はぶて虫のささやき

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(旧:はぶて日記)

映画評1193 ~ バスカヴィル家の犬 シャーロック劇場版(CS)

2024-08-09 | 映画評
今回は「バスカヴィル家の犬 シャーロック劇場版(CS)」です。

アーサー・コナン・ドイルの名作探偵小説「シャーロック・ホームズ」シリーズを原案に、ディーン・フジオカ演じる犯罪捜査コンサルタント・誉獅子雄と岩田剛典演じる精神科医・若宮潤一が数々の難事件に挑む姿を描いたテレビドラマ「シャーロック」の劇場版。原作シリーズの中でも人気の高い「バスカヴィル家の犬」をモチーフに、不気味な島で暮らす華麗な一族をめぐる事件を描く。

主演:ディーン・フジオカ
共演:岩田剛典、新木優子、広末涼子、村上虹郎、渋川清彦、西村まさ彦、山田真歩、佐々木蔵之介、小泉孝太郎、稲森いずみ、椎名桔平など

<ストーリー>
瀬戸内海の離島で、日本有数の資産家が莫大な遺産を遺して変死した。資産家は死の直前に、娘の誘拐未遂事件の犯人捜索を若宮に依頼していた。真相を探るべく島へやって来た獅子雄と若宮の前に現れたのは、異様なたたずまいの洋館と、そこに住まう華麗な一族の面々と怪しい関係者たち。島に古くから伝わる不気味な魔犬の呪いが囁かれる中、島内で新たな事件が連鎖的に発生し・・・


2022年の作品である。

コナン・ドイル原作のシャーロック・ホームズ小説をベースにした物語ということだが、内容としては、ドイルというよりはむしろ横溝正史だし、ホームズというよりはむしろ金田一耕助だ。

見ている途中は、「なかなかいいじゃん」と思っていた。

主人公誉獅子男を演じたディーン・フジオカは、見た目もそうだけど、声もいいし芝居もうまいし、とにかくカッコいい。

同じように「いい男」として扱われていると思われるEXILEの岩田剛典とは、見た目も演技もその差は歴然だ。

そのディーン・フジオカが次々と推理をしていく展開は、なかなか見応えがあると思っていたのだが・・・

見終わった後にいろいろと思い起こしてみると、あちこちにおかしなところが出てきた。

まず、舞台は瀬戸内海の「離島」である。

最初の描写にも、島にポツンと大きな屋敷があるようなシーンがあり、ほとんど人が住んでいないかのようだった。

ところが、この島にはきちんとした港があるどころか、大きなショッピングモールやちゃんとした警察署(駐在所ではない)まである。

いったい、どんな離島なんだ?

監督が当初の設定を忘れていたとしか思えないような、ムチャクチャな舞台になっている。

しかも、大きいとは言え、いちおう「離島」である村で女の赤ちゃんが誘拐されるという事件が起こる。

子供を誘拐された夫婦がポスターを作り、街行く人たちに配ったりして必死に探すのだけど・・・島にはいったい何万人が住んでるんだ?

だいたい、あんな狭い地域である瀬戸内海で離島?

ついでに言うと、舞台は瀬戸内海の島であるにもかかわらず、序盤で資産家・蓮壁千鶴男の息子・千里が凍死する。

真冬であれば考えられないことでもないが、少なくともそのシーンでは完全防寒の服装ではなかった。

どうやったら凍死するの?

さてその後、この誘拐された女の子が、実はこの物語の肝である蓮壁家の娘の誘拐事件につながる。

ネタバレにはなるが、この蓮壁家の娘・紅こそが、誘拐された女の子であり、今回の殺人事件の犯人でもある。

そして、紅を誘拐したのは蓮壁千鶴男ではなく、その妻とその家の執事だ。

なぜ誘拐したのかと言うと、まだ幼い資産家の娘を不注意から死なせてしまったことで半狂乱となった妻が、病院に連れていく途中で、たまたまショッピングモールにいた赤ちゃんを誘拐してしまった、というわけなのだが・・・

当然妻と執事だけの秘密であるはずが、途中で資産家(忙しいので家にいないことが多い)もその事実に気が付く。

そうなると、冒頭でこの蓮壁千鶴男が主人公である探偵・誉獅子男に誘拐事件の真相を探るよう依頼するシーンがあるのだけど、これがとても奇妙であることがわかる。

依頼の内容は「娘を誘拐されたが、身代金はとられなかったのに娘は戻ってきた。これは何かある。それを調べてほしい」というものだった。

ところが、蓮壁千鶴男は紅が自分の実の娘ではないことに気が付いていた。

だとしたら、誘拐したけど身代金目当てでもなく、紅も無事に戻ってきたとすると、犯人は紅の本当の両親ではないか、と思っても不思議ではない。

なぜ本当の両親である冨楽夫妻(広末涼子と渋川清彦)が気が付いたのかはわからないにしても、この夫婦が、自分たちでポスターを作成して行方を捜していたことも、当然知っていただろうから、この夫婦が怪しいのでは?と思うのが普通なのではなかろうか。

探偵に依頼することによって、紅の実の両親がわかってしまう可能性もあるわけだし、それは同時に自分の妻を窮地に追い込むことにもなる。

もしかして、妻に対するイヤガラセ(罰を与えるという意味で)なのか?

でも、そんなことをしたら、自分の名前だって傷がつくはず。

つまり、わざわざ探偵に依頼する理由がまったく理解できないわけだ。

ついでに言うと、冨楽夫妻の妻・朗子が「紅は私たちの子だ」とわかったのは、目がそっくりだったからだと言う。

生まれたばかりの女の子と、二十歳を過ぎた女性の目が同じとは、とても思えないのだが・・・

さらに言うと、蓮壁千鶴男と千里が殺されたのは、いずれも狂犬病によるもの、ということになっている。

すでに日本では絶滅しているはずの狂犬病が発症した理由は・・・ネットの闇サイトでウイルスが自由に販売されているからだそうだ。

何だよ、このムチャクチャな理由づけは。

しかも、主人公は実際にこの闇サイトで狂犬病のウイルスを購入している。

こんなサイト、早く告発して潰さないといけないだろ。

このあたりの描写が、とにかくいいかげんだ。

このいいかげんさを箇条書きにすると、次のようになる。

・舞台は島内に大きなショッピングモールがある「小さな離島」
・しかも、瀬戸内海にある離島なのに、一晩いただけで凍死してしまうような厳寒地域
・各種病原菌が自由に販売できる闇サイトがあるので、狂犬病ウイルスも簡単に購入できる。
・本当は自分の実の娘ではないことを知っている上に、その事実が公になると妻だけでなく自分たちも窮地に追い込まれてしまうことがわかっていながら、誘拐事件の真相を探偵に依頼する資産家。

細かいところでは、蓮壁千里が凍死したのは廃坑の中であり、そこには蓮壁千鶴男の金庫があったわけだけど、千里が亡くなった後も、その金庫は放置されたままであった。
蓮壁家あるいは警察は、どうしてその時に持ち出さなかったのだろうか。

いずれにしても、こういう脚本を考えたヤツって、相当頭が悪いとしか思えない。

そしてラスト。

すべての真相が判明した後、警察に通報しようとする誉獅子男だが、冨楽夫妻に「(紅には)自首させるからちょっと待ってくれ」と頼まれて、一旦その場を去るのだが、その直後に大地震が発生し、屋敷は崩壊して犯人たち(紅と冨楽夫妻)はその瓦礫の下敷きになってしまう。

どういうオチ?

途中で、思わせぶり的に地震研究家の男(小泉孝太郎)が出てくるのだけど、このシーンでは、プロポーズしようとしていた紅を助けようとするどころか、専門家のくせに何の足しにもなっておらず、ただオロオロしているだけで、何に出てきたの?という登場人物だった。

温暖気候であり地震も少ない瀬戸内海で、凍死とか大地震とか、もっと場所の設定を考えろよ!といいたい。

とにかく推理に関係ないところでの設定がムチャクチャだったので、見ている途中よりも、見終わった後の???感は相当なものでした。

肝心の推理の方はと言えば、誉獅子男にとってはすべてが簡単にわかってしまう流れになっていて、あまり唸るような部分はありませんでした。

ネットでは、絶賛する声も結構あったのだけど、その人たちは、このことを忘れてしまっている。

これって、ショッピングモールやキャバクラまである瀬戸内海の離島で起こった事件なんだぞ。

しかも、「黒犬の呪い」伝説みたいなものが、令和の世の中で信じる人がいるのか、という点も疑問ではあるけれど、だから「離島」という設定にしたのかも知れない。

だったら、最初から最後まで小さな島での不思議な出来事、という展開にちゃんとしろよ。

赤ん坊の誘拐事件なんて、本土に買い物に行った時の出来事、ということにすれば、それほど違和感はなかっただろうに。

ということで、評価は迷いましたが、ここであらかた書いてしまったので、年末で改めて見直すこともないと思い、「C」に留めておきます。


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