自転車修理の技術を車いすの点検や修理に生かそうと、兵庫県尼崎市内で90年以上続く老舗の「石本自転車」(塚口本町1)の店主石本雅映(まさてる)さん(58)が「車いす安全整備士」の資格を取得した。個人の自転車店としては全国で初めて。高齢者人口の増加で、車いす利用者も増えており、石本さんは「自転車同様、安心して修理を任せてもらえるよう腕を磨き、高まる需要に応えたい」と意気込む。
1921(大正10)年創業で、祖父から続く3代目の店主。近所の車いす利用者がタイヤの空気入れに訪れた際、「顔なじみに整備を頼めれば」と聞き、昨年9月、車いすの安全整備士への挑戦を決意した。
資格は「日本福祉用具評価センター」(JASPEC、神戸市)が福祉用具の安全性を高めようと、2010年から実施。2日間の講義と実技講習をパスする必要があり、石本さんは1回で合格した。
JASPECによると、現在の認定登録者は約800人。福祉施設の職員や車いすメーカーの社員などが大半だが、自転車店経営者の関心も少しずつ高まっているという。
レンタル仕様の車いすは、貸出業者が保守点検をするが、個人が購入した場合、自ら整備しなければならない。石本さんは「個人の利用者が安心して預けられる拠点になれば」と話す。
既に、福祉機器部品の卸売業者とのルートを開拓。長年の自転車修理技術を生かし、車いす独特の微妙なブレーキの利き具合や車輪のゆがみなど不具合を直す。今では、店の近くにある高齢者施設に出張点検に出向く機会も増えた。
JASPECセンター長の鈴木寿郎さん(57)は「パンク修理などプロの技術が生かせる。今後、代車への移動補助など高齢者や障害者への対応ができれば、利用者には心強い」と期待を寄せる。石本さんも「客層が広がり、地元の人と幅広く関わることができる」と喜んでいる。
車いすを整備する自転車店の店主石本雅映さん
2015/7/24 神戸新聞