戦傷病者と家族の労苦を伝える「しょうけい館」(東京都千代田区)では戦後70年のことし、企画展「戦傷病とは? 第1部戦傷」を9月27日まで開催している。常設展とともに、戦争が残す深い傷痕を物語っている。
けがをしたときに身に着けていた物を展示するコーナーには、弾痕の残る眼鏡や軍帽も。火炎放射器による熱傷を負った戦傷兵の写真や摘出された砲弾の破片を見ることができる。
常設展の野戦病院のジオラマは、戦争末期、東南アジアの壕の中での手術の様子を再現している。戦場では、医薬品や手術道具などが足りず、麻酔をせずに手足の切断手術をしたという。義足や義眼、つえなども展示され、希望すれば、明治時代の軍人、乃木希典大将が設計した義手のモデルを身に着け、豆を皿から皿へ移す体験もできる。
戦後、重度障害者を除き、軍人恩給が廃止され、戦傷病者は苦しい生活を送った。1951年にサンフランシスコ講和条約が結ばれ、恩給が復活するなど援護施策が進められたが、戦傷病者の就職や暮らしには不安が絶えなかったという。
最盛期は会員が約35万人いた日本傷痍軍人会は約5千人に減り、2013年に解散。戦傷病者が戦争とその後の人生を語る姿を見られる証言映像シアターは貴重な史料となっている。
「戦いに盲となりて五十年おぼろにても見たし孫達の顔」という短歌や「生まれ変わる時は両手揃った健全な人として平和な日本に生まれたい」といったメッセージも後世のために残されている。入場無料。月曜日休館。
新潟日報 2015/08/12