ドイツが主力戦車レオパルト2のウクライナ供与に同意した。
レオパルト2についてはNATO加盟国で約2千両保有しているとされるが、生産国であるドイツに対してポーランドを始めとする保有各国が供与承認を強く要求していた。
ドイツの承認決定によって、合計で100両以上がウクライナに供与される見込みで、さらにアメリカのM1エイブラムス戦車供与の障壁も取り除かれたと報じられているが、ウクライナにおける早期戦力化は容易では無い様に思える。
ウクライナが戦車を手にするのは早くても4月頃で、ドイツ国内で先行される戦車兵の教育訓練も数ヵ月が必要とされる。単に兵員のみ考えても、100両以上の戦車を運用するためには、戦車兵数百人に整備・補給・通信等の兵站要員を加えれば2千名近くが必要となる。兵站の多くに民兵や志願者を充当するとしても、戦車兵については一進一退の戦場からの正規兵抽出とせざるを得ないために、一時的には戦場の兵力バランスが崩れることも懸念される。閑話休題
アメリカのシンクタンク戦略国際問題研究所(CSIS)が、「ウクライナに対する支援によってアメリカの継戦能力が低下している」という気懸りな見解を公表した。
既にアメリカは、ウクライナに高性能兵器の携帯型対戦車ミサイル「ジャベリン」・高機動ロケット砲「ハイマース」や通常兵器155㍉榴弾砲を供与しているが、これらは何れも新規調達と備蓄在庫放出であり「防衛産業に大きな負担」を掛けるとともに「一時的な継戦能力低下」を招いているとしている。例示されているところでは、「ジャベリン」は7年分の生産力に匹敵し、榴弾砲の弾丸107万発は「供給可能な在庫の重大な縮小」を招いたとしている。
ロシアが30万人?の部分動員を行ったとき、拙ブログで「30万丁もの小銃が?」と書いたが、案の定、錆びたり銃床の欠けた小銃を貸与された兵士の例が報じられた。
軍需工場の生産ラインは、平時における政府の調達量(安定的であるが少量)に備えて整備されているので、米ロのような軍事大国にあっても急速な生産拡大は不可能であるようである。今回のCSIS提言も台湾有事を加味して「十分な弾薬と兵器システムの在庫を確保することが極めて重要で、侵攻が始まってから増産するのでは遅すぎる」と警告している。
防衛産業が脆弱で、主要兵器の多くを輸入調達に頼っている日本では「十分な弾薬と兵器システムの在庫確保」は更に深刻である。
これまで、防衛官僚や財務官僚は「正面兵器の導入整備」は計るものの。それを維持することには熱心で無かったために、下々たる制服は「タマに打つ、タマの無いのが、タマに傷」とあきらめていた。
今国会では、防衛費の増額が論点であろうが、正面兵器の質・量を議論するのは当然としても、その能力を持続する方策も念頭に置いた議論であって欲しいと願っている。
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