適格退職年金の移行先として、確定給付企業年金(規約型)は、中小企業に
とっては、やはり重たい制度だと思います。
確定給付企業年金は、
①加入20年で年金での給付、加入3年で一時金の受給権が発生します。
適年では可能だった、「定年時のみの給付」は認められていません。
②年金財政決算、再計算での検証が必要となります。
厚生年金基金と同様に、「継続基準」、「非継続基準」による検証が必要です。
③制度終了(解散)時の取扱が厳格化されています。
積立不足のままでは、制度を終了することができません。また労使の合意が
必要で、適年のように事業主の都合で解約することはできません。
ということ等が、確定給付企業年金法で定められている制度です。
今、いろいろな金融機関が盛んに勧めている、簡便型の確定給付給付企業年金
でも、上記のような制約は受けます。
簡便型の確定給付企業年金は、制度設計が金融機関にとって、“簡便”なのです。
確定給付企業年金=DBでは、計算利率を適年の場合より、小さい数字にしている
ことが一般的です。
計算利率の数字が小さいということは、それだけ事業主の負担は増えるということ
です。
簡便型のDBでは、「適年の積立不足は持ちこまない」仕組みです。
一見、いいようですが、でも、適年の積立不足分は、その企業の退職給付制度で
の積立不足ですから、退職金規程を減額しない限り(労働条件の不利益変更に
なります。)、企業・事業主が何らかの方法で、手当することになります。
金融機関は、この不足分を保険商品で、と提案しています。
そう、養老保険のハーフタックスです。
もう、これだと、大変重たい制度、事業主の『掛金+保健料負担』が重くなります。
確定給付企業年金では、積立金=年金資産の運用責任は事業主にあると
しています。
「この点についての説明が、金融機関から事業主に徹底していないのでは
ないか」、と、先週2日に行ったセミナーで、参加された方からご指摘があり
ました。
金融機関は、その点は抜かりなく行っていると思うのですが。。。?
それで、金融機関が企業に提出した確定給付企業年金の提案書、説明書で、
手元にあるものを見直してみました。
気になったのは、運用責任の説明より、計算利率については2%とか、3%とか
記載されているのですが、リスクの数字については説明がないことです。
「『計算利率は将来の積立不足が発生しにくい』数字で2%としています。」
等といった説明文になっています。
確定給付企業年金の積立金は、一定割合を株式市場で運用します。
ですから、計算利率が2%なら、予定運用利回りも2%として、だったら、リスク
=ぶれ幅=標準偏差は、どのくらいを考えているのか、説明がないのです。
これでいいのかどうか、考えてしまいました。
リスク=標準偏差は重要だと思います。
積立金の運用において、どのくらいのリスクがあるのか、どのくらいぶれるのか
は、運用責任を負っている事業主にとって、重要な判断材料だと考えます。
そういった説明は、必要だと思うのですが、どうでしょうか?
適格退職年金の移行プランのうち、DB=確定給付企業年金で、パッケージ
プランというのが売り出されています。
これは、「安定」、「簡単」、「低コスト」が売りのようです。
「安定」は、運用利率を低く設定していることにより、積立不足がおきにくいと
ということです。
「簡単」は、掛金建ての制度なので、制度設計が簡単ということです。
「低コスト」は、制度設計が簡単なので、当然といえば当然ですが、管理コスト
等が安く済むわけです。
先に結論を言えば、私は、このパッケージプランは、使わない方がいいと
思います。
これは、金融機関にとって都合の良いプランです。
制度設計しないで済む、手間の掛からない制度ですから。
適年の移行というのは、お金を預け替えるということとは違います。
退職金制度の仕組みを、移行後はどうするのかということを検証して、つまり
制度設計して移行することが重要なのです。
退職金制度としての労働条件を作ることなのですから。
このパッケージプランでは、適年から移行するときに、適年の年金資産しか
移換できません。ですから、あわせて保険商品の提案が行われています。
退職金規程で不足する分は、保険商品で手当してくださいと言っています。
結局、金融機関としては、簡単に適年の移行を済ませ、その上保険商品の契約
も頂戴するということです。
ですから、パッケージプランは、金融機関の側にメリットがあるということです。
2月11日のブログ、「『確定給付企業年金は解約できるか?』について」の
根拠法を、あろうことか確定拠出年金法としていました。
大変申し訳ありません。当然、確定給付企業年金法です。
お詫びし、訂正いたします。
このブログは閲覧数も多かったのに、大切なところを間違えていました。
でも、お叱りのコメントはないので、私の間違いを読み替えていただいた
ようです。ありがとうございます。
本日の朝刊で、「企業年金の積立不足の穴埋めの掛金上げを1~2年猶予
するという厚生労働省の方針」について、報道されていました。
ここでいう、企業年金は厚生年金基金と確定給付企業年金です。積立金と
は、責任準備金と最低積立基準額をいいます。これらが、厚生労働省令で
定める基準に達していない時は、掛金を再計算し、求められた金額を追加
拠出しなければなりません。
この追加拠出が数年猶予されるのですが、しかし不足額を将来償却すること
に変わりはありません。
昨日のブログでお伝えした、「企業年金の運用で発生する運用損益の企業
決算への影響」とは、退職給付債務と積立金(年金資産)との関係です。
退職給付債務と年金資産との差額は退職給付引当金となり、固定負債に
計上されます。企業年金の運用が落ち込むと、引当金の負担が増大します。
厚生労働省の定めと退職給付会計の内容は、違うということです。
「確定給付企業年金 解約できるか」これは、昨日の私のブログへの
検索ワードです。
退職給付制度に関する問題点は、
①退職金規程による支給金額(最終基準給与×支給倍率での計算)が負担に
なっている。
②適格退職年金の移行が進んでいない。
③退職給付会計を考慮しないで養老保険ハーフタックスプランを採用。
④確定給付企業年金が、運用の悪化により、制度発足当時は予想しなかった
追加負担が発生して、企業の負担が大変重くなっている。
⑤厚生年金基金総合型の維持が困難
があると思います。退職給付制度がある企業では、①~⑤のどれかに該当する
ところが多いのではないでしょうか?
さて、話を戻しますと、「確定給付企業年金は解約できるか」は、「終了できるの
か」ということだと思います。
答えは、「イエス」です。
但し、条件があります。
規約型では、従業員の過半数で組織する労働組合の同意、それがないときは
従業員の過半数を代表する者の同意を得た時、厚生労働大臣の承認を受けて
規約型企業年金を終了できます。・・・→確定給付企業年金法第84条第1項
基金型の場合は、同法の第85条第1項による解散となります。
その上で、同法の第87条に終了時の掛金の一括拠出を義務付けています。
つまり、積立不足の状態で確定給付企業年金を終わらせることはできません。
確定給付企業年金を導入した企業では、積立不足が深刻になっており、その
穴埋めのため、企業の利益が圧迫されるという事態になっています。
これから確定給付企業年金を採用しようとする企業は、その点を踏まえて十分
に検討することです。
確定給付企業年金とは、新卒で入社した従業員に対して60年くらいの責任を
負う制度です。60年とは、その従業員が定年を迎えた後企業年金から年金を
受取る期間ということです。それだけ長い間責任を持つ制度だということです。
企業年金が、途中で息切れしてしまうと、昇給や賞与への影響も出てきます。
今は、確定拠出で投資教育をしたり従業員に運用させたくないから、確定給付
を選ぶとお考えでしたら、もう一度60年間責任をもてるのかという観点からも
検討し直して下さい。
前述①~⑤でお悩みの場合は、是非ご相談ください。
退職給付制度に関する問題点は、企業ごとに違います。実際に内容をみないと
その対処方法は分かりません。
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