もうチョットで日曜画家 (元海上自衛官の独白)

技量上がらぬ故の腹いせにせず。更にヘイトに堕せずをモットーに。

イタリアが中国の軍門に下る

2019年03月24日 | 中国

 中国の習近平国家主席の欧州行脚が成果を上げている。

 イタリアがG7では初めて中国の一帯一路構想協力の覚書を締結し、すでに覚書を交わしたギリシャ・ポルトガル等を含めれば欧州では14か国が中国に飲み込まれようとしている。また覚書の締結を拒否したスペインもヴァレンシア港のコンテナ埠頭が中国企業の手に落ち、ギリシャのピレウス港も同じく中国企業に買収されて、地中海は既に中国の海と化している。では何故に中国は欧州に伸長できるのだろうかと考えれば、アメリカの政戦戦略の失敗によるNATOの弱体と、ギリシャ・イタリアの救済失敗とイギリスの離脱というEUの亀裂という空白に、中国がつけこんだ結果であると思う。トランプ大統領は中国経済さえ封じ込めれば中国の膨張は抑止し得ると考えて対中貿易戦争を始めたが、中国は対米関税交渉ではアメリカが中国経済最大のパートナーと信じ込ませる傍らで、アメリカ市場に代わるものとしてヨーロッパを想定していたのではないだろうか。また、トランプ大統領が西側同盟国に対しても関税障壁を設けたことと、米軍駐留経費の増額やNATO分担金の修正を持ち掛けて”支払額に応じて軍事力を提供”という米軍の傭兵化とも取れる政策を推進したことが、列国の急速なアメリカ離れと中国寄り転換を招いているものと考える。また習近平氏の欧州歴訪に歩を合わせて、北朝鮮は開城の連絡事務所を一方的に閉鎖して北朝鮮の首席報道官たる文大統領にも踏み絵を迫っている。このような中国の大攻勢は、2013年に中国がAIIB(アジアインフラ投資銀行)を発足させた時点で計画されていた戦略と思われ、債務国にはさらなる債務を押し付け、債務国以外にはAIIBに対する拠出金の保全のための行動を求めることで、親中政権の誕生もしくは中国寄り政策の拡大を図ったものと考えられ、現在まで想定する成果を上げているように感じられる。西側民主主義諸国は理念として”政経分離”を旗印として掲げているものの、民主主義国家では経済が政治を牽引しているのが実情であり、習近平氏や中国共産党指導部は我々以上に民主主義社会のアキレス腱を熟知して戦略を組み立てているものと思わざるをえない。

 現在イギリスのEU離脱問題は2週間の離脱延長が実現したものの、イギリス議会の様相を見れば合意なき離脱に至るのは確実と思われる。イギリスはAIIBの加盟国であるとともに、既に原発建設と電力会社が中国の影響下にあることから、中国の要求次第ではアメリカの中東戦略の拠点であるディエゴガルシア島(英領で全島をアメリカに貸与)の継続使用にも黄色信号が点滅するかもしれない。トランプ大統領の中国封じ込めには経済力を削ぐのが近道とする戦略は正しいと考えるが、同盟国に対する関税障壁等は西側の足並みを乱れさせるのみで、結果的に中国を利するものであることを理解して欲しいものである。