志太榛原地区 宅建協などがパンフ作成
精神障害者の自立を助ける住宅あっせん制度を広めようと、県宅地建物取引業協会中部支部しだはい支所などは、パンフレット「障害があっても地域でくらす」を作った。障害者差別解消法が四月に施行されたこともあり、志太榛原地域で障害を理由に家を借りられない状況をなくすのが目的だ。
あっせん制度は三年前、しだはい支所と志太榛原地域自立支援推進会議専門部会が地域の障害者支援の一環で設けた。住まいを借りたい精神障害者を相談支援事業所や医療機関、民生委員が連携して包括的に支えることを主眼にしている。
住まいを探す人が相談支援事業所などを通じて支所に依頼書を提出する際、緊急連絡先となる医療機関の担当者、民生委員など複数の支援者が署名した同意書を添えることができる。支所は場所や家賃など条件に合う物件紹介を家主や仲介業者に依頼。借り主には、家賃の支払いが滞った時に業者が代行納入する家賃保証の保険に入ってもらう。
小林修支所長(66)は「いざという時の責任があやふやだと不安になる。責任を分担すれば家主の協力も得られやすい」と説明する。パンフレットは相談支援事業所や医療機関などに置いているほか、家主や仲介業者対象の研修会でも配って制度の周知を図っていく。
◆自立の道 住まいから
住宅あっせん制度が設けられた背景には、根強い精神障害者への偏見や無理解がある。自立に向け、アパートなどを借りようとしても、家主には、家賃はしっかり払ってくれるのか、他の入居者に迷惑を掛けないかといった心配が常にある。
制度づくりに尽力した精神保健福祉士で、相談支援事業所などを運営するNPO法人こころ(島田市)の菅原小夜子施設長(52)は「家族と同居していても家に居場所がなく、自立を望む人は多い」と話す。
精神障害者は長期入院する人や入退院を繰り返す人が多い。その一因には、地域に受け入れる体制がなく、退院できても行き場が見つからないという事情がある。菅原さんは、住宅あっせんの推進が精神障害者の自立につながると考え、宅建協会に協力を求めた。
理想はアパートの隣人や自治会などにも障害のことを伝え、支えてもらうこと。だが偏見やプライバシーの問題で本人も嫌がり制度を使った契約に至っても、ほとんどは隣人には伝えられない。
菅原さんは「時間がかかっても、その人なりに地域で当たり前に暮らしていける仕組みが必要」と訴えている。
<障害者差別解消法> 障害を理由とする不当な差別を禁じ、障害者も健常者と同等のサービスを受けられるようにする「合理的配慮」を行政機関や民間事業者に義務づける法律。行政機関には法的義務があるが、民間事業者は努力義務にとどまる。
パンフレットを紹介する宅建協会しだはい支所の小林支所長(中)ら
2016年5月20日 中日新聞