更生保護施設で高齢者・障害者の出所者を指導する福祉スタッフをほぼ倍増するなど受け入れ体制強化の方向性を法務省が示した。通常より負担が重い施設を支援する施策に対し、関係者からは歓迎する声が上がっている。法務省は「社会復帰の最後のとりで」と呼ばれる更生保護施設だけでなく、自立準備ホームや民間企業の協力体制づくりも進めており、官民をあげた再犯防止の旗振り役を務めている。
更生保護施設は、保護観察所の委託を受け、釈放されたばかりの出所者に生活指導や就労支援を行う。出所者は施設で暮らしながら仕事を探し、やがてアパートへ転居するなどして社会に復帰していく。
元刑務官や犯罪者の更生支援を志す高齢者らが更生保護法人の一員として運営するが、「定員20人、職員4人程度の小規模施設で、365日、1日24時間、出所者を処遇する“極限状態”の施設も少なくない」(法務省保護局)という。
更生保護施設は、受け入れ人数や日数などに応じ、国から委託費を受給し運営費に充てる。限られた職員で運営しなければ経営が成り立たず、稼働率を上げられないところが少なくないため、同局幹部は「福祉の専門家や非常勤職員を増やせば、受け入れ人数の増加が期待できる」と話す。
「更生保護施設の積極的な取り組みに対し、政府が財政的な支援をしてくれるのは助かる」。東京都渋谷区で女性向け更生保護施設を運営する「両全会」の小畑輝海理事長は法務省の施策を歓迎する。両全会では滞在者の約6割が高齢者や障害者だ。専任の看護師の女性は「高齢者や障害者は就労が困難な上、指導も難しくなる。それでも本人がやる気をもって仕事を見つけ、自立した後に近況を知らせてくれると、再犯していないことが分かる」と現場の苦労と喜びを語る。
政府目標である出所者約2千人の“居場所”を確保するため、法務省は更生保護施設のほかに、自立準備ホームや民間企業の協力も求めている。自立準備ホームでは、保護観察所に登録された社会福祉法人など全国332事業者(今年3月末時点)が宿泊場所と食事を提供、自立支援も行う。出所者の新規受け入れ委託人数は、更生保護施設で6676人(平成25年)、自立準備ホームで1109人(25年度)だった。
一方、出所者の雇用に協力する民間企業は「協力雇用主」と呼ばれ、全国に1万4千社以上ある。このうち約670社で実際に出所者を雇用している。
政府は実雇用する協力雇用主を3倍に増やす目標も掲げるが、法務省は27年度に協力雇用主への奨励金制度を創設。直近4カ月で約120社増加したという。
2015.8.27 産経ニュース