてしまったのだった。『夜のみだらな鳥』を読んだのはずいぶん前のことであるし、ヘンリー・ジェイムズの言葉が載っているなどということも忘れていた。しかし、ヘンリー・ジェイムズは生涯結婚せず、独身を通したのに、なんで息子がいるのか、おかしいではないかと思ったが、「夜のみだらな鳥」の原語を知りたいと思ったこともあり、ネットにあるThe Letters of Henry
Jamesのサイトに当たってみた。
1920年にPercy Lubbock編集によりCharles Scribner’s Sonsという出版社から出ている。PDFファイルで掲載されているのは第1巻のみで、それだけで430頁以上ある。
この中からどうやって目的の手紙を探すか? 目次を見れば見当がつくと思い、宛名を順番に見ていくとTo Henry James, juniorというのがあった。
これだろうと思い、さほど長くはない本文をつたない英語力で読んでみたが、それに該当する部分はない。しかもこのjunior、Harryという名の人物がなんでjuniorなのか分からない。ヘンリー・ジェイムズが養子をもらったという話も聞いたことがない。
同サイトにはテキストファイルも掲載されているので、キーワードで検索するしかないと思い、ワードに読み込んで検索してみた。ところがbirdsで検索しても、wolfないしwolvesで検索してみてもそれらしい部分は出てこない。
ということで諦めた。現物に当たってみよう。「世界の文学」を見るとドノソ自身が「父と母に捧げる」との献辞のあとに、エピグラフとしてヘンリー・ジェイムズの文章を掲げている。そこには「その子息ヘンリーとウィリアムに宛てた父ヘンリー・ジェイムズの書簡より」という説明が付されている。
それで納得した。実はヘンリー・ジェイムズの父親は息子と同じヘンリー・ジェイムズという名前だったのである。その子息ヘンリーとウィリアムというのは作家ヘンリー・ジェイムズと哲学者ウィリアム・ジェイムズのことなのである。
つまりブログ氏はヘンリー・ジェイムズの父親の名前を知らなかったために、このヘンリー・ジェイムズをヘンリー・ジェイムズの父親ではなく、作家本人と思い込んでしまったわけである。ちなみに父親は宗教哲学者であり、作家ヘンリーはHenry James, juniorであったわけで、英語の検索エンジンではHenry James, juniorで作家ヘンリーのことが出てくる。
ところでエピグラフとして掲げられている文章はオビの文章のように簡略なものではない。鼓直訳を紹介しよう。
「分別のつく十代に達した者ならば誰でも疑い始める。人生は道化芝居ではない。お上品な喜劇でもない。それどころか人生は、それを生きる者の根が達している本質的な空乏という、いとも深い悲劇の地の底から花を開き、実を結ぶのではないかと。精神生活の可能なすべての人間が生得受け継いでいる貨財は、狼が吠え、夜のみだらな鳥が啼く、騒然たる森なのだ」
父ヘンリー・ジェイムズと
息子ヘンリー・ジェイムズ
Jamesのサイトに当たってみた。
1920年にPercy Lubbock編集によりCharles Scribner’s Sonsという出版社から出ている。PDFファイルで掲載されているのは第1巻のみで、それだけで430頁以上ある。
この中からどうやって目的の手紙を探すか? 目次を見れば見当がつくと思い、宛名を順番に見ていくとTo Henry James, juniorというのがあった。
これだろうと思い、さほど長くはない本文をつたない英語力で読んでみたが、それに該当する部分はない。しかもこのjunior、Harryという名の人物がなんでjuniorなのか分からない。ヘンリー・ジェイムズが養子をもらったという話も聞いたことがない。
同サイトにはテキストファイルも掲載されているので、キーワードで検索するしかないと思い、ワードに読み込んで検索してみた。ところがbirdsで検索しても、wolfないしwolvesで検索してみてもそれらしい部分は出てこない。
ということで諦めた。現物に当たってみよう。「世界の文学」を見るとドノソ自身が「父と母に捧げる」との献辞のあとに、エピグラフとしてヘンリー・ジェイムズの文章を掲げている。そこには「その子息ヘンリーとウィリアムに宛てた父ヘンリー・ジェイムズの書簡より」という説明が付されている。
それで納得した。実はヘンリー・ジェイムズの父親は息子と同じヘンリー・ジェイムズという名前だったのである。その子息ヘンリーとウィリアムというのは作家ヘンリー・ジェイムズと哲学者ウィリアム・ジェイムズのことなのである。
つまりブログ氏はヘンリー・ジェイムズの父親の名前を知らなかったために、このヘンリー・ジェイムズをヘンリー・ジェイムズの父親ではなく、作家本人と思い込んでしまったわけである。ちなみに父親は宗教哲学者であり、作家ヘンリーはHenry James, juniorであったわけで、英語の検索エンジンではHenry James, juniorで作家ヘンリーのことが出てくる。
ところでエピグラフとして掲げられている文章はオビの文章のように簡略なものではない。鼓直訳を紹介しよう。
「分別のつく十代に達した者ならば誰でも疑い始める。人生は道化芝居ではない。お上品な喜劇でもない。それどころか人生は、それを生きる者の根が達している本質的な空乏という、いとも深い悲劇の地の底から花を開き、実を結ぶのではないかと。精神生活の可能なすべての人間が生得受け継いでいる貨財は、狼が吠え、夜のみだらな鳥が啼く、騒然たる森なのだ」
父ヘンリー・ジェイムズと
息子ヘンリー・ジェイムズ