褒めて子どものやる気を引き出し、叱らないことで親の負担も軽減する子育て法が、佐賀県内で実践されている。さまざまな課題を抱える子どもたちの問題行動が改善され、子育てに悩む親も前向きになれたとの報告も。多様な子育て法がある中で、取り組みの成果が注目されている。
臨床心理学に基づき豪州の大学教授が開発した「トリプルP」=ズーム=と呼ばれる子育て法。専門講座を受けた行政や医療、福祉関係者らが、子どもの問題行動を予防・改善するための「大げさな愛情表現」や「小さな問題行動に対する計画的無視」など、17の“コツ”を教える。
「仕事と家事の忙しさから叱ることが多くて」。周囲にアドバイスしてくれる人もなく、初めての子育てで悩んでいた佐賀市の南里紀代美さん(39)は実践者の1人だ。
4歳の長男が話しかけてきた時は手を止める。かんしゃくを起こした時は数分間無視する。「『こんなことをやっていいんだ』と余裕ができて関わり方が変わり、問題行動も減った」と成果を話す。
昨年は発達障害児の保護者を対象にしたセミナーも初めて開いた。佐賀市の女性(33)は、アスペルガー症候群(高機能自閉症)の長女(9)の不登校に悩んでいた。長女が体の硬直や耳鳴り、幻聴を訴えたため精神科に相談したが診察は3カ月待ち。「すがる思い」で受講した。
女性は「『親のエゴで子育てしていないか』という指摘にはっとさせられた」。これまでは、着替えも手伝っていたが、時間がかかっても1人でやるようにして見守り、できた時は強く抱きしめた。長女の様子も変わり、弟(6)の世話に追われる母を見て甘えられなかったことや算数が苦手でついていけないことを明かした。症状は治まり、算数だけを特別支援学級で受ける対処策も打てた。
九州で初めてトリプルPを導入した佐賀大学文化教育学部の藤田一郎教授(55)は「親は子のお手本。たたいて育てれば、子どもはたたくことを覚える。親ができるのは子どものやる気を起こし、自立を促すこと。親が楽な気持ちで子育てすれば、子どもも楽になる」と話す。
トリプルPの子育て17の〝コツ〟
1、子どもと良質な時を過ごす
2、子どもと話す
3、愛情を表現する
4、描写的に褒める
5、子どもに注目している気持ちを伝える
6、夢中になれる活動を与える
7、良い手本を示す
8、時をとらえて教える
9、アスク・セイ・ドゥ
10、行動チャート
11、分かりやすい基本ルールを作る
12、ルールが守られなかった時の対話による指導
13、小さな問題行動に対する計画的な無視
14、はっきり穏やかな指示
15、問題に応じた結果で、指示をバックアップする
16、問題行動に対応するクワイエットタイム
17、大きな問題行動に対応するタイムアウト
【トリプルP=ポジティブ ペアレンティング プログラム(前向き子育てプログラム)】世界17カ国以上で実践されている。日本では2004年に始まり、全国14都道府県で実施。自治体独自に予算化して取り組む動きも。佐賀県では市民活動として「トリプルP佐賀」が推進している。1~12歳児の保護者を対象にしたセミナーを5月28日~7月9日の毎週土曜日午前10時から2時間、佐賀大で開く。参加費千円。発達障害児の保護者向けは5月23日~7月11日の毎週月曜日午前9時半から2時間半、佐賀市のほほえみ館で。参加費500円。藤田教授の電話は0952(28)8353。メールアドレスはfujitai@cc.saga-u.ac.jp
2011年05月08日更新
子どもの問題行動への対処法など「前向きな子育て」を掲げるトリプルPを実践し、グループワークで意見を交わす参加者たち(昨年7月、トリプルP佐賀提供)
佐賀新聞
臨床心理学に基づき豪州の大学教授が開発した「トリプルP」=ズーム=と呼ばれる子育て法。専門講座を受けた行政や医療、福祉関係者らが、子どもの問題行動を予防・改善するための「大げさな愛情表現」や「小さな問題行動に対する計画的無視」など、17の“コツ”を教える。
「仕事と家事の忙しさから叱ることが多くて」。周囲にアドバイスしてくれる人もなく、初めての子育てで悩んでいた佐賀市の南里紀代美さん(39)は実践者の1人だ。
4歳の長男が話しかけてきた時は手を止める。かんしゃくを起こした時は数分間無視する。「『こんなことをやっていいんだ』と余裕ができて関わり方が変わり、問題行動も減った」と成果を話す。
昨年は発達障害児の保護者を対象にしたセミナーも初めて開いた。佐賀市の女性(33)は、アスペルガー症候群(高機能自閉症)の長女(9)の不登校に悩んでいた。長女が体の硬直や耳鳴り、幻聴を訴えたため精神科に相談したが診察は3カ月待ち。「すがる思い」で受講した。
女性は「『親のエゴで子育てしていないか』という指摘にはっとさせられた」。これまでは、着替えも手伝っていたが、時間がかかっても1人でやるようにして見守り、できた時は強く抱きしめた。長女の様子も変わり、弟(6)の世話に追われる母を見て甘えられなかったことや算数が苦手でついていけないことを明かした。症状は治まり、算数だけを特別支援学級で受ける対処策も打てた。
九州で初めてトリプルPを導入した佐賀大学文化教育学部の藤田一郎教授(55)は「親は子のお手本。たたいて育てれば、子どもはたたくことを覚える。親ができるのは子どものやる気を起こし、自立を促すこと。親が楽な気持ちで子育てすれば、子どもも楽になる」と話す。
トリプルPの子育て17の〝コツ〟
1、子どもと良質な時を過ごす
2、子どもと話す
3、愛情を表現する
4、描写的に褒める
5、子どもに注目している気持ちを伝える
6、夢中になれる活動を与える
7、良い手本を示す
8、時をとらえて教える
9、アスク・セイ・ドゥ
10、行動チャート
11、分かりやすい基本ルールを作る
12、ルールが守られなかった時の対話による指導
13、小さな問題行動に対する計画的な無視
14、はっきり穏やかな指示
15、問題に応じた結果で、指示をバックアップする
16、問題行動に対応するクワイエットタイム
17、大きな問題行動に対応するタイムアウト
【トリプルP=ポジティブ ペアレンティング プログラム(前向き子育てプログラム)】世界17カ国以上で実践されている。日本では2004年に始まり、全国14都道府県で実施。自治体独自に予算化して取り組む動きも。佐賀県では市民活動として「トリプルP佐賀」が推進している。1~12歳児の保護者を対象にしたセミナーを5月28日~7月9日の毎週土曜日午前10時から2時間、佐賀大で開く。参加費千円。発達障害児の保護者向けは5月23日~7月11日の毎週月曜日午前9時半から2時間半、佐賀市のほほえみ館で。参加費500円。藤田教授の電話は0952(28)8353。メールアドレスはfujitai@cc.saga-u.ac.jp
2011年05月08日更新
子どもの問題行動への対処法など「前向きな子育て」を掲げるトリプルPを実践し、グループワークで意見を交わす参加者たち(昨年7月、トリプルP佐賀提供)
佐賀新聞