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中間報告「障がい者制度改革推進法案」資料より

2009年09月07日 01時57分02秒 | 障害者の自立
民主党は、現行の障害者自立支援法が成立、施行されて以来、わが国における障がい者政策の理念、実態において、大きな混乱を招いていることにかんがみて、総合的に抜本的見直しを行うことを強く求め、議論を重ねてきた。

障害者自立支援法は、障がい種別にかかわらず、一元的・全国統一的にサービスを提供する仕組みを創設したものであったが、これまでの福祉制度を抜本的に改正する内容であり、急激な制度改正であったために、国民的な合意が得られないまま利用者負担の増額や報酬の在り方が変更されるなど、混乱を招く結果となった。

このような抜本的な制度改革を行うには、国民的合意に基づく障がい者福祉施策を推進する必要があり、障がい者等の暮らしの実態、生活環境等の実態を調査検証し、それに見合った改革を推進することにより、将来にわたり安定した障がい者福祉制度を構築し、障がい者等が安心して地域で暮らすことのできる社会を実現することができるものである。

民主党は、2007年10月緊急避難的に「障害者自立支援法改正案」を参議院に提出し、いわゆる応益負担を廃止するとともにサービス事業者に対する支援規定を盛り込み、法案審議と制度改革を求めてきた。

政府与党は、2006年12月に利用者負担の引き下げや事業者に対する激変緩和策として1200億円の「特別対策」(2006年度補正予算より2008年度予算まで)を行い、さらに2009年度以降においても緊急措置(特別対策の上乗せ)を実施するとしているが、障がい者施策の将来に対する不安感は払拭されていない。障がい者の生活や社会参加が不安なく積極的になされるようにするためには、小手先の改革ではなく、抜本的かつ総合的な制度改革を行う必要がある。

2006年12月、国連において障がい者の権利及び尊厳を保護し、及び促進するための包括的かつ総合的な国際条約である「障害者権利条約」が採択され、わが国も署名した。2008年5月3日より正式に発効し、今後、わが国において条約の早期批准に向けて、関連する国内法の整備を行う必要がある。民主党は、権利条約の批准の前提として、障がい者政策に係る広範な国内法の制度改革及び整備を推進することに全力を尽くす。

諸外国との比較において、GDP比で低い社会支出(北欧諸国の約1/6、イギリスの約1/3、アメリカの約1/2、OECD調査による)と国民負担率となっており、立ち遅れている社会的地域基盤の整備と経済的自立を促進し、わが国の障がい者福祉施策を推進するためには、施策項目と達成期間等を定めた総合的な福祉計画と財政的な数値目標を定める必要がある。

民主党は、わが国における障がい者施策の将来像・全体像を明確に示すことが必要であると考え、10部門で構成する「障がい者政策プロジェクトチーム」を設置し、多角的な議論を重ね、ここに「障がい者制度改革推進法案」及び「障がい者総合福祉法(仮称)」の方向性を明示し、関係者および関係団体の議論に寄与するものである。



■第1 基本理念■

民主党は、障がい者等が当たり前に地域で暮らし、地域の一員として共に生活することができる社会を目指している。

障がい者等の生活と自立、社会参加は権利として位置づけ、個々の人権の保障および促進のための具体的な施策を構築しなければならない。また、国民の共存共栄の理念の下、障がい当事者の「自己決定・自己選択」の原則が保障される制度設計を考えるものである。

年齢や性別、障がいの有無などにかかわらず、すべての人がいきいきと働き、社会参加し、暮らしやすい社会を構築するためバリアフリーという概念(障がいの除去)から「ユニバーサル社会」へ理念の発展を図る。そのために、何らかの障がいにより自立及び社会参加のために支援等を必要とする者を広く施策の対象とするとともに、その者の年齢及び障がいの状態に応じて必要な支援等が的確に講じられなければならない。

「障害者基本法」における「個人の尊厳が重んぜられ、その尊厳にふさわしい生活を保障される権利を有する」という理念を基本としつつ、障がい者の権利擁護と合理的配慮という概念を導入した「障害者権利条約」が採択されたことにかんがみて、わが国における障がい者の総合福祉施策として新たな制度を構築していかなければならない。

すなわち「障害者権利条約」の早期批准に向けて、条約において締約国が措置を求められている事項を達成するために、障がい者等に係る広範な国内法の制度改革及び整備を行う必要がある。
民主党は、障がい者の生活や社会参加が不安なく積極的になされるよう、小手先の改革ではなく、抜本的かつ総合的な制度改革を行っていく。




■第2 「障がい者制度改革推進法案」の基本的考え方■

現在、内閣に設置されている「障害者施策推進本部」(本部長:内閣総理大臣)を改編し、わが国の障がい者施策の改革を総合的かつ集中的に推進するため、および必要な国内法の整備、見直しを行うために、新たに「障がい者制度改革推進本部」を設置して、制度改革の推進に関する総合調整、改革推進計画の案の作成及び推進、必要な法律案及び政令案の立案等を行うものとする。

内閣に設置される「障がい者制度改革推進本部」の組織の中に、障がい当事者の参画がより強化されるよう障がい当事者団体、有識者を含む委員会を設け、制度改革推進計画の案の作成及び法令の立案、制度改革に関する事項を調査審議し、その結果に基づいて、本部長に意見を述べる等を行うものとする。また、内閣府にそれらの事務局(担当部門には障がい者等の当事者、有識者を登用する)を設置し、制度改革の実施に必要な法律案の立案等の事務を一元的に処理するものとする。障がい者等に係る制度改革は、次に掲げる17項目の基本方針に基づき推進されるものとする。


・その1 モニタリング機関を設置します

障害者権利条約の国内における実施を促進、保護及び監視していくことが同条約で求められている。その観点から、制度改革の実施状況を調査審議し、勧告するためのモニタリング機関(枠組み)の設置を設置する。この機関は、同条約33条に規定されているように、「政府から独立し、障がい当事者団体の参画が保障される」制度とする。


・その2 差別を禁止する法制度を構築します

障がいを理由とする差別の根絶を図るため、障がいを理由とする差別の禁止に関する国際社会における取り組み(障害者権利条約における権利擁護、合理的配慮の導入)を踏まえ、障がい者に対する差別的取扱いを禁止する法制度を構築する。


・その3 虐待を防止する法制度を構築します

施設等で発生している障がい者等への虐待を防止し、障がい者等の権利を擁護するために、障がい者虐待を受けた障がい者に対する保護のための措置と共に、障がい者虐待の防止に資するための家族等に対する支援のための措置を行うための法制度を構築する。


・その4 政治(選挙)への参加を一層確保します

障がい者の政治的権利の享有及び権利行使する機会は、十分に保障されなければならないが、現在の選挙制度において、公報・政見放送・投票における手話、点字又は文字表記(字幕)等が効果的かつ完全には行われていない。従って、障がい者が候補者等の情報を容易に入手し、投票できる体制を整備すること等により、障がい者の政治等への参加をより一層確保する。


・その5 司法に係る手続における支援を拡充します

司法に係る手続(犯罪捜査の段階を含む。)について、障がい者の権利の行使又は義務の履行を容易にするため、障がい者の意思疎通の仲介に関する援助を提供する体制を充実することや、障がいの特性及び年齢に適した配慮を行うこと等により、その他障がい者が障がい者以外の者と平等に、かつ効果的に司法に係る手続を利用する機会を確保する。


・その6 共に学び共に育つ教育に転換します

学校教育制度は、あらゆる段階において障がい児が障がい児以外の者と原則分けられず、インクルーシブ教育(共に学び共に育つ教育)とすることを基本とするとともに、障がい児又はその保護者が希望するときは、特別支援教育を受けることを保障する。

手話、点字又は文字表記(要約筆記)等のコミュニケーション手段の支援、教材、施設及び設備等のバリアフリー化、教職員の体制整備など、障がい児が学ぶ地域の学校も含む教育現場での支援体制の強化を図る。

義務教育のみならず後期中等教育(中等教育のうち義務教育終了後に行われるものをいう。)及び高等教育等の教育制度においても、インクルーシブ教育に相当する施策を推進する。


・その7 移動の自由の権利を保障します

障がい者等が快適で生活・社会参加しやすいユニバーサルデザイン(高齢者、障がい者等を含むすべての者が共通に利用することを前提として、すべての者の円滑な利用が最大限に確保されるよう配慮された仕様をいう。)による製品、役務等の研究開発を促進し、その成果を普及する。ユニバーサルデザインの研究開発・普及促進においては事業者等の負担が軽減されるよう必要な支援を行う。また、障がい者の有する障がいに配慮した住宅の整備その他の居住環境の整備を推進する。

障がい者が円滑に利用できるような施設の構造及び設備の整備等を支援するとともに、現行の「バリアフリー新法」にとどまらず、既存の施設(公的施設)においても基準適合の義務化などを行い、実施期限を設けるなど施策を推進する。また、「交通基本法案」(民主党提出)等により、障がい者等の移動の自由等の権利が保障され、既存の施設間(公的施設)の移動等が円滑にできるよう道路等の一体的な整備を推進する。


・その8 情報の利用・伝達を支援します

国及び地方公共団体は、その事務を行うに際し、障がい者がその障がい等の状態に応じて情報の入手、利用等を容易に行うことができるよう必要な施策を講じる。情報の利用等においては、インターネット等の技術革新を効果的に利用して円滑な情報の入手、利用等の促進を図る。

情報の提供等の事業者は、その責任と能力に応じて、障がい者の円滑な情報の入手、利用等のための便宜を図ることを促進する。
障がい者に対する災害情報が的確に伝達されるよう必要な施策を講じる。


・その9 雇用・働く場所を創ります

「障害者雇用促進法」について、法定雇用率の対象となる障がい者の範囲を拡大し、現行の法定雇用率(民間1.8%、国・地方公共団体2.1%)のさらなる引き上げを行う。

障がい者の雇用の促進のみならず、就労におけるコミュニケーション支援の整備、障がい者が雇用されるのに伴い必要となる施設又は設備の充実等、障がい者の雇用の継続を図るために必要な施策を講じる。また、障がい者による起業を支援すること等、自営業や協同して事業を営むなどによる雇用以外の就業形態による就業についてもその促進を図る。

公契約に際し、「総合評価入札制度」における障がい者の法定雇用率を評価項目として義務付ける公契約規定を検討することなど障がい者等の一般雇用がさらに促進するよう施策の推進を行う。また、国及び地方公共団体等が優先的に障がい者就労事業所から物品等を調達すること等により、障がい者就労事業所の受注の機会の増大を図る。


・その10 十分な所得の保障を実現します

障がい者の所得の確保に係る施策の在り方について、就労を促進し、障がい者に対する手当は就労による所得を補完するものと位置付け、真に自立した生活ができるよう障がい者に対する手当の支給対象の拡大と支給額の引上げを図る。また、障害年金の在り方及び年金受給権を有しない障がい者(無年金障がい者)に対する措置については特別障害給付金制度の拡充を検討するとともに、年金制度の抜本改革の際に検討する。

障がい者の地域生活の基本として、「住宅手当」の創設(生活保護基準を参考)と住まいの確保策(地域基盤整備)を行う。


・その11 自立支援法を抜本的に見直します

「障害者自立支援法」は「障がい者総合福祉法(仮称)」として抜本的に見直す。あわせて「身体障害者福祉法」「知的障害者福祉法」「精神保健福祉法」「発達障害者支援法」等についても見直す。

障がい者等の範囲・定義を見直し、いわゆる「制度の谷間」と言われる福祉サービスの対象外をなくし、幅広く福祉サービスが利用できるようにする。あわせて何らかの障がいにより福祉サービスを必要とする障がい者に「社会参加カード(仮称)」を交付する制度を創設する(現行の手帳制度からの移行が円滑になされるよう経過措置を設ける)。

利用者負担については、現行の「定率負担(応益負担)」を廃止し、利用者本人の「応能負担」を基本とする。

障がい者等が身近な地域で福祉サービスを選択・利用できるよう障がい種別や年齢で区分されることなく、ニーズに応じた福祉サービス体系を構築する。


・その12 きめ細かな障がい児の福祉を実現します

障がい児にかかる福祉サービスは、「障がい者総合福祉法(仮称)」の中に位置付け、実施主体は、より身近な市町村(基礎的自治体)が行うものとする。現行の体制で市町村が担うことは困難であるため、国及び都道府県は、市町村がきめ細やかな福祉サービスを円滑に行うことができるよう人員確保、児童福祉施設等の充実を図る。

障がい児に必要な医療、療育等を地域において提供することができるよう施設の整備及び充実を図る。


・その13 医療支援も見直します

現行の自立支援医療における定率1割負担(応益負担)は廃止し、更生医療、育成医療について、自立支援法以前の負担水準を勘案しつつ応能負担とする。

精神保健福祉医療のうち、今後、福祉サービスについては障がい種別にかかわりなく「障がい者総合福祉法(仮称)」で行うこととする。精神通院医療については精神科病院等に入院して行われる精神障がいの医療と連携のとれた制度とし、精神保健及び精神障がい者福祉に関する法律の保護者制度、都道府県知事による入院措置に係る制度等については、精神障がい者が地域社会で自立した生活を営むことができるようにする観点から見直し、新たな精神医療体制を構築する。

国及び地方公共団体は、障がい者に対する説明及び障がい者の同意の下に医療の給付又はリハビリテーションの提供がされることとなるよう必要な施策を講じる。


・その14 難病対策を法制化します
現行の難病対策(難治性疾患克服研究事業等)は、根拠となる法制度が未整備であることから、難病に関する調査研究及び難病患者の医療費負担の軽減を柱とする新たな法制度を整備する。


・その15 障がい関係予算に数値目標を定めます

わが国における障がい者に係る予算は、諸外国との比較において、GDP比で低い社会支出と国民負担率となっているため、立ち遅れている社会的地域基盤の整備と経済的自立を促進し、障がい者福祉施策を推進するため、施策項目と達成期間等を定めた総合的な福祉計画と財政的な数値目標を定める。


・その16 障害者権利条約を全面的に履行します

上記の(1)から(15)までの他に、障害者権利条約において締約国が実施しなければならない事項について必要な措置を講ずる。


・その17 法制上・財政上の措置で集中実施します

「障がい者制度改革推進本部」において策定された推進計画に基づいて、総合的かつ集中的な推進のために必要な法制上、財政上の措置を講ずる。
(以下、冒頭の第3に続く――)

■第3 障がい者の総合福祉施策の改革推進の方向性(「障がい者総合福祉法(仮称)」の在り方)■

2009年09月07日 01時53分51秒 | 障害者の自立
■第3 障がい者の総合福祉施策の改革推進の方向性
(「障がい者総合福祉法(仮称)」の在り方)■


(1) 障がい者の範囲・定義について
「障害者自立支援法」第4条定義を早急に見直し、いわゆる「制度の谷間」と指摘されていた「発達障害、高次脳機能障害、難病、内部障害」などを含む定義となることを基本とする。
障がい者等の範囲・定義を見直し、いわゆる「制度の谷間」と言われる福祉サービスの対象外をなくし、幅広く福祉サービスが利用できるようにする。あわせて何らかの障がいにより福祉サービスを必要とする障がい者に「社会参加カード(仮称)」を交付する制度を創設する(現行の手帳制度からの移行が円滑になされるよう経過措置を設ける)。

(2) 利用者負担の在り方
利用者負担については、現行の「定率負担(応益負担)」を廃止し、「応能負担」を基本とする。「応能負担」における負担額の算定については、現行の「世帯単位(家計)」を見直して「個人単位(利用者本人、配偶者を含む)」とする。
福祉サービスにおける利用者負担額と補装具および医療に係る利用者負担額と合算した額が一定の額を超える(高額となる)場合には、特別の負担軽減策を講じる。

(3) サービス利用の支給決定の在り方
現行の「障害者自立支援法」における「障害程度区分」によるサービス支給決定の在り方を抜本的に改め、障がい者等のニーズに基づく認定方法を基本とする。
「障害程度区分認定」は廃止する。「ソーシャルワーカー等調査専門員(仮称)」が、障がい者のサービス利用ニーズ調査を行い、「サービス支給に係るガイドライン(仮称)」に基づいて、サービス利用の支給内容を作成する。当該調査専門員が作成したサービス支給内容を「障がい者サービス委員会(仮称)」(サービス給付の決定を行うための地域における委員会)で決定し、実施機関(市町村等)に指示する。

(4) サービス体系の在り方
サービスを利用する障がい者等の自立と社会参加および自己決定・自己選択の原則にかんがみて、「生活・社会参加サービス支援」として統合する。「移動支援」は個別給付の対象とする。
現行の「障害者自立支援法」におけるサービス体系を障がい者等の地域における生活、自立と社会参加および自己決定・自己選択の原則にかんがみて、「居住支援(新グループホーム)」(現行のケアホームのように必要な場合に介護支援が受けられるよう柔軟に対応する)として統合する。
障がい児にかかる福祉サービス体系は、「障がい者総合福祉法(仮称)」の中に位置付けて、実施主体は市町村(基礎的自治体)が行うものとする。

(5) 事業者の経営基盤の強化
サービス事業者に対する支援の在り方について、現行の日額方式は廃止し、基本は月額方式とする。サービス内容によっては、個別のサービスとして日額方式を取り入れることは排除しない。
サービス事業者の経営基盤の強化は、障がい者が個別のサービスを利用する際、安定的な当該サービスの提供に寄与するものであることにかんがみ、施設整備費および人件費等については、それぞれの単価を引き上げて整備することを国が責任を持って行う。

(6) 地域生活支援事業の在り方
障がい者個人の社会参加として利用する日常生活用具の給付等、移動支援については、個別給付のサービス支援(「生活・社会参加サービス支援」)として位置付ける。
コミュニケーション支援(手話通訳等を行う者の派遣)については、原則無料で行うものとする。

(7) 相談支援の在り方
障がい者等が身近な地域で福祉サービスを選択・利用でき、当たり前に地域で暮らし、地域の一員として共に生活することができるように、現行の「地域自立支援協議会」を中核として相談事業の体制強化(社会福祉法人やNPO、ピアカウンセリングなど積極的活用)を推進し、あわせて相談窓口や相談員の充実を図る。

(8) 就労支援の在り方
障がい者の自立生活を支援するために、一般就労を促進するとともに、現行の地域自立支援協議会の各地域における体制の充実強化を行い、地域ネットワーク基盤の整備と就労の定着を図る。
一般就労以外の就労的事業(授産施設、福祉工場、更生施設、小規模作業所等)を整理し、現行の「自立訓練」「就労移行支援」「就労継続支援」のうち就労支援にかかわる事業について統合、簡素化するとともに、就労支援体制を強化する方向で検討を加える。

大阪府の雇用率未達成企業を排除方針案について中小企業を配慮すべきとの意見

2009年09月07日 00時22分37秒 | 障害者の自立
 大阪府が障害者法定雇用率未達成企業との取引をしないという方針案を作ろうとしたのに対して、総務省から見直すようにとの意見がでた話については、別な文章で触れた(「2009.07.07 中央政府は障害者雇用に違反した企業を放置するのか?」など)。それでどうなっているかを大阪府関係者に訊ねた。橋下大阪府知事は、マスコミには公表したが(あるいは記者が質問したためでもあろう)、このことを大阪府議会にも相談していないようだ。とりあえず、別の意見を聞くことができた。正反対の意見だが、それを紹介しよう。これが正しいという見解は持ち合わせていない。こういう見方もあると紹介するだけだ。

■ 障害者雇用未達成の中小企業や零細事業所に配慮すべきとの意見
 法定の障害者雇用率1.8%を実現している企業は、多くは大手企業になる。大阪府分の従業員規模別の統計を検討するまでは、それが事実かどうか、分からない。ただ、多くの企業は障害者を雇用する余裕がないから、その代わりに納付金(罰金という意見もあるが)を支払ってでも、障害者を雇用することを控えようとしているようだ。

 とすると、障害者法定雇用率未達成の企業というと、中小零細企業になってしまう。とすると、そうした中小零細事業所を大阪府が最初から拒否をすることには、問題が大きいという。

 また、総合評価一般競争入札においても、大阪府関係者は地元業者も参入をできるように、簡素化した努力が報われないことになってしまう。たしかに障害者雇用率未達成企業を入札において、拒否することは一見、良いことのように見える。しかし、中小零細の事業者が排除される結果になると、大阪府は中小零細事業所を障害者雇用の面で育成する努力を払わないという評価になる。

 聞いた話だが、大阪府内のいくつかの自治体で、大阪府と同じように総合評価一般競争入札を行なったら、結局は大阪府で優秀な成績を得た事業者が、その自治体でも高得点となったという事例もあるそうだ。とすると、事業者は固定化してしまう。

■ 一部の会社の障害者雇用率を高くするか、底上げを図るか
 障害者雇用の面で、法定雇用率に達していない企業との取引を拒否するという大阪府の新方針案は、法定障害者雇用率に達した一部企業をより優遇することになるという。その代わりに、主に中小零細企業の障害者の雇用を放置する結果になる。それでは業界の底上げにはならない。

 とくに大阪府内は中小零細企業が繁栄して地域の活性化を図ってきた歴史がある。障害者雇用率を未達成の企業を大阪府が入札などにおいて当初から拒否することは、地元の中小零細企業を障害者雇用の面からも排除する結果になるのではないかという。

 地域に根ざしている中小零細企業は障害者雇用の面でも重要な役割を担っている。そうした企業の努力を無視する大阪府の方針案は問題が大きいという。

 そうした側面もあると思った。入札制度改革において、中小企業の応札が少ないことに気が付いていた。必要な書類を整えることができない規模では、応札もできないためと思ってきた。また、それに対応できる企業規模であれば、障害者雇用を十分に労働力として有効に使いこなすことができると思ってきた。企業の日本における重層構造を意識したつもりではあっても、なかなか身につかない。新しい観点を得た感じがする。


初ブース、障害者の加工品販売 ライブペインティングも /福岡

2009年09月07日 00時20分17秒 | 障害者の自立
 ◇ときめきフェスタ福岡実行委
 志摩町芥屋の海岸で開かれている野外イベント「サンセットライブ」に、障害者と健常者の交流を支援する「ときめきフェスタ福岡実行委員会」が初めてブースを出した。

 「工房まる」など福岡市内の5カ所の障害者福祉施設が協力。障害者がデザインしたTシャツや手ぬぐい、エコバッグなど計約100点を販売し、会場の特設ステージ上では障害者がライブペインティングを披露し、人々を沸かせた。

 最終日の6日は来場者それぞれに万歳している絵を描いてもらうイベントも実施。集まった作品は10月18日、福岡市庁舎ふれあい広場(中央区)で開かれる「ときめきフェスタ福岡2009」で展示される。【

障害者支援の課題意見交換 九州・沖縄大会に550人

2009年09月07日 00時18分16秒 | 障害者の自立
 全国重症心身障害児(者)を守る会の第12回九州・沖縄ブロック佐賀大会が5日、武雄市の市文化会館で始まった。初日は会員や施設の職員ら約550人が参加し、四つの分科会で意見交換した。

 分科会のうち、国立施設部会では、障害児(者)の親が死亡や高齢化などで、後見人が必要になるケースが増えている問題などについて話し合った。「守る会の活動に今後、後見人にも参加してもらうことを考えていく必要がある」、「後見人がどのくらい増えているか実態調査し、慎重に判断すべき」などの意見が出された。

 大会は「新しい役割と課題を発見し、運動に生かそう」をメーンテーマに掲げ、6日まで開かれる。最終日は、厚労省障害企画課の蒲原基道課長が午前10時から同会館で講演する。一般の人も聴講できる。