もうチョットで日曜画家 (元海上自衛官の独白)

技量上がらぬ故の腹いせにせず。更にヘイトに堕せずをモットーに。

難聴哀歌

2023年04月16日 | 芸能

 定期的に集まっている高校クラス会のマドンナから、所属する合唱会の定期演奏会に誘われた。

 自分は難聴で、それも30代後半から常時耳の中でディーゼルエンジンやガスタービンエンジンが回っているために聴力は低下しており、特に一般人の可聴域とされる20~2万Hzのうち2000~5000Hzにおいては極めて低下している。自衛隊在職時の聴力検査でも聴力不足と診断されていたものの治療法も無いために放置していたが、加齢による聴力低下も加わってしまった。
 耳鳴りの原因については「多分これだろう」というものはあるものの、仄聞するところでは難聴の原因を特定することはできないとされているらしい。
 現在、自衛艦の機関室にはヘッドセット型のイヤーマフが常備されて機関員には騒音下での装着が義務付けられているが、かってはトイレットペーパを丸めて耳の穴に詰めての自己防御しかなかった。加えて、緊急時など一時的に機関室に飛び込む機関士などにはその余裕もなく、無防備で過ごすのが一般的であった。
 自分が思い当たるのも、このような状況下での出来事に由来しているので職業病や公務災害に近いものと思っているが、軍医殿からも因果関係を認めることはできないだろうと一蹴されて今日に至っている。
 そのために、耳鳴りに勝る大音量が常であるミュージシャンのコンサートには何とか付いて行けるものの、ピアニッシモ表現が多いシンフォニーについては耳に聞こえてこない部分が多いし、か細いピッコロの独奏になると全く認識できない。

 このような状態ではと、冒頭のお誘いを泣く泣く・かつ丁重にお断りしてマドンナとの邂逅もあきらめざるを得なかったが、実は、難聴以上にメロディーからイメージを膨らませるという能力・情操が全くないことの方が大きい。
 音楽は、社会生活の中で他人とのコミュニケーションを維持するための必須事項ではないものの幾ばくかの知識は必要であるために雑学として持ってはいるものの、これは「音楽」ではなく「音学」に過ぎないと思っている。かっても書いたことであるが、宴席で音楽を熱く語る艦長に、「音楽なんぞ所詮、原始人のコミュニケーションツールに過ぎない」と云い放って「お前には音楽が判っとらん」と酷評されたことがある。
 後天的な難聴を予防することに加え、「生活に潤いを与えてくれる」とされる音楽に対しては、演奏の天賦の才は無理としても聴くことができる情操は養っておくことが必要であると、今更に反省している。


英国王戴冠式への秋篠宮殿下御出席に思う

2023年04月15日 | 天皇・皇室

 5月6日のチャールズ新英国王の戴冠式に秋篠宮殿下ご夫妻が御出席されることが閣議決定された。

 秋篠宮殿下の御出席について天皇陛下が御出席されるべきでは?という意見もあると報じられているが、自分は今上陛下即位の礼に高齢であった当時のエリザベス女王に代わってチャールズ皇太子が参列されたことから、当然であるのではと思っていた。
 また、アメリカでも副大統領が代理参列することに日本と同様な意見もあると報じられ、加えてこれまでもアメリカの大統領が参列したことは無いとされていることについて自分は、独立戦争の確執以降の慣例だろうとも思っていた。
 しかしながら、英国政治外交史を専門とする関東学院大学国際文化学部の君塚直隆教授によれば、「各国の王や女王の序列は在位歴によって決定されるので、戴冠式主役の新王や新女王よりも在位期間の長い王・女王が参列すれば祝福する側が格上となるので儀礼上好ましくないとするイギリスの伝統・慣習に依っている」のが真相で、国際儀礼には慣例が極めて重視されるようである。
 そんなこともあってか、英国から届く「招待状」には宛名の記載はないとされ、招待状を受け取った各国も皇太子や№2が出席することで英国発祥の慣例に従っているようである。
 1953年のエリザベス女王戴冠式には当時の明仁皇太子殿下(現上皇)が御出席された。当時小4であったが皇太子殿下の渡欧に関する新聞報道は鮮明に覚えており、未だ空路が一般的でなかったために往復は船便を利用されたが同行記者の船中記は興味深く読んだ記憶がある。
 後に知ったことであるが、 エリザベス女王の戴冠式は第2次大戦終結後まもないことから、対日感情は最悪で皇太子殿下に用意されたのは末席であったが、それを見かねて後にサウジの国王となるファイサル王子が最前列の自分の席の近くに招かれたそうで、このことも日本を国際舞台に招き入れる引き金にもなったとされている。

 エリザベス女王の戴冠式に招かれたのが戦後における皇室外交の出発点と思うが、皇太子殿下の御出席は日英同盟の過去とも相まって対日感情の沈静化も加速させたと思っている。
 恐れ多いことではあるが、このことが今上陛下の英国留学の遠因のひとつともなったのではと推測するので、秋篠宮殿下には悠仁殿下も同行頂きたいものであるが、不測の事態を考えれば皇位継承順位の第1・2位のお二方を同行頂くのは非常識であるのかもしれないと危ぶむものの、ブータン訪問の経緯もあるので許されるものかとも思っている。


陸自機の墜落に思う

2023年04月14日 | 自衛隊

 宮古島沖に墜落した陸自機の本体と思われる水中物標を発見したことが報じられた。

 通常の交信後2分間で機影が消えたとされていることから、墜落原因について数々の憶測が為されているが、今後の調査に待つべきと思っている。
 本日は、艦艇の装備に関する「都市伝説的」あれこれである。
 昭和40年代以降、大型艦から順次全艦冷暖房が取り入れられたが、最初に全艦冷房を採用した「あまつかぜ」では、乗員のためではなく対空ミサイル管制システム冷却が目的であるという噂が専らであった。まだ官民ともに全館(艦)冷房や区分冷房のノウハウを持たなかった時代であるので、機器冷却のための最適温度を保つために乗員は夏でも防寒ジャンパーを着用することもあったが、このことは自衛艦のみならず米艦でも同様で、昭和50年代後半に見学したイージス艦でも少なからぬ乗員が防寒ジャンパーを着ており、半袖制服の我々は冷え切って震えたことを記憶している。その後、戦闘区画と居住区画を分ける通風(冷暖房)形式に改められたが、これとても有事のNBC防御が主眼であり平時における居住環境改善は付随的であると思っている。
 現在、護衛艦はフィン式の減揺装置を装備しているために動揺が少なくなって乗員の疲労は軽減されたが、これとても元来はヘリ搭載艦における発着艦のために装備した由来の物であって、ヘリを運用しない旧型のミサイル艦には装備されなかった時代もあった。
 長々と都市伝説を記述したのは、自衛隊(軍隊)にあっては、有事における能力発揮が全てに優先し、そのためならば乗員の快適さや安全についてもなおざりにされる場合があり得るということを言いたいためである。これまでも戦闘力確保のために無理を重ねた例は多い。日清戦争に備えて30.5cm砲を装備した清国北洋艦隊の主力「鎮遠・定遠」に対抗すべく32㎝砲搭載の三景艦(松島・橋立・厳島)を建造したが期待通りの戦果には結びつかなかった。
 対米戦劈頭では米軍を圧倒した零戦・一式陸攻も、防弾性能を犠牲したものであったために中期以降は「ワンショットライター」と評価されるに至った。

 墜落した陸自ヘリコプタについても、着水フロートの不装着などを指摘する意見があるが、それとても搭乗員や指揮官が飛行任務完遂のための最適装備と判断した結果であるのか、はたまた基地がフロートを持っていなかったのか、等々を精査することが必要である。
 殉職された隊員には心からの哀悼を捧げるものであるが、原因を調査して正すべき点は正して欲しいと願うと同時に、「角を矯めて牛を殺す」改善策でないことを祈るばかりである。


5分間講話について

2023年04月13日 | 自衛隊

 海上自衛隊には5分間講話という教育手法がある。

 任期制の海士には課せられないが、職業軍人と看做される海曹以上には必須のもので、定められたテーマや自由な意見を5分間程度に纏めて話すものである。
 5分間講話については、一般隊員は海士から海曹に昇任した際に受ける教育課程で、大卒の幹部候補者は江田島の幹部候補生学校でそれぞれ初体験するが、一つのテーマを5分間で起承転結させることや5分間話し続けることは思いの外に難いものである。
 このような教育の故であろうか、結婚式を始めとする行事におけるロングスカートをはいた来賓挨拶・スピーチには飽き飽きする。ましてや冒頭に「挨拶とスカートは短い方が」なる前置きがあろうものなら更に鼻白む思いがする。
 30代に艦を下ろされて隊員のリクルートを主任務とする〇〇県地方連絡部に転属させられ、それまで接触も薄かった官公庁の職員、民間企業主、一般市民との会話や打ち合わせが主な業務となった。そこで、最もショックを受けたのは、交渉相手の真意が主題から横道にそれた無駄話ともとれる会話の中に隠されているということであった。そのため自衛隊にあっては4・5分間の応酬で得られる結論に到達するまでに30分近くも掛かり、イライラを押し隠すために相当な努力が必要であった。
 ま、海上自衛隊では上司からの質問には結論だけ回答し重ねて理由を質された場合にのみ結論に至る背景・思考過程を説明するに反し、一般社会では結論に至る背景説明からなされることにも戸惑った。この海自における対応は、質問者と回答者が同等の識見・責任を持っているという相互尊重の伝統に基づいているとともに、戦闘場面における意思疎通を円滑にするために定着した作法と思っている。また、この方法は、若年者や下級者に者に対する教育や評価にも有効で、結論を直ちに述べ得ない場合には判断力や決断力を指導し、理由・思考が誤っている場合には正すことにも繫がっていると思っている。下級幕僚勤務であった際、「間違っている」・「結論は良いが、この理由であるべき」と指導され「なるほど、そう判断すべきなのか」と教えられたことも多い。

 残念ながら、一つのテーマについて短時間に起承転結させる5分間講話、結論から述べる会話法は、海自退職後にあっては「短気」の評価にも繋がっているようにも感じられる。テレビでコメントする元提督は理由・思考過程を伝えた後に結論を述べるという市民感覚に沿った話法に依っているので、相当の努力をされたものだろうと思う一方で、もし、下級幹部が同様の対応を執れば「結論は」と一喝され、「牛の涎の様な」と酷評されるだろうと思っている。


統一地方選結果に思う

2023年04月10日 | 野党

 統一地方選の前半戦が終わった。

 今後、専門家?による選挙結果の分析が行われるものと思うが、素人観には自公:微増、立民:現状維持、共産:激減、維新:躍進に思える。国政選挙と異なり地域の利益や直面する問題などによって結果が必ずしも国家観や国家戦略の如何についての判断を示すものではないだろうが、今回の選挙結果からはそれらに関する有権者の意識が微妙に変化していることが窺えるように思える。
 10年ほど前までは、選挙のプロは「憲法と防衛は票にならない」として国政選挙では「選挙区への利益誘導」、地方選挙では「中央政界とのパイプ(予算)の太さ」がキーワード・公約であり、如何に有権者の懐を肥やすことができるかを競っていた。閑話休題。
 第二次大戦以降に起きた宣戦布告は無いものの実質的な戦争を眺めると、原因はイデオロギー・宗教・民族によるもので「勝った方が大きな金銭的実利を得る」ものであったが、ウクライナ事変では「勝利しても現状維持」でしかないウクライナが、何故に多くの犠牲を払ってでも強国に抵抗するのかを考えると「ウクライナ人のアイデンティティを守る」の一点である。
 ウクライナ人の抵抗の真因を目の当たりにした有権者は、日本人として「守るべきものは何か」、「守るにはどうすれば良いのか」を真剣に考えるようになったのではないかと思っている。その視点で日本の現状を観ると、他国には何の縛りにもならない平和憲法が日本を守ってきたとする主張がまやかしであり、決して日本と日本国民の将来を保証することに繋がらないこと、消極的専守防衛策では第一撃に依る国民の被害があまりにも大きいことに気付いたように思えてならない。
 これは日本国民に限ったことではなく、ウクライナ事変を機にスウェーデンとフィンランドは NATO加盟を、韓国はミサイルの国産化と核の共有を、オーストラリアはAUKAS機能強化を、それぞれ是とするように国民の意識が変化している。

 今回の統一地方選挙の事前予想では、小西文書・子育て・少子化対策などから、立憲民主党優位に推移するのではないかと観られていた。
 辛勝した自民党・森山選対委員長「堂々と政策を訴え、国民に評価していただいた結果」、躍進した日本維新の会・馬場代表「大阪でやってきた身を切る改革をはじめとする改革が、関西を中心に全国的に広がりつつあると思う」と述べて有権者の意識変化を汲み取ったことを言外にしているに比し、勝てなかった立憲民主党・大串選対委員長は「全国でアゲンストの風を受けた戦いとは思っていない」として、従来型の政権の瑕疵を突くことで相対評価を得る減点戦術やバラマキで関心を得る選挙戦術がもはや通じなくなりつつある現状を認識しないかのようである。