横須賀うわまち病院心臓血管外科

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高齢者心臓血管外科手術の適応

2018-05-23 20:29:28 | 心臓病の治療
 日本はこれからますます超高齢化社会が進むと言われていますが、それに従ってご高齢の患者様も増加していくことが予想されます。
 大動脈弁狭窄症も、年齢とともに大動脈弁が動脈硬化と比例して硬くなって可動制限が起き、その頻度が増加する疾患ですが、前任地での大動脈弁狭窄症に対する大動脈弁置換術の平均年齢は2005年は65歳ほどだったのに対し、2015年には75歳と10年間で10歳も増加していました。加齢とともに増加する心臓血管外科関連の疾患として、他に、僧帽弁閉鎖不全症、虚血性心疾患、大動脈疾患、下肢動脈疾患などさまざまあります。

 高齢者はどこまで手術するか。悩ましいところではありますが、心臓血管外科の治療には大きく二つの目的があります。
① 具合の悪いところを直して機能を改善し症状をよくする手術
② 今後起こるだろう重大な疾病を予防する
この二つです。

①は弁膜症や虚血性心疾患など生死に関わるような重篤な自覚症状を、手術によって改善することが出来ます。苦痛を取り除くための治療といえます。
②一方、それに対して②は大動脈瘤など現在は無症状でも、破裂したら恐ろしいことが起こるかもしれないので、予防的に行う治療です。

苦痛を取り除く、もしくは和らげるのが医療の役割の一つですから、この意味で苦しんでいる患者さんは年齢と関係なく苦痛を緩和してあげる適応があります。その意味で心臓血管外科手術で苦痛をとってあげられるならこれほど医者冥利につきるものはありません。
一方、予防手術はその意味を十分理解していただく必要があるため、認知症や寝たきりに近い患者様の場合は適応とならないことが多いです。
 そのほかにご本人の希望なども重視すべき点であると思います。
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