難病で障害を抱えた札幌市在住の主人公と介助するボランティアの交流などを描いたノンフィクション「こんな夜更けにバナナかよ」の映画化が決まり、道内各地で撮影が進んでいる。主演は俳優の大泉洋さんで、今冬に全国公開される予定。
原作の主人公は、全身の筋肉が衰える難病「筋ジストロフィー」を発症し、車いすや人工呼吸器を使った24時間介護が必要になった鹿野靖明さん。自宅での自立した生活を選択し、2002年に42歳で亡くなった。
タイトルは、鹿野さんが深夜に大学生ボランティアを起こし、「腹が減ったからバナナ食う」と言い出したというエピソードから。原作では、介助者にとっては時にわがままとも思える振る舞いをする鹿野さんとボランティアが本音でぶつかり、向き合った。そんな両者の葛藤と苦悩の日々を描いている。
映画は鹿野さんを演じる大泉さんのほか、高畑充希さん、三浦春馬さんがキャスティングされた。監督は「ブタがいた教室」などの前田哲さん、脚本は「テルマエ・ロマエ2」などの橋本裕志さんで配給は松竹株式会社。
オール北海道ロケで7月上旬まで札幌や旭川方面などで撮影する。鹿野さんが実際に暮らしていた住宅などでも撮影が行われる。大泉さんは「どんなに『わがまま』を言っても周りから愛され続けた鹿野さんを、その理由を考えながら真摯(しんし)にコミカルに演じられたらと思っています」とコメントしている。【安達恒太郎】
生きることの意味実感して 原作者・渡辺さん
原作の著者は、ノンフィクションライターで札幌市在住の渡辺一史さん(50)。自身も約2年半、ボランティアとして鹿野さんを介助しながら取材を続け、講談社ノンフィクション賞と大宅壮一ノンフィクション賞をダブル受賞した。
渡辺さんは「鹿野さんは、どんなに重い障害があっても地域で普通に生きることを貫いた人だった」と話す。
夜中にバナナを食べることもその一つで、「一見わがままだと捉えられかねないが、動けない人にとっては当然の欲求。それにボランティアも気付き、人間的に成長していった」と強調。鹿野さんとボランティアの交流や葛藤を通して、人が生きることの意味を実感してほしいと願っている。
毎日新聞 2018年6月27日