ゴエモンのつぶやき

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パラ有力選手発掘へリミット 東京大会まで3年

2017年08月29日 02時49分28秒 | 障害者の自立

 2020年東京パラリンピックを目標に、メダルを狙える有力選手の発掘、育成や競技転向を探る動きが活発化している。大会に間に合わせるには「残り3年がリミット」と日本パラリンピック委員会(JPC)の強化担当者。その波が京滋のアスリートや現場にも押し寄せている。

■京都・滋賀へも波

 福知山高1年の足立悠都選手(15)=京都府福知山市=は、昨秋に行われた国の選手発掘事業への参加をきっかけに東京パラ出場を目指している。今春から陸上の走り高跳びに挑み始め、7月には早くも日本パラ陸上連盟の強化育成指定選手になった。「やるからには東京に出たい」と夢を描く。

 昨年11月、高校時代は走り高跳びの選手だった母の歩さん(46)の勧めで、国立スポーツ科学センター(東京都)で行われた選手発掘事業に参加した。身長179センチ、体重55キロと細身で手足が長い体つき。短距離走や垂直跳びなどの測定を受けると、陸上関係者から熱い視線を浴びた。「跳躍に向いている体格。頑張ればパラに出られるかもしれないよ」。声を掛けられ、心が動いた。

 小学生から始めて全国2位にもなった社交ダンスを続けるか悩んだ末に決断し、高校では陸上部へ。「パラリンピック、大きな世界大会に出場したい」との思いが決め手になった。

 生まれつき左前腕の二つの骨がくっつく病気などのため、左腕は短く、握力もほとんどない。体を動かすのは幼少の頃から好きで、雪の中でもサッカーを楽しんだ。中学では先輩に誘われてソフトテニス部に入ったが、意識が変わり始めたのは昨年9月のリオデジャネイロ大会。義足で走り高跳びに挑むアスリートをテレビで見て「すごい選手がいる」と感動した。

 初挑戦となった今年6月の日本パラ陸上選手権は1メートル50センチを跳んだ。好記録を次々に打ち出した他種目のトップ選手に刺激を受けた。7月には「自分の可能性を試したい」と大阪市内であったJPCの選手発掘事業に参加、テコンドーやボートを体験した。

 関係者から高い評価を得たが、今は陸上への思いが勝る。「もっと筋力をつけないと。自己記録を伸ばし日本代表に」と目を輝かせた。

■競技転向も

 福知山高の足立選手が7月に参加したJPCの選手発掘事業は、競技スポーツに取り組む障害者を対象に、東京大会でメダル獲得の可能性が高い競技へ転向を促す狙いがあった。陸上や水泳のほか視覚障害者柔道など13競技団体が参加者30人の潜在能力を探った。JPCの強化担当者は「現在、11人が各競技団体とコンタクトを取っている」と成果を強調する。

 競技人口の少ないパラ競技は、一握りのトップ選手だけが突出する「鉛筆型」と呼ばれる構造になっている。障害者スポーツに詳しい立命館大産業社会学部の金山千広教授は「健常者のスポーツと違って母数が少なく、種目トランス(転向)が効果的」と話す。ハンドボールから陸上に転向して1年半でリオ大会銅メダルに輝いた辻沙絵選手のように、各選手の適性の見極めと戦略が重要だ。

 日本体育協会が事業主体となり、五輪とパラの有望選手を発掘、育成する「ジャパン・ライジング・スター・プロジェクト」も本年度に始動し、今月13日に京都市内でパラ5競技の測定会が行われた。京都府はパワーリフティングと車いすフェンシングの2競技が育成拠点に指定され、1競技1千万円の助成金を基に、選抜された選手への支援を府体協が担う。府体協の川村隆史事務局長は「各競技団体と相談しながら事業を進めていく。フォーラムなどでプロジェクトの周知を図りたい」と意気込む。

 滋賀県はスポーツ庁から委託を受け、特別支援学校を活用した実践事業に取り組む。2024年の国体とともに開く全国障害者スポーツ大会を見据え、「軸足は普及に」(県スポーツ局)と地域レベルで裾野を広げることを優先する。

 金山教授は「20年以降は国の予算が今のように潤沢に付かなくなるはず。地域総合型スポーツクラブや学校教育で障害者スポーツを推進する体制をつくっておくべき」と提言する。

陸上の走り高跳びでパラリンピック出場を目指す足立選手(福知山市・福知山高グラウンド)
陸上の走り高跳びでパラリンピック出場を目指す足立選手

 2017年08月27日    京都新聞


五輪向け新技術、次世代へのレガシーに

2017年08月29日 02時25分12秒 | 障害者の自立

パナ、トヨタら日本企業が開発注力

 世界が注目する2020年の東京五輪・パラリンピックを見据えて、日本企業が新技術の開発に力を入れている。国際市場に存在感をアピールすると同時に、大会の運営や選手らを支援し、次世代にレガシー(遺産)として残したい考えだ。

 パナ「おもてなし」

 パナソニックは「おもてなし」で技術革新を目指す。その一つが、暑い日本で快適に過ごしてもらう「グリーンエアコン」だ。水と空気を交ぜた100分の1ミリの細かなミストを、気流を使った「空気のカーテン」で包み込んだ空間に噴霧して涼しくする。一般的なミストと違い新聞や眼鏡もぬれないのが特徴で、化粧も崩れない。駅前広場や公園で活用する。

 自律型ロボット「HOSPI(ホスピ)」は空港やホテルでロビー内を動き回ってドリンクを運んだり、使用済みの食器を下げたりしてくれる。あらかじめ記憶させた地図情報に基づき、高性能センサーで人や障害物をよけて進む。今後、部屋への案内やルームサービスをできるようにする。

 障害者の移動を手助けするため、自動で車いすを追尾して荷物を運んでくれる「ロボット電動カート」の開発も進める。

 スポーツ観戦の新たなスタイルに取り組むのはNTTだ。映像技術「Kirari!(キラリ)」は、競技場で撮影した選手の姿を離れた場所へリアルタイムに送り、立体的に再現。パブリックビューイングで大型画面ではなく、目の前で動いているように見える等身大の選手を応援できる。

 NTTが持つ映像や音響、通信の技術を結集した。伝送した映像を透明なフィルムに投影し、浮かび上がらせる仕組み。独自の映像処理技術によって臨場感を高めた。柔道の組み手の実演では素早い手足の動きは滑らかに見え、客席の歓声もすぐそばから聞こえ、会場にいるかのようだった。プロジェクトを率いる南憲一主幹研究員は「伝統芸能やコンサートなどビジネスチャンスは多い」と強調する。

 水素社会のモデル

 トヨタ自動車は、水素を燃料に水しか排出しない燃料電池の車やバスが会場周辺などを走る青写真を描く。組織委員会は大会を水素社会のモデルにする目標を掲げており、交通分野で貢献する。

 トヨタは燃料電池バスを東京都に2台納入しており、バス会社も含め約100台に増やす。燃料電池車は公式車への提供を想定。世界初の一般向け燃料電池車「MIRAI(ミライ)」を発売したが十分に普及しておらず、観客や大会関係者に広く体感してもらう。

 自動運転技術も披露する予定で、伊藤正章オリンピック・パラリンピック部長は「豊かな乗り物社会をしっかり提案する。未来の一端を見ていただけるようにしたい」と話す。

 五輪は新技術をアピールする良いチャンスだが、その後に広まるとは限らない。五輪の効果を研究する三菱総合研究所の仲伏達也プラチナ社会センター長は「社会に浸透させ、市場をつくるところまでを意識する必要がある」と指摘する。

パナソニックのグリーンエアコンのイメージ(同社提供)  パナソニックのロボット電動カート(同社提供) 

 パナソニックのグリーンエアコンのイメージ(同社提供)         パナソニックのロボット電動カート(同社提供)

 2017年8月28日   SankeiBiz


車いすツインバスケ、巧みに 滋賀で近畿大会

2017年08月29日 02時16分09秒 | 障害者の自立

 障害のある人が、高さの違う二つのゴールを狙ってプレーする「第27回近畿車椅子ツインバスケットボールびわこ大会」(NPO法人・県脊髄損傷者協会など主催)が27日、滋賀県草津市笠山8丁目の県立障害者福祉センターで開かれ、5チームが熱戦を繰り広げた。

 車椅子ツインバスケは高さ3・05メートルの通常のゴールに加え、高さ1・2メートルのゴールがある。狙えるゴールやシュートの位置が個々の障害の程度によって決められている。

 5府県から参加し、トーナメントで争った。滋賀の「INFINI(アンフィニ)」と「京都サンクロウズ」は初戦で激突。選手たちは車いすを巧みに操り、ゴールを決める度に「ナイスシュート」と声を掛け合った。後半に12点差を逆転した京都サンクロウズが61-59で「京滋対決」を制した。

高さ1・2メートルのゴールを狙う「INFINI」の選手

2017年08月28日   京都新聞


自然に抱かれ豊かな学び 多彩な体験や講座で成長

2017年08月29日 02時10分29秒 | 障害者の自立

こども高野山夏季大学

 「第(だい)11回(かい)こども高野山夏季大学(こうやさんかきだいがく)」(毎日新聞社主催(まいにちしんぶんしゃしゅさい)、雪印(ゆきじるし)メグミルク特別協賛(とくべつきょうさん))が7月(がつ)27~30日(にち)、弘法大師(こうぼうだいし)・空海(くうかい)が開(ひら)いた山上(さんじょう)の聖地(せいち)・高野山(こうやさん)(和歌山県高野町(わかやまけんこうやちょう))で開(ひら)かれました。全国(ぜんこく)から小学(しょうがく)4~6年生(ねんせい)60人(にん)が参加(さんか)。宿坊寺院(しゅくぼうじいん)・常喜院(じょうきいん)で3泊(ぱく)4日(よっか)の共同生活(きょうどうせいかつ)をしながら、多彩(たさい)な体験学習(たいけんがくしゅう)や講座(こうざ)を通(とお)して、命(いのち)や自然(しぜん)の尊(とうと)さを学(まな)び、豊(ゆた)かな感性(かんせい)を育(はぐく)みました。立命館大学(りつめいかんだいがく)の学生(がくせい)や留学生(りゅうがくせい)13人(にん)がリーダー役(やく)となり、子(こ)どもたちをサポートしました。

 ◆1日目(にちめ)

世界遺産(せかいいさん)を散策(さんさく)

 子(こ)どもたちはふもとから高野山(こうやさん)に向(む)かうのに、世界遺産(せかいいさん)「紀伊山地(きいさんち)の霊場(れいじょう)と参詣道(さんけいみち)」の一部(いちぶ)で、高野山(こうやさん)の表参道(おもてさんどう)として知(し)られる「高野山町石道(こうやさんちょういしみち)」を歩(ある)きました。地元(じもと)の語(かた)り部(べ)から説明(せつめい)を聞(き)きながら、緑豊(みどりゆた)かな古道(こどう)をハイキング。大雨(おおあめ)のため散策(さんさく)は途中(とちゅう)までとなりましたが、高野山(こうやさん)の玄関口(げんかんぐち)にあたる「大門(だいもん)」に到着(とうちゃく)すると、子(こ)どもたちは元気(げんき)いっぱいの笑顔(えがお)で記念撮影(きねんさつえい)に応(おう)じていました。

 夜(よる)は、盲目(もうもく)の落語家(らくごか)、桂福点(かつらふくてん)さん(49)が講師(こうし)となり、軽妙(けいみょう)な語(かた)り口(くち)で命(いのち)の大切(たいせつ)さについて子(こ)どもたちに語(かた)りかけました。創作落語(そうさくらくご)や歌(うた)なども披露(ひろう)し、子(こ)どもたちは熱心(ねっしん)に聴(き)き入(い)っていました。

 ◆2日目(かめ)

白杖(はくじょう)、紙(かみ)すき、写真(しゃしん)を体験(たいけん)

 1日目(にちめ)に続(つづ)いて福点(ふくてん)さんが登場(とうじょう)し、視覚障害者(しかくしょうがいしゃ)が持(も)つ白杖(はくじょう)を使(つか)って歩(ある)く方法(ほうほう)を教(おそ)わる体験教室(たいけんきょうしつ)がありました。白杖(はくじょう)を持(も)ち、アイマスクをして歩(ある)いてみるなど、障害者(しょうがいしゃ)の立場(たちば)になった行動(こうどう)について学(まな)びました。

 続(つづ)く紙(かみ)すき教室(きょうしつ)では、牛乳(ぎゅうにゅう)の紙(かみ)パックを利用(りよう)したリサイクルはがき作(づく)りに挑戦(ちょうせん)。雪印(ゆきじるし)メグミルクの社員(しゃいん)からリサイクルの大切(たいせつ)さについても教(おそ)わりました。

 近(ちか)くの高野山大学(こうやさんだいがく)を訪(たず)ね、坂口太郎助教(さかぐちたろうじょきょう)(35)による町石道(ちょういしみち)に関(かん)する講義(こうぎ)も受(う)けました。歴史(れきし)を勉強(べんきょう)した後(あと)、毎日新聞大阪本社写真部(まいにちしんぶんおおさかほんしゃしゃしんぶ)の猪飼健史記者(いかいけんじきしゃ)による写真撮影教室(しゃしんさつえいきょうしつ)もあり、金剛峯寺(こんごうぶじ)を舞台(ぶたい)に撮影会(さつえいかい)も開(ひら)かれました。子(こ)どもたちは各自持参(かくじじさん)したデジタルカメラを手(て)に、思(おも)い思(おも)いの撮影(さつえい)に挑(いど)みました。

 夜(よる)は奥(おく)の院(いん)でムササビ観察(かんさつ)。木(き)から木(き)へ飛(と)び移(うつ)るムササビを見(み)つけ、子(こ)どもたちも大喜(おおよろこ)びでした。

 ◆3日目(かめ)

瞑想(めいそう)で集中力養(しゅうちゅうりょくやしな)う

 大師教会(だいしきょうかい)の大講堂(だいこうどう)で、真言宗(しんごんしゅう)に伝(つた)わる瞑想法(めいそうほう)「阿字観(あじかん)」を体験(たいけん)。仏(ほとけ)を意味(いみ)する「阿(あ)」の1文字(もじ)に7分間(ふんかん)、精神(せいしん)を集中(しゅうちゅう)させることで集中力(しゅうちゅうりょく)を養(やしな)いました。

 高野山高校(こうやさんこうこう)の生徒(せいと)5人(にん)が弘法大師・空海(こうぼうだいし くうかい)の歩(あゆ)みを紙芝居(かみしばい)で紹介(しょうかい)。その後(ご)、高野山大学(こうやさんだいがく)の学生(がくせい)1人(ひとり)が加(くわ)わってガイド役(やく)となり、奥(おく)の院(いん)を散策(さんさく)。子(こ)どもたちは織田信長(おだのぶなが)ら戦国武将(せんごくぶしょう)の墓(はか)などを見(み)つけては、歓声(かんせい)を上(あ)げていました。

 夕方(ゆうがた)からは、夕食(ゆうしょく)のカレー作(つく)りに挑戦(ちょうせん)。途中(とちゅう)、大雨(おおあめ)に見舞(みま)われつつも、みんなで協力(きょうりょく)し合(あ)い、おいしいカレーを完成(かんせい)させていました。

 ◆4日目(かめ)

未来(みらい)の自分(じぶん)へ手紙(てがみ)

 毎日小学生新聞(まいにちしょうがくせいしんぶん)の西村隆編集長(にしむらたかしへんしゅうちょう)による「新聞の読(しんぶん よ)み方講座(かたこうざ)」があり、いろんな記事(きじ)に目(め)を留(と)める「道草読(みちくさよ)み」の大切(たいせつ)さなどを学(まな)びました。

 続(つづ)いて、2日目(ふつかめ)の紙(かみ)すき教室(きょうしつ)で作(つく)ったはがきを使(つか)って、家族(かぞく)や友(とも)だち宛(あ)てと1年後(ねんご)の自分宛(じぶんあ)てにそれぞれ手紙(てがみ)を書(か)きました。自分宛(じぶんあ)ての手紙(てがみ)は、毎日新聞社(まいにちしんぶんしゃ)で1年間保管(ねんかんほかん)されてからポストに入(い)れられます。

 解散式(かいさんしき)では、たくさんの思(おも)い出(で)を胸(むね)に、仲良(なかよ)くなった友(とも)だちとの別(わか)れを惜(お)しみました。

毎日小学生新聞   2017年8月28日


介護放棄 介護施設職員も危惧する、その悲劇的な実態

2017年08月29日 01時53分51秒 | 障害者の自立

 すでに亡くなった父や母の死亡届を出さず、親に支払われる年金や恩給を自分の収入としていた子どもが逮捕された。そんなニュースを聞くようになってずいぶん経つ。最近は、よっぽどの事例でないと報じられなくなっているが、それは、件数が減ったのではなく、珍しいことではなくなったからだ。ライターの森鷹久氏が、事件を未然に防ぎたいと願う介護職の人たちの思いが、家族による介護に対して無力な制度に阻まれる現実を追った。

 * * *
「自宅床下から見つかった母親の遺体は綺麗に白骨化していて、もはや死亡時期もわからないくらいでした。外傷もなく病死であったと思われますが…。同居していた息子は“気がつかなかった”の一点張り。その後、息子は罪に問われることなくシャバで暮らしているのです」

 超高齢化時代に突入したわが国では、すでに珍しいことではなくなった老人の孤独死。一昨年、関西某県で発生した事件について、警察幹部は冒頭のように述べ、下唇を噛みしめる。

「息子には、十数年に渡って母親の年金を不正に取得していたのではないか? という疑惑がかけられていました。母親は十数年前には亡くなっていたことがわかったからです。ただし、息子が直接殺したわけではない。母親の通院記録などによれば、腎臓がかなり悪かったようで、最後は息子にも看取られず一人布団の上で亡くなり、息子が遺体を隠していたのではないかと思われますが、推測の域は出ませんでした」(県警幹部)

 死んだ親の存在を隠し、その年金をせしめるダメ子供。似たようなニュースを耳にしたこともあるが、このような事件は明日にも、いや、今まさにそこら中で起きようとしている。群馬県南部のデイケア施設で責任者を務める庄司さん(仮名・40歳)は、入居者の男性が“被害者”にならないかと危惧する。

「認知症の男性Aさん(70代)は、半身不随の重度障害者で、当施設に通われています。自宅では家族の方が面倒を見られているということですが、服は常に汚れていて、髭も髪もボサボサ。家族の方がしっかりケアされているのか、送迎のついでに自宅を訪ね、確認させていただいたのですが……」

 Aさん宅を訪れた庄司さんは、そこで驚くべき光景を目にした。毎朝、施設の職員がお邪魔する玄関と、すぐ横の和室だけが綺麗な状態に保たれていたものの、その奥の居間や和室にはゴミが溢れており、ゴミの中にはなんと、Aさんよりも高齢の寝たきり女性が、カビだらけの布団に横たわっていたのだ。Aさんの介護をしている、と主張するのは、Aさんの息子の妻であるB子(50代)。

「B子さんは毎日笑顔でAさんを送り出し、職員との関係も良好でした。しかし、Aさんの様子がおかしいことや家庭状態について職員が尋ねると態度を豹変させた。たかが施設の職員が口を出すな、お前たちはこの家やAさんの財産を乗っ取る気か? と罵声を浴びせられたんです」

 役所やAさん宅の近所を訪ね、Aさん一家について調査をした庄司さんは、そこで初めて、Aさんが置かれた状況、そしてAさんやAさんの母がすでに「被害者」になっていることを知った。

 Aさんの息子であるB子の夫は、数年前に事故死。未亡人となったB子はその後、義父であるAさんの介護に追われたが、そのうち同居する義祖母、Aさんの母親も寝たきりになり、二人の介護をせざるを得なくなった。カビだらけの布団に横たわっていた高齢女性がその人だ。さらにB子には現在30代の娘と、20代後半の息子がいたが、この二人の子供はそれぞれ中学時代に壮絶なイジメにあい、高校に進学することもなく、何年も引きこもっていた。

「義父Aさんと義祖母、嫁のB子、その子どもたちあわせて5人いる一家のうち、誰一人働いていません。B子は年金をもらうまであと数年ありますし、子供二人は完全な引きこもりで二階の部屋から出てこず、職員は見たことがありません。要は、B子もその二人の子供も、Aさんの障害者年金やAさんの母の年金で暮らしているのです。いろんな事情で働けないのは仕方がありませんが、AさんもAさんの母親も、まともに介護を受けていらっしゃらない。二人のうち、どちらかが自宅でお亡くなりになった場合、B子とその子どもたちは、事実を隠して、年金を不正に受給するのではないかと……。AさんやAさんの母親が気の毒すぎて……」

 事実を知った庄司さんは、すぐに役所に通報。AさんやAさんの母親が無事保護されるかと思われたが……。

「役所が一度立入検査をしたようですが、結果は問題無し、と。全く信じられませんが、B子はAさんやAさんの母親に虐待をしたわけでもなく、ただ配慮が甘かっただけだと主張し、役所もそれを受け入れるしかなかったというんです。怒ったB子は、うちの施設は信用できない、名誉毀損だと怒り狂った挙句、Aさんを無理矢理に別施設に通わせるようになりました……」

 縁が切れてもAさんが無事でいるか、思いを馳せない日はないという庄司さん。庄司さんのように、受けるべき介護を受けられずにいる高齢者を助けたいと願っても、家族による介護を基本になっている日本の仕組みでは限界がある。世界じゅうのどこも経験したことがない超高齢化時代を迎える前に、悲劇の拡大を食い止める方法はないものか。

介護放棄 介護施設職員も危惧する、その悲劇的な実態

家族なら必ず介護すると考えるのは過去の話

 2017年08月27日    NEWSポストセブン