横須賀うわまち病院心臓血管外科

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人工呼吸管理中の呼吸状態の指標

2018-12-18 19:06:37 | 心臓病の治療
 人工呼吸管理中、何をもって良くなったといえるのか、どの指標で改善したと判断するのか。
 最近の人工呼吸管理はより高度化しているためたくさんのパラメーターがあります。

①吸入酸素濃度 FiO2 これが通常の空気20%に近いほど、人工呼吸管理不要の状態に近いので良い、という指標になります。具合が悪いほどこのFiO2は高くなります。人工呼吸器からの離脱は通常FiO2 40%くらいで行っています。

②動脈血中の酸素分圧(PaO2) これが良いほどいい。通常の大気で星城人は90-100Torrあります。


③ PF比 PaO2/FiO2 この数字が高いほど、肺での酸素化能が良い。200以上で人工呼吸器離脱を考えます。すなわち、80Torr/FiO2 0.4とかいうと200ということになります。

③ PEEP = Positive Endo Expiratory Pressure 呼気終末の陽圧の程度で、通常の待機中の呼吸ではゼロですが、人工呼吸管理中では、息を吐いたときに陽圧をかけることで肺胞を広げて酸素可能を改善させる機能を利用しています。この数値を下げても酸素化が保たれていれば、人工呼吸器からの離脱が近くなります。

④ 心臓手術においては、体重。術後は体重が数キログラム増加することも珍しくありませんが、その増えた分だけ肺も全身も浮腫んでいるということになります。肺が浮腫むと、水に浸したスポンジのような肺になり、酸素可能が悪化します。利尿などによって、体内に貯留した水分を排泄し、肺の浮腫をとることが酸素可能を改善させることになります。

⑤ 胸部レントゲン写真における肺の陰影、肺動脈の太さ、肺静脈の鬱血所見など。無気肺があれば、酸素化できない肺の部分がある証拠ですし、一方、浮腫が改善すれば、レントゲン所見も改善します。連日の胸部レントゲン写真を比較することで、改善方向にあるのかどうか確認できます。

⑦CT 胸部レントゲンでは判別できない肺の細かい部分までの評価が可能です。胸水貯留や心嚢液の有無なども正確に評価できます。頻回には検査できませんが、重要な方針を決める際には有用です。

⑧心臓超音波検査  現在の心機能がどうか、体内の血液量が十分かどうか判定できるので、水分調整に有効です。特に下大静脈の張りなどで、鬱血の状態も評価できます。

 このような指標を総合的に鑑みて、またスタッフ間で情報を共有したり議論したりして呼吸管理をしています。
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