東日本大震災以降、県内で発生した震度1以上の地震(26日現在)は87回、28年前の日本海中部地震とほぼ同じ震源域で起きた地震は6回。秋田地方気象台によると、活発な地震活動は今も続いている。
「県内の山間部には、集落に通じる道路が1本しかない地域がかなりある。直下型地震で孤立化した場合、集落をどう救うのか。対策を練る必要がある」。県地震被害想定調査検討委員会の委員を務める林信太郎秋田大教授(火山地質学)は、こう指摘する。2008年6月に起きた岩手・宮城内陸地震でも、地滑りで幾つもの道路や橋が崩れ落ちる被害が目立った。
地域ごと拠点必要
孤立から脱するまでの間、何よりも必要なのは食料や燃料などの生活物資だ。今回の大震災では交通網が寸断、太平洋側の物流拠点も被災し、流通がしばらくまひした。災害時に備え、地域ごとに備蓄拠点を設ける必要性が明らかになった。
本県では、830(天長7)年に秋田市で起きた天長地震と同規模の地震が発生した場合、最大3万8千人が被災すると想定。その7割に当たる2万8千人分の毛布や簡易トイレなどの生活必需品を、県と25市町村が半分ずつ備蓄している。一方で食料や飲料はコンビニエンスストアなど6社と協定を結び、災害時に優先的に供給してもらう「流通備蓄」の形を取ってきた。
だが、大震災では流通が途絶えてコンビニの棚から商品が消え、流通備蓄の脆弱(ぜいじゃく)さが浮き彫りに。県地域防災計画の公的備蓄品リストには今月、ペットボトル水や乾燥ごはん、缶詰パン、粉ミルクなどが新たに追加された。県総合防災課の佐藤昇課長は「流通備蓄に頼れない場合があると思い知らされた。一定量の現物を備蓄しなければならない」と教訓をかみしめる。
情報伝達も課題に
大震災が再考を迫ったのは備蓄態勢だけではない。住民への情報伝達をいかに早く的確に行うかも大きな課題だ。
津波の発生などを知らせる防災行政無線は、有効な伝達手段の一つとして導入が進められてきた。八峰町八森の八森子ども園は「県民防災の日」の26日、「津波が押し寄せる」との無線放送が流れたと想定し、園児を高台方向へ避難させる訓練を実施。職員たちは、「ベビーカーに乗せて避難した方が早い子供もいる」などと有事の対応を確認し合った。
だが、防災行政無線は屋外スピーカーの設置などに多額の予算が掛かり、導入に二の足を踏む自治体もある。県内では8市町村が未設置だ。
横手市では、合併前の8市町村のうち4町村の設置にとどまる。この“空白地帯”を補う手段として活用しているのが、民間コミュニティーFM放送。放送局との協定に基づき、災害時は番組に割り込んで避難情報を流すことができる。林教授は「災害に強く、導入費用も防災無線より安い。日ごろは地域情報を発信し、まちづくりに活用できる」と長所を語る。
市は市内8カ所に中継局を設置する予定で、年度内に市内のほぼ全域で受信可能となる。来年度までに高齢者や障害者などの要援護者がいる計約9千世帯に緊急告知用ラジオを無料配布し、迅速な避難につなげる考えだ。
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県の公的備蓄品が保管されている倉庫。震災の教訓を踏まえ、食料も追加される=秋田市雄和
(2011/05/28 付)
秋田魁新報 -
「県内の山間部には、集落に通じる道路が1本しかない地域がかなりある。直下型地震で孤立化した場合、集落をどう救うのか。対策を練る必要がある」。県地震被害想定調査検討委員会の委員を務める林信太郎秋田大教授(火山地質学)は、こう指摘する。2008年6月に起きた岩手・宮城内陸地震でも、地滑りで幾つもの道路や橋が崩れ落ちる被害が目立った。
地域ごと拠点必要
孤立から脱するまでの間、何よりも必要なのは食料や燃料などの生活物資だ。今回の大震災では交通網が寸断、太平洋側の物流拠点も被災し、流通がしばらくまひした。災害時に備え、地域ごとに備蓄拠点を設ける必要性が明らかになった。
本県では、830(天長7)年に秋田市で起きた天長地震と同規模の地震が発生した場合、最大3万8千人が被災すると想定。その7割に当たる2万8千人分の毛布や簡易トイレなどの生活必需品を、県と25市町村が半分ずつ備蓄している。一方で食料や飲料はコンビニエンスストアなど6社と協定を結び、災害時に優先的に供給してもらう「流通備蓄」の形を取ってきた。
だが、大震災では流通が途絶えてコンビニの棚から商品が消え、流通備蓄の脆弱(ぜいじゃく)さが浮き彫りに。県地域防災計画の公的備蓄品リストには今月、ペットボトル水や乾燥ごはん、缶詰パン、粉ミルクなどが新たに追加された。県総合防災課の佐藤昇課長は「流通備蓄に頼れない場合があると思い知らされた。一定量の現物を備蓄しなければならない」と教訓をかみしめる。
情報伝達も課題に
大震災が再考を迫ったのは備蓄態勢だけではない。住民への情報伝達をいかに早く的確に行うかも大きな課題だ。
津波の発生などを知らせる防災行政無線は、有効な伝達手段の一つとして導入が進められてきた。八峰町八森の八森子ども園は「県民防災の日」の26日、「津波が押し寄せる」との無線放送が流れたと想定し、園児を高台方向へ避難させる訓練を実施。職員たちは、「ベビーカーに乗せて避難した方が早い子供もいる」などと有事の対応を確認し合った。
だが、防災行政無線は屋外スピーカーの設置などに多額の予算が掛かり、導入に二の足を踏む自治体もある。県内では8市町村が未設置だ。
横手市では、合併前の8市町村のうち4町村の設置にとどまる。この“空白地帯”を補う手段として活用しているのが、民間コミュニティーFM放送。放送局との協定に基づき、災害時は番組に割り込んで避難情報を流すことができる。林教授は「災害に強く、導入費用も防災無線より安い。日ごろは地域情報を発信し、まちづくりに活用できる」と長所を語る。
市は市内8カ所に中継局を設置する予定で、年度内に市内のほぼ全域で受信可能となる。来年度までに高齢者や障害者などの要援護者がいる計約9千世帯に緊急告知用ラジオを無料配布し、迅速な避難につなげる考えだ。
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県の公的備蓄品が保管されている倉庫。震災の教訓を踏まえ、食料も追加される=秋田市雄和
(2011/05/28 付)
秋田魁新報 -