◆慎重論の出演者なし
NHKが同性愛者などの、いわゆる性的少数者(LGBT)問題を、親和的な視点で取り上げていると、この欄でたびたび指摘してきた。その報道姿勢はいつから始まったのかは、正確には分からないが、筆者の知る限り、NHKEテレの「ハートネットTV」の前身番組「ハートをつなごう」がこのテーマを積極的に扱っていたから、かれこれ7~8年前からだろうか。
今月11日放送の「週刊ニュース深読み」は、「世界に広がる“同性婚” どうなる?結婚のカタチ」と題して、またまたLGBT問題を扱った。ゲストとして出演したタレントの小椋久美子(元バドミントン選手)は、アナウンサーの徳永圭一から「LGBTって、最近よく聞くようになりましたが、どういう言葉かご存じですか」と聞かれて、「分かってなかったんです」と、戸惑いの表情を見せた。
この問題に特別関心を持つ人でなければ、それが正直な感想だろう。LGBTとは、レズ(L)、ゲイ(G)、バイセクシャル(B)、トランスジェンダー(T=性同一性障害者ら)のことだ、とこれまでも何度かこの欄で説明してきたが、一般にはよく理解できない概念である。
視聴者の知識不足を見越してなのか、この番組も偏りのある情報が随所にちりばめられて、ウオッチャーからすれば突っ込みどころ満載の企画だった。それをすべて紹介する紙幅はないが、第一の偏りは出演した専門家の顔ぶれ。同性愛者のブルボンヌ(タレント)、LGBT支援法律家ネットワークメンバーで弁護士の中川重徳、同性愛への寛容性を研究する明治学院大学教授の石原英樹、NHK解説委員の高橋祐介の4人。番組は、米国の連邦最高裁判所の「同性婚」合法化判決を題材に始まったが、一人も同性婚の合法化に疑問を呈したり、慎重であるべきだとの発言をする出演者はいなかった。議論の前提となるデータも信頼性に疑問符の付くものばかりだった。
◆1・5倍増の不自然
番組が行ったアンケートでは、同性婚を容認すべきだとしたのは43%、反対19%、「どちらともいえない」38%だった。しかし、対象人数は885人と少ない。その上、NHKネットクラブの調査でネットを利用する層に限られるから、この数字が社会の現状を正確に映し出しているとは言い難い。
信頼できないデータはさらにある。キャスターの小野文惠が紹介した「LGBTは13人に1人」だ。つまり、日本では性的少数者が「7・6%」もいるというのだ。
この数字は、電通総研などが今年4月、ネットを使って約7万人を対象に行った調査の結果である。それがなぜ、疑わしいのかというと、電通総研は2012年に同様の調査を行っていて、その時の結果は「5・2%」だったのだ。
「週刊ニュース深読み」は昨年5月10日にもLGBT特集を組んでいる。その時は12年調査を基にLGBTは「20人に1人」とした。わずか3年あまりで性的少数者が1・5倍に増えるのは不自然である。
今回の番組では、性的少数者が「あなたの身近にいるか」というアンケート結果も公表した。それによると、「いない」と答えた人は83%だったが、筆者が注目したのは「自分がそう」が2%しかなかったことだ。出演者は社会の偏見が強くカミングアウトしづらいという文脈で、83%の数字を強調したが、電通調査と大きなずれがある2%については誰も触れなかった。
◆男女と同じではない
日本で同性婚を制度化することには賛否両論あるが、少なくとも正確なデータを視聴者に届けるという責任がNHKにはあるのだから、紹介した数字の持つ意味、信憑(しんぴょう)性を多角的に分析すべきだった。それを疎(おろそ)かにして無批判に紹介したのは、番組の狙いに合致したからなのだろう。
使用する基本的データがこの状況なのだから、出演者の発言内容は推して知るべしである。中川がこんなことを言った。「(同性カップルに結婚という)選択肢自体が今ないっていうところが、すごく不平等ですよね。同じ愛なのに」
男女の愛と、同性同士の愛が同じでないことは、誰にでも分かるはずである。次世代を生むことができるかどうかという決定的な違いがあるのだ。また、「同じ愛」というなら、わが国の婚姻制度では、3親等以内の結婚を認めていないが、これも差別だというのだろうか。同性婚の容認43%は、長年にわたるNHKのLGBT偏向報道の結果なのかもしれない。
(敬称略) 2015/7/26 新聞 TV 週刊誌