もうチョットで日曜画家 (元海上自衛官の独白)

技量上がらぬ故の腹いせにせず。更にヘイトに堕せずをモットーに。

H2Bと「こうのとり」に誘われて

2020年05月25日 | 科学

 5月21日に国際宇宙ステーションへの物資補給機「こうのとり9号機」を搭載したH2Bロケット9号機が宇宙航空研究開発機構(JAXA)の種子島宇宙センターから打ち上げられ、予定の軌道に投入された。H2Bロケット、こうのとりともに最後の打ち上げと報じられているので、日本のロケットとISS補給機について勉強した。

 H2ロケットは日本が保有する最大のロケットであり、これまでH2Aと改良型のH2Bで44回発射され43回成功(成功率97.7%)の実績を有し、7月以降に予定されている3回の打ち上げ(英インマルサット社通信衛星、UAE火星探査機アル・アマル、先進光学衛星)を最後に使命を終える。H2ロケットは、成功率97.7%と世界基準95%以上をクリアーする信頼性を誇っているが、製作費や打ち上げ費用が高いために外国からの打ち上げ受注は芳しくなかったとされる。後継機として開発したH3ロケットは本年度中に先進光学衛星を搭載して試験機1号機として打ち上げる予定とされているが、諸外国からの受注のためには複数回の成功が必要とされるために、少なくとも海外からの依頼は2~3年は無理であろうと推測する。素人考えでは、H2の運用と並行してH3の試用を行えばと考えるが、NASAの1/10の予算では不可能なのだろう。ISSへの補給については、日本の「こうのとり」の他、アメリカの民間宇宙企業スペースX社で開発された無人宇宙船ドラゴン、ロシアのプログレス補給船、欧州の欧州補給機があるが、プログレス補給船と欧州補給機はドッキングハッチが小さいために国際標準実験ラックや定期的に交換するバッテリーユニットを輸送することは出来ないらしい。しかしながら、両機はこうのとりが保有しない、ISS推進剤の補給能力を持つとともに進行方向最後尾にドッキングして自らの推進機能を利用してISSをリブースト(自然に高度が下がっていくISSを必要な高度まで押し上げること)することができるので、宇宙飛行士の交代を含めてISSに対する補給は4者が分担していたものと思う。H2ロケットの後継機は開発されたが、こうのとりの後継機は取り沙汰されないので、日本はISSへの補給について当分行えないのでは?と思っている。しかしながら、これまでJAXAではできなかったISSからの資料の持ち帰り実験を重ねていることから、H3ロケットの信頼性が確認された際には再び「こうのとり2」が活躍する日もあるのかも知れない。

 参考までにH2とH3の主要緒元を列記すると、H2B(全長:56.6m、重量:531t、ペイロード:16.5t)、H3(全長:63m、重量:574t、ペイロード:20t(推定))である。月近傍有人拠点と月面基地の建設、火星への有人飛行計画等、宇宙開発は着実に進歩しているが、それらのうち自分が見届けられるものは少ないとは思うものの、JAXAの健闘に期待。 恥ずかしながら、これまでJAXAをジャッカと呼んでいたが、ジャクサと呼ぶべきことも初めて知った。


内閣不支持率と賭け麻雀の怪

2020年05月24日 | 報道

 最新の世論調査で、内閣不支持率が支持率を上回る傾向の結果が出た。

 各社の調査結果は、朝日新聞(支持33、不支持47)、毎日新聞(支持27、不支持64)、NHK(支持47、不支持45)、TBS(支持47、不支持50)、テレ朝(支持33、不支持49)、フジ(支持44、不支持42)となっており、フジTV(FNN)以外は、軒並み不支持率が上回っている。各社の調査方法や調査母数は大同小異でありながら、これほど差が出るのだろうかと疑問に思う。また、数字が報道各社の報道姿勢と全く軌を一にしていることには疑問と感じる以上に恣意的な作為すら感じられる。もはや日本のジャーナリストに対して不偏不党や公正は求めないが、この結果をどう見ればよいのだろうか。世論調査の結果はさておいて、もし自分が回答者となった場合には、何を以て支持・不支持と判断・回答すればよいのだろうかと不安である。外交?、経済?、安全保障?、福祉?、憲法?、まして総合評価となると全く判断に迷うところであるが、ただ一つ言えることは高級官僚の賭け麻雀を内閣の責任とはしないことである。今回の世論調査に、賭け麻雀問題責任の所在を問う設問を設けた例では6割強の人が総理大臣の責任と捉えており、それが内閣不支持急上昇の原因かとも推測されている。冷静に考えれば、自分の周りにも仕事はできるのに「これだけは?」という人が少なからず存在するし、人間何かしらの欠点を持つもので凡そ完全無欠の人などいないと思っている。その欠点が社会悪や犯罪に結びつかない限り社会はそれを容認しているのではないだろうか。賭け麻雀検事長を総理の責任とする人にとって相応しい高級官僚像はどのような物であろうか。古来、人畜無害の人を「沈香も焚かず屁もひらず」と評し、人情の通じない人を「石部金吉鐘兜」と敬遠する。奢侈を禁じた松平定信の「寛政の改革」は民衆の反発で瓦解し、「白河の清きに魚もすみかねて もとの濁りの田沼こひしき」の狂歌を後世に残している。また、「水清ければ魚棲まず」とも言い、秋霜烈日の為政者や監督者に対しても何らかの人間味を求めるのは世の常である。賭博罪にも該当しないであろう程度の官僚の行動を以て、総理の責任とするのは如何なものであろうか。もし、その判断が正義であるとするならば、全企業・全団体のトップは支持できない存在と化してしまうだろう。

 映画「兵隊やくざ」で有名になった有馬頼義の「大宮喜三郎伝」では、前科者の大宮二等兵は内務班で決定的に嫌われないために、ひ弱な古年兵にだけは絶対に頭が上がらない体を作為するが、社会生活を営む上では何らかの弱みを見せた方が円滑であるという機微を見事に設定していると思う。幾ばくかの弱点を持つ人の方に、より親しみを感じるのは自分だけだろうか。内閣支持率調査の疑問視から賭け麻雀検事長の擁護になったが、御容赦を。更に反省を一つ。自分は、前述の「沈香(じんこう)」を「ちんこう」と覚えていたので、これまで特異顔で講釈したことがあるのでは冷や汗をかいている。


ロシアの飛び地「カリーニングラード州」を学ぶ

2020年05月23日 | 歴史

 アメリカが領空開放条約からの脱退を宣言した。

 脱退の理由は、核弾頭搭載可能なロシアの新型弾道ミサイルが配備されたとされるカリーニングラード州に対するNATOの査察飛行が制限されたとするものである。今回は、カリーニングラード州の今昔を勉強することとした。カリーニングラード州(州都は同名)は、バルト海に面し人口は968,200人(2004年)、面積は15,100㎢(ほぼ岩手県)、ポーランドとリトアニアに囲まれたロシアの飛地領で世界有数の琥珀の産地(シェア90%)とされている。カリーニングラード市は1255年にドイツ人の東方植民によって開拓(ドイツ領)されケーニヒスベルクと呼ばれていたが、1466年にポーランド王の直接の所有物、1660年にポーランドから独立してプロイセン公国、第一次世界大戦後にポーランドが独立を果たしたため、ケーニヒスベルクは東西に分割されて「西プロイセン」はポーランドに、州都ケーニヒスベルクを中心とする「東プロイセン」はドイツ領となったが、既に東プロイセンはドイツ本国との陸上路が閉ざされた飛び地となってしまった。ドイツで政権を握ったヒトラーは飛び地解消を名目にポーランドに侵攻し、ポーランドと相互防衛条約を結んでいた英仏がドイツに宣戦布告して第二次世界大戦が始まった。大戦末期、ソ連軍が東プロイセンに進撃を始めた1944年10月頃からは約37万人にのぼる市民が西部ドイツへ脱出した。ドイツの戦後処理が話し合われたポツダム会談において、ケーニヒスベルクはソ連領となり東プロイセンは南北に分割され、南部はポーランド領に、ケーニヒスベルク市を含む北部はソ連に編入された。戦後もドイツ系市民約2万人が同市内に残留していたが、1947年にスターリンは市内に残留していたドイツ系市民の追放を決定し、ドイツ系残留市民は全員ドイツのソビエト占領区域(旧東ドイツ)へ移送された。それと前後して大量のソ連市民が市内へ移住し、1946年7月ケーニヒスベルクはカリーニングラード市、区域全体はカリーニングラード州とロシア語名に改称された。その後、多くの歴史的建造物がドイツ時代の遺物として破壊されるとともに、カリーニングラード州全域が軍事拠点となりソ連でも重要な不凍港としてバルト艦隊の拠点とされる等外国人の立ち入りが制限された。以上の歴史を辿ってカリーニングラード州は今もロシアの飛び地であるが、隣国のポーランドとリトアニアがEUとNATOに加入したことによってロシアにとっては西側に打ち込んだ楔としての重要性が以前にもまして増大している。

 カリーニングラード州の飛び地を勉強したが、植民地支配の名残や民族・宗教に原因する飛び地が世界中に存在している。日本でも県単位での飛び地は8都県もあり、市町村単位ではほぼ全都道府県に存在している。江戸幕府の天領支配や明治維新前後の住民の確執に基づくものが殆どであると思うが、御一新での廃藩置県後150年を経過しても解消されない。普通に考えれば、飛び地は経済活動や市民生活上不便この上もないと思うが、それらを超越する何かがあるのだろうし、国と国との関係ではなおさら複雑な事情があるのだろう。


金鵄勲章と九段の母

2020年05月22日 | 歴史

 同居人の蔑視を避け、「九段の母」をヘッドフォンで聞いていた。

 ♬「・・金鵄勲章が見せたいばかり・・」、ハテ、金鵄勲章の詳細を知らないと勉強した。金鵄勲章は、日本唯一の武人勲章とされ、武功のあった陸海軍人および軍属に与えられたもので、1890(明治23)年紀元節(2月11日)の「金鵄勲章創設ノ詔勅」によって創設され、「武功抜群ナル者」を「功一級」から「功七級」までの7等級に分けて授与したしたものであり、1947(昭和22)年の日本国憲法公布によって廃止されたことを知った。勲章名の「金鵄」は、神武東征の際に神武天皇の弓にとまった黄金色のトビ(鵄)が光り輝き、長髄彦の軍兵の目を眩ませたという伝説に基づいている。大東亜戦争中には中断されていた生存者叙勲制度が1963(昭和38)年に再開されて他の勲章の叙勲は再開されたが金鵄勲章は廃止されたままで、公の場での佩用すらも禁止されていた。金鵄勲章叙勲者は、名誉と年金の復活を求めて活動した結果、当時の中曽根首相の後押しもあって1986(昭和61)年には佩用が再び認められている。金鵄勲章は戦功に応じて授与されるため、将官や皇族軍人といえども相応の武功がなければ授与されなかった。受賞者は、延べ(重複受賞もあり)約100万人(日清戦争:約2000人、日露戦争:約10万9600人、第一次大戦:約3000人、満州事変:約9000人、支那事変:約19万人、大東亜戦争:約62万人)とされているが、各戦争における戦死者数や受勲の割合が必ずしも一致しないので、戦死=金鵄勲章という単純なものでは無く、武功が重視されたものの、武功の解釈が世相を反映して変化していることも考えられる。また、陸海軍大臣・参謀総長・軍令部総長としての功績も「武功」とされたことによって、寺内正毅陸軍大将(総理大臣・朝鮮総督)や米内光政海軍大将(総理大臣)のように前線に出ずに功一級を受けた例もある。 金鵄勲章の受勲者が尊敬されたことは、宮中席次において、金鵄勲章の功級は同じ数字の勲等よりも上位にあったことにも示されている。また肩書の記述では、職、階級、位階、勲等、功級、爵位、学位、氏名となり、資料には「枢密院議長元帥陸軍大将従一位大勲位功一級公爵山縣有朋」と例示されていたし、故郷にあった戦死者の墓碑銘も「陸軍伍長 勲六等 功六級○○」と記されていたことを思い出したが、終戦までの国民にとっては金鵄勲章に込められた報国を誇りとした心情は我々の想像を超える高見であったのだろう。

 現在の自衛官には定年後における生存者叙勲の道はあっても、戦死者に対する叙勲制度は無いように思える。殉職者に対する国家公務員災害補償法による一時金(賞じゅつ金)制度は有難いものであるが、功績を示すには不十分であるように感じられる。子孫が胸を張って父祖の功績を語り継げる証としても、金鵄勲章のような武功勲章・武人勲章は必要なのではないだろうか。


黒川検事長と賭けマージャンに思う

2020年05月21日 | 報道

 中(渦中)に置かれている黒川検事長の賭けマージャンが報じられた。

 本朝に黒川氏の辞任が速報されたが、賭けていたか否かは兎も角、マージャンをしたのは間違いないところだろう。卓を囲んだとされる記者らを擁する朝日新聞社は賭けの事実は不明とするものの事実を認め、産経新聞社は取材の一端であるかのコメントを出している。麻雀が行われていたのが雀荘やホテルなどではなく、マンションの1室とされていることから「なんでバレたのだろう」と云うのが最初に浮かんだ。メンバーから推測して、黒川氏に贈賄するための所謂”接待麻雀”ではないと思われるので、別の思惑でリークされたものではないだろうかというのが、陰謀・裏読み好きの自分の感想であるが、本日の主題は黒川氏ではなく麻雀である。麻雀の起源には諸説あり、紀元前6世紀頃に孔子が発明したという説もあるが、最も有力な説は清朝中期に古来からのカードゲームに「骨牌」というゲームを合体させてというものであるらしい。日本に伝わったのは明治末期であるが、一般に認知されるようになったのは関東大震災の後とされている。本家の中国では、1949(昭和24)年に全てのギャンブルと共に禁止されたが、文化大革命終結後の改革開放に伴ってギャンブルでない麻雀は許され、1985(昭和60)年には禁止令が解除されたが、近年は掛け金の高騰によって賭博として自治体が掛け金を制限(缶コーヒー程度)しているともされている。日本ではアメリカ発祥のルールを盛り込んだリーチ麻雀と云われる独自のルールで発展し、昭和30年代に麻雀ブームが起きて週刊誌も挙って解説記事を連載するようになった。現在では雀荘の数や麻雀専門誌の数は減少しているが、形を変えたコンピュータゲームやオンラインゲーム、更には、効率性の思考や指先の運動が認知症の予防にも役立つという説もあって、麻雀人口は2018年時点で580万人とされている。麻雀人口はアジア全体では3億5千万人に達し、2007年には中国で第一回「世界麻雀選手権大会」が開催されたように、CS放送では番組が成立するほどの知的ゲームの側面を持つ一方で、強い者が圧倒的に勝つ囲碁や将棋と違って運に左右されることも多いために、賭博が成立する余地が残されている。法的な規制時期は勉強不足であるが、美濃部都知事が公営ギャンブル廃止を主張する前後から麻雀の賭け金額論争が起きて、結局”「付き合い」と社会通念で許容される程度の金額は”大目に見よう”で何となく落ち着いたと記憶している。自分の経験であるが、雀荘で徹夜麻雀をしていた時に警察の手入れを受けたことが2度あるが、咎は店主の風営法の時間外営業であり自分を含めた客が賭博の容疑で咎められることは無かった。闇バカラ賭博のように多くの賭博が「テラ(寺)銭」を胴元が集めるが、特異な場合を除いて麻雀にはテラ銭が不要であることも賭博(賭場図利)罪が成立しにくいと思っている。

 冒頭の黒川検事長には麻雀愛好家としては、同情を禁じ得ない。検事の定年延長が論じられる時・集近閉の3密自粛時期、脇が甘い誹りは免れないが、卓を囲む相手が報道関係者であるため「まさか」の気持ちで「ハニートラップ?」に掛ったのではと、故ない援護を結言に口説終演。