横須賀うわまち病院心臓血管外科

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冠動脈疾患と腹部大動脈瘤

2018-05-30 13:36:02 | 大動脈疾患
 冠動脈疾患と腹部大動脈瘤は同時に合併していることが多い疾患です。どちらも原因が共通しており、喫煙、高血圧、高脂血症など、動脈硬化の促進因子が関与しているためと言われています。
 腹部大動脈瘤の術前検査で冠動脈の評価を行うと1~3割の患者様に治療が必要な冠動脈病変が見つかると言われています。心臓血管外科に腹部大動脈瘤で紹介されてきたのに、この虚血性心疾患が診断され、先に心臓の治療をするということは日常非常に多く経験されます。腹部大動脈瘤の術中に出血が多いときなどは特に、心筋虚血なども発生しやすいため、早期に治療しておく必要があります。
 最近は冠動脈の評価に必ずしもカテーテル検査による冠動脈造影は必要なく、冠動脈CTで十分評価できる患者様が増加しています。しかしながら、冠動脈の石灰化が高度な人の場合は、CTでは評価困難なため、やはり冠動脈造影が必要になる人もいます。
 どちらにしろ、病気が複数見つかって落ち込むよりも、何か起きる前に早期に見つかってよかったって思ってもらえたらよいのではないかと思います。

 腹部大動脈瘤の術後、長期的には、実は長生きしていない患者様が多いと言われています。5年後に生存している人は5~7割ほど。せっかく動脈瘤を治したのにどうして長生きできないか、これにはいくつか理由が言われておりますが、一つは冠動脈疾患を合併して心不全や心筋梗塞を起こすことが最大の死因と言われています。また、他にはがんや肺炎なども続きます。やはり高齢者が治療対象になっていることも関係しております。
 治療後も動脈硬化に対する十分な対策を継続的に必要になります。
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