◇2カ月入居断られ続けた末に
アパートの一室には女性歌手のポスターが貼られていた。徐々に筋力が低下していく「筋ジストロフィー」と闘う三浦大輔さん(28)。水戸市の1LDKのアパートで、1人暮らしをしている。電動車椅子に乗っていることを除けば、好きな歌手名を口にしてはにかむ様子は、ごくごく普通の20代の若者だ。
生まれつき、この病気を抱えており、小学5年生の夏休みから車椅子生活になった。小中学校は普通学校に通い、高校は特別支援学校を卒業した。今では、手を動かすことはほとんどできず、寝ている時は呼吸器が必要。自力で身の回りのことができないため、ヘルパーによる24時間介護が欠かせない。「重度訪問介護制度」を利用しており、介護費用は公費で賄われている。
8年ほど前、同じように重度障害を持つ男性に出会い、1人暮らしを考えるようになった。4歳下の弟も同じ障害を持っており、家族の負担軽減が大きな理由だった。「母親だけで2人の世話をするのは大変そうだったので、自立したいと思った」。必要な知識を仕入れ、2年前に行動に移したが、いきなり社会の壁にぶつかった。気に入ったアパートへの入居を断られたのだ。
アパート管理会社は「車椅子は部屋を傷つける。車椅子や障害者の方とは原則、契約できない」とつれない。水戸市内5〜6軒のアパートを回ったが、どこの管理会社も同じだった。「体に障害を持っただけで、住みたい場所にも住めないのか……」。さみしさがこみ上げた。
アパート探しを始めてから約2カ月、たまたま高齢者用アパートとして建設されたバリアフリーの物件を見つけた。玄関や部屋、トイレなどに段差がなく、管理会社は風呂場にリフトを付けることにも理解を示してくれた。すぐに入居を決断。夢に見た1人暮らしを始め、家族に気兼ねなく外出できるようにもなった。
年4回ほどライブに行くなど、今は充実した生活を送っている。しかし、アパート探しの2カ月間を思い出すと悔しさもこみ上げる。「『重度障害者は自立生活ができない』と思っている人も多いと思う。でも、周りの理解があれば必ずできる。私たちも自分の住みたいところに住みたいと思っている」。同じ重度障害者に同じ苦労や苦しみは味わわせたくない。障害者の気持ちを理解してほしいと思っている。
障害者への理解促進を図り、差別をなくすことを目的とする障害者権利条例案が県議会3月定例会に提出される。今なぜ同条例が必要なのか。障害者らの視点から考える。
毎日新聞 2014年02月18日 地方版
アパートの一室には女性歌手のポスターが貼られていた。徐々に筋力が低下していく「筋ジストロフィー」と闘う三浦大輔さん(28)。水戸市の1LDKのアパートで、1人暮らしをしている。電動車椅子に乗っていることを除けば、好きな歌手名を口にしてはにかむ様子は、ごくごく普通の20代の若者だ。
生まれつき、この病気を抱えており、小学5年生の夏休みから車椅子生活になった。小中学校は普通学校に通い、高校は特別支援学校を卒業した。今では、手を動かすことはほとんどできず、寝ている時は呼吸器が必要。自力で身の回りのことができないため、ヘルパーによる24時間介護が欠かせない。「重度訪問介護制度」を利用しており、介護費用は公費で賄われている。
8年ほど前、同じように重度障害を持つ男性に出会い、1人暮らしを考えるようになった。4歳下の弟も同じ障害を持っており、家族の負担軽減が大きな理由だった。「母親だけで2人の世話をするのは大変そうだったので、自立したいと思った」。必要な知識を仕入れ、2年前に行動に移したが、いきなり社会の壁にぶつかった。気に入ったアパートへの入居を断られたのだ。
アパート管理会社は「車椅子は部屋を傷つける。車椅子や障害者の方とは原則、契約できない」とつれない。水戸市内5〜6軒のアパートを回ったが、どこの管理会社も同じだった。「体に障害を持っただけで、住みたい場所にも住めないのか……」。さみしさがこみ上げた。
アパート探しを始めてから約2カ月、たまたま高齢者用アパートとして建設されたバリアフリーの物件を見つけた。玄関や部屋、トイレなどに段差がなく、管理会社は風呂場にリフトを付けることにも理解を示してくれた。すぐに入居を決断。夢に見た1人暮らしを始め、家族に気兼ねなく外出できるようにもなった。
年4回ほどライブに行くなど、今は充実した生活を送っている。しかし、アパート探しの2カ月間を思い出すと悔しさもこみ上げる。「『重度障害者は自立生活ができない』と思っている人も多いと思う。でも、周りの理解があれば必ずできる。私たちも自分の住みたいところに住みたいと思っている」。同じ重度障害者に同じ苦労や苦しみは味わわせたくない。障害者の気持ちを理解してほしいと思っている。
障害者への理解促進を図り、差別をなくすことを目的とする障害者権利条例案が県議会3月定例会に提出される。今なぜ同条例が必要なのか。障害者らの視点から考える。
毎日新聞 2014年02月18日 地方版