大学生のころ、知的障害者施設に住み込んでアルバイトをしたことから障害者福祉の道に進み、施設の職員や管理者として半世紀にわたり障害者を支援してきた男性がいる。佐賀市の諌山眞司さん(72)。末期がんで入退院を繰り返しているが、3年前に設けた施設を軌道に乗せるため奮闘している。「利用者のために最期まで働きたい」と話す。
諌山さんは1942年、福岡県出身。佐賀大農学部2年生のとき、家賃が不要で仕事を手伝えば食費が賄えるということで佐賀市内の知的障害児入所施設「めぐみ園」に住み込んだ。
そこで脳性まひの少年と知り合う。あるとき少年に誘われ、市内の公園に出かけた。途中の路地で向こう側から母子が歩いてきた。すれ違う際に母親は子どもを守るように背を向け、息を止めて少年が通り過ぎるのを待った。「障害者は日常、こんな目に遭ってつらい思いをしているのか」と思った。「少しでも重荷を分かち合いたい」という気持ちが募った。「せっかく大学を出たのに、どうして福祉なんかを」という母親や、農学部長に反対されたが、卒業後はめぐみ園に就職した。
「今はもう気力だけです」と話す諌山眞司さん=佐賀市
2015年8月15日 朝日新聞