知的、精神障害者らが有名パティシエらの指導を受けて作るスイーツが百貨店などで販売され、人気を呼んでいる。
障害者の低賃金問題を改善しようと、障害者就労支援施設などと洋菓子店が協力。一流の味と、絵本作家らがデザインしたおしゃれなパッケージでファンが増えている。
洋菓子店「クラブハリエ」(滋賀県近江八幡市)や、野菜スイーツ専門店「パティスリーポタジエ」(東京都目黒区)など10店が、マドレーヌやケーキなど約40種類のレシピを用意。絵本「くまのがっこう」の絵を描いたあだちなみさんや、絵本作家の長谷川義史さんらがパッケージをデザインした。それぞれ、大阪や京都など10府県の10施設で作り、全国の百貨店などで期間限定で販売している。
発案したのは、福祉系コンサルティング会社「テミル」(東京都港区)の船谷博生社長(46)。障害者約13万人が雇用契約を結ばず、訓練として軽作業する就労支援施設では、平均賃金が1人あたり月額1万3586円(2011年度、厚生労働省調べ)と低い。「障害者が施設で作って販売する菓子をブランド化し、商品単価を上げよう」と、4年前、東京・自由が丘の洋菓子店「モンサンクレール」のパティシエ辻口博啓さんに協力を依頼。他の店のシェフやパティシエ、絵本作家らにも賛同者が広がった。
挑戦1年近く
菓子店と施設が当初、心配したことがあった。名前負けしない、おいしい菓子を必要な数量用意し、出荷できるだろうか――。
クラブハリエのグランシェフで、社長の山本隆夫さん(41)は、施設の設備を調べ、作る人たちの経験や腕前を見極めるところから始めた。「工夫次第でこれだけのものができるんだというレシピを用意した」。製作する長野県や青森県の施設を他のパティシエと訪ね、障害者に生地の作り方から教えた。
それでも、販売できるものを作れるようになるには時間がかかる。京都府亀岡市の通所施設内にある「ベーカリーカフェぱすてる」は、福知山市の洋菓子店「マウンテン」シェフの水野直己さん(35)にキャラメルナッツのオレンジケーキなど3品のレシピを考えてもらった。だが、焼き菓子の生地の表面が真っすぐにならなかったり、毎回、焼き色が違ったり。水野さんからのお墨付きが出るまでに1か月半、販売までに1年近くかかった。
ナッツを一つずつ丁寧に飾るなど、得意な作業もある。同施設の主任、森下耕太郎さん(38)は「福祉バザー向けにいろいろな菓子を作り続けたが、市価より安いのが当たり前だった。今はこんな味が出せるなら、障害者が作ったお菓子だからと言って売るのは、逆に甘えだと思うようになった」と話す。
挑戦する施設も増え、来年の発売を目指して、さらに4施設で準備が進む。兵庫県西宮市の「武庫川すずかけ作業所」は、芦屋市の洋菓子店「アンリ・シャルパンティエ」の協力で、地元の酒かすを使った焼き菓子を販売する予定だ。
「働きがい」に
菓子の販売価格は洋菓子店並みの設定で、マドレーヌ150円、オレンジケーキ200円など。月約1万円だった賃金が4万円になった施設もある。
クラブハリエの協力で、昨年9月からマドレーヌなどを販売する長野県飯田市の事業所「いずみの家」の牧内克博所長(37)は「みんないきいきと働くようになった。有名なパティシエと一緒に作ったり、全国の人に食べてもらえるようになったりしたことが励みになっている」と喜ぶ。
大丸心斎橋店と大丸梅田店で12日まで2週間販売し、完売した商品もあった。15日には、テミルのホームページを通じて毎月、違う施設のお菓子を楽しむ頒布会が始まる。
障害者が作った菓子を買い求める客(9日、大阪市北区の大丸梅田店で)
(2013年11月14日 読売新聞)
障害者の低賃金問題を改善しようと、障害者就労支援施設などと洋菓子店が協力。一流の味と、絵本作家らがデザインしたおしゃれなパッケージでファンが増えている。
洋菓子店「クラブハリエ」(滋賀県近江八幡市)や、野菜スイーツ専門店「パティスリーポタジエ」(東京都目黒区)など10店が、マドレーヌやケーキなど約40種類のレシピを用意。絵本「くまのがっこう」の絵を描いたあだちなみさんや、絵本作家の長谷川義史さんらがパッケージをデザインした。それぞれ、大阪や京都など10府県の10施設で作り、全国の百貨店などで期間限定で販売している。
発案したのは、福祉系コンサルティング会社「テミル」(東京都港区)の船谷博生社長(46)。障害者約13万人が雇用契約を結ばず、訓練として軽作業する就労支援施設では、平均賃金が1人あたり月額1万3586円(2011年度、厚生労働省調べ)と低い。「障害者が施設で作って販売する菓子をブランド化し、商品単価を上げよう」と、4年前、東京・自由が丘の洋菓子店「モンサンクレール」のパティシエ辻口博啓さんに協力を依頼。他の店のシェフやパティシエ、絵本作家らにも賛同者が広がった。
挑戦1年近く
菓子店と施設が当初、心配したことがあった。名前負けしない、おいしい菓子を必要な数量用意し、出荷できるだろうか――。
クラブハリエのグランシェフで、社長の山本隆夫さん(41)は、施設の設備を調べ、作る人たちの経験や腕前を見極めるところから始めた。「工夫次第でこれだけのものができるんだというレシピを用意した」。製作する長野県や青森県の施設を他のパティシエと訪ね、障害者に生地の作り方から教えた。
それでも、販売できるものを作れるようになるには時間がかかる。京都府亀岡市の通所施設内にある「ベーカリーカフェぱすてる」は、福知山市の洋菓子店「マウンテン」シェフの水野直己さん(35)にキャラメルナッツのオレンジケーキなど3品のレシピを考えてもらった。だが、焼き菓子の生地の表面が真っすぐにならなかったり、毎回、焼き色が違ったり。水野さんからのお墨付きが出るまでに1か月半、販売までに1年近くかかった。
ナッツを一つずつ丁寧に飾るなど、得意な作業もある。同施設の主任、森下耕太郎さん(38)は「福祉バザー向けにいろいろな菓子を作り続けたが、市価より安いのが当たり前だった。今はこんな味が出せるなら、障害者が作ったお菓子だからと言って売るのは、逆に甘えだと思うようになった」と話す。
挑戦する施設も増え、来年の発売を目指して、さらに4施設で準備が進む。兵庫県西宮市の「武庫川すずかけ作業所」は、芦屋市の洋菓子店「アンリ・シャルパンティエ」の協力で、地元の酒かすを使った焼き菓子を販売する予定だ。
「働きがい」に
菓子の販売価格は洋菓子店並みの設定で、マドレーヌ150円、オレンジケーキ200円など。月約1万円だった賃金が4万円になった施設もある。
クラブハリエの協力で、昨年9月からマドレーヌなどを販売する長野県飯田市の事業所「いずみの家」の牧内克博所長(37)は「みんないきいきと働くようになった。有名なパティシエと一緒に作ったり、全国の人に食べてもらえるようになったりしたことが励みになっている」と喜ぶ。
大丸心斎橋店と大丸梅田店で12日まで2週間販売し、完売した商品もあった。15日には、テミルのホームページを通じて毎月、違う施設のお菓子を楽しむ頒布会が始まる。
障害者が作った菓子を買い求める客(9日、大阪市北区の大丸梅田店で)
(2013年11月14日 読売新聞)