京都大病院(京都市左京区)は18日、40代女性患者が10日の脳死肺移植手術後に脳障害を起こし、意識不明になったと発表した。手術中に心肺補助装置(PCPS)が停止するトラブルがあったが、因果関係は不明で「現時点で医療ミスとは考えておらず、肺移植手術の自粛はしない」としている。外部の専門家らによる調査委員会を設置し原因を究明する。
一山智副病院長(医療安全担当)と執刀医で呼吸器外科長の伊達洋至教授が会見。患者は重症の肺リンパ脈管筋腫症で、山梨県立中央病院で脳死判定された60代男性の両肺の移植手術を受けた。
手術は10日午前10時38分開始。人工心肺装置を装着して左右の肺を摘出し、提供者の肺を移植。約4時間後に人工心肺装置を外した。しかし、血中の酸素濃度が低下したため午後5時59分に心肺補助装置を作動させた。13分後、血液を流す管の中に気泡が生じ、安全装置が作動して停止。4分間で気泡を除き、再稼働させた。
同9時50分、集中治療室に移した時には異常はなかったが、翌朝、左右の瞳孔の開きに差があり、検査の結果、脳障害が分かった。
伊達教授は「ドナーの肺が山梨から届くのに約6時間かかったこともあり、移植肺が機能不全を起こし、酸素濃度が低下したのではないか」と話した。補助装置に生じた気泡については「初めてのトラブル。装置に異常はなく、原因は不明。ただ、停止中の酸素濃度は必ずしも低酸素脳症を起こすほどではなかった」としている。
京大病院では06年、脳死肺移植を受けた女性(当時30歳)が死亡し、その後、肺移植手術を自粛した。事故調査委員会が移植チーム内のコミュニケーション不足などを指摘。07年に岡山大から、日本初の生体肺移植を行った伊達教授を招き、09年に脳死肺移植の再開を決定した。今回は再開後11例目。現在、京大病院では約30人の患者が肺移植を待っている。
毎日新聞 2011年10月18日 20時26分(最終更新 10月18日 21時42分)
一山智副病院長(医療安全担当)と執刀医で呼吸器外科長の伊達洋至教授が会見。患者は重症の肺リンパ脈管筋腫症で、山梨県立中央病院で脳死判定された60代男性の両肺の移植手術を受けた。
手術は10日午前10時38分開始。人工心肺装置を装着して左右の肺を摘出し、提供者の肺を移植。約4時間後に人工心肺装置を外した。しかし、血中の酸素濃度が低下したため午後5時59分に心肺補助装置を作動させた。13分後、血液を流す管の中に気泡が生じ、安全装置が作動して停止。4分間で気泡を除き、再稼働させた。
同9時50分、集中治療室に移した時には異常はなかったが、翌朝、左右の瞳孔の開きに差があり、検査の結果、脳障害が分かった。
伊達教授は「ドナーの肺が山梨から届くのに約6時間かかったこともあり、移植肺が機能不全を起こし、酸素濃度が低下したのではないか」と話した。補助装置に生じた気泡については「初めてのトラブル。装置に異常はなく、原因は不明。ただ、停止中の酸素濃度は必ずしも低酸素脳症を起こすほどではなかった」としている。
京大病院では06年、脳死肺移植を受けた女性(当時30歳)が死亡し、その後、肺移植手術を自粛した。事故調査委員会が移植チーム内のコミュニケーション不足などを指摘。07年に岡山大から、日本初の生体肺移植を行った伊達教授を招き、09年に脳死肺移植の再開を決定した。今回は再開後11例目。現在、京大病院では約30人の患者が肺移植を待っている。
毎日新聞 2011年10月18日 20時26分(最終更新 10月18日 21時42分)