石川県小松市の荒れ果てた寺が、天然温泉の銭湯を備えた福祉施設に生まれ変わり、地域のにぎわいづくりに一役買っている。サービスを受ける高齢者や障害者に加え、一般の利用客も含めると、多い時で250人近くの人が訪れるという。
施設は三草二木西圓寺。2008年にオープンし高齢者のデイサービスや、障害者の生活介護と就労支援をしている。元は1473年創建の浄土真宗の寺。05年に住職が亡くなり廃寺となった。
お寺の外観をそのまま残した建物に入ると、元は本堂だった60畳間で高齢者がテーブルを囲み、笑い声を響かせていた。併設したカフェでは就労支援を受ける障害者が食事を運ぶ。一角にある駄菓子販売のコーナーは学校帰りの子どもの遊び場に。カフェは夜、近所のシニア世代が調理の腕を振るう居酒屋に変わる。
開設したのは同県白山市の社会福祉法人佛子園。「廃れた寺を何とかして」と町内会から相談を受け、高齢者がデイサービスを受けたり障害者が働いたりできる場にリノベーション(改修)することにしたという。
特に好評なのは地下約750メートルから涌き出る掛け流し温泉だ。土間や仏間を浴場に改装し、地域の69世帯には無料で、一般客には400円で開放している。
施設長の安倍真紀さん(39)は「ここはいろんな人が日常的に交流する場所」と話す。福祉施設に抵抗がある高齢者も顔なじみが多いため、お寺に行く感覚で気軽に立ち寄れるという。デイサービスを利用する女性(86)も「週4回は使っているが、毎回来るのが楽しみ」と笑顔を見せた。
2015.7.30 産経ニュース