人生も折り返し点を過ぎると、冒険はしんどい。
ホンのささやかな冒険でも気が重い。
結局マンネリズムが一番ラクだ。
水が高きから低きに流れるが如く、昨日と同じ、一昨日と同じ、習慣化したことを習慣通りにやるのが一番ラクだ。
食べ物でもそうだ。
急に変わったものを食べるのはしんどい。
そば、焼鳥、おでん、ラーメン、天丼などを食べる分には全然しんどくない。
昨日ラーメン今日ギョーザ、明日はカレーかカツ丼か。
夢は夜ひらく…などと口ずさんで、ええと、この唄歌った人、ホラ、え~と何て名前だっけ…
人生も半ばを過ぎると記憶力が減退し、固有名詞、特に人名が出てこなくなる。
え~と、ホラ、確か前川きよしと一緒になって、子供が芸能人のえ~と、ホラ…。
やっぱり出てこないので話を先にすすめます。
冒険をしなくなった日常が、少しずつ老化の準備を進めている訳で、その行く手には何があるのか。
そうです、ボケ、徘徊、たれ流し…。
冒険をしなくなった日常はこわい。
いずれ徘徊関係者となり、たれ流しの人生になる公算が大きい。
では、とりあえず何をすればいいのか。
僕はオムライスを食べなさい、と言いたい。
とりあえず食べ物あたりから、冒険の世界に入っていきましょう。
おじさんが焼鳥を食べている…。
これはごく当たり前の光景です。
おじさんがカツ丼を食べている、カレーを食べている、うな丼を食べている、おでんを食べている、いずれも当たり前だ。
ところが…
おじさんがオムライスを食べている、スプーンをあやつってオムライスをほじっている…。
どうです、これはあきらかに非日常の光景であります。
非日常の世界に自分を置いて、冒険をしようではないか。
オムライスを食べて、徘徊関係老人になるのを避けようではありませんか。
そういう訳で、わたくしは「オムライス歴訪の旅10日間ぐらいコース」に出発しました。
10日間というのは特に意味があるわけではなく、この間に3店ぐらい訪問してみよう、というぐらいの意味です。
第一日目は松江の名だたる名店、西洋軒です。
わたくしは、この西洋軒に入るだけでも大冒険なのに、さらにそこでオムライスを食べるという、過酷、緊張的世界に我が身を置き、恐怖と不安な心理状況に追い込んでいくのでした。
即ち、冒険の難易度を高めているのです。
店に入ると、とてもお洒落な雰囲気が漂っている。
一階席と二階席とがあり、どちらでも良さそうだったので、とりあえず一階席の片すみに席を取った。
野球場でいえば一塁側A指定席、ライトを守る選手の真横、前列から18番目みたいな席でオムライスを注文。
800円
昭和7年創業の老舗洋食店。
じっくり煮込まれたタンが絶品のタンシチューのエビフライ、カニクリームコロッケとのセットメニュー(各1300円)が有名だそうですが、デミソースのかかったオムライスも人気があるようだ。
うーん、とても美味しそうだ。
木の葉型のオムライス、どっちが頭でどっちが足か分かりませんが、左の隅から攻めましょう。
綺麗に玉子に巻かれた中は、熱々のケチャップライス。
アフアフとなる熱さ加減がちょうどいい。
なるほどこれが本物のオムライスであったか。
一口すくって法悦、二口すくって歓悦、三口すくって愉悦。
オムライスなんて子供の食い物だ、ぐらいに思っていると意外に手ごわい。
中高年のおじさんの味覚に充分耐えうるものだ。
不思議なもので、スプーンでほじくりながら食べているとボケ、徘徊、たれ流しの関係者にならないのでは?と微かな喜びを覚える。
これもレベルの高い冒険にチャレンジしているからか?
「ごちそうさまでした」と厳粛に御礼をいい、卓上にあった楊枝でシーハーシーハーしながら西洋軒を出たのだが、二軒目の店でオムライスの概念がイッキに打ち砕かれるのであった。
つづく…
ホンのささやかな冒険でも気が重い。
結局マンネリズムが一番ラクだ。
水が高きから低きに流れるが如く、昨日と同じ、一昨日と同じ、習慣化したことを習慣通りにやるのが一番ラクだ。
食べ物でもそうだ。
急に変わったものを食べるのはしんどい。
そば、焼鳥、おでん、ラーメン、天丼などを食べる分には全然しんどくない。
昨日ラーメン今日ギョーザ、明日はカレーかカツ丼か。
夢は夜ひらく…などと口ずさんで、ええと、この唄歌った人、ホラ、え~と何て名前だっけ…
人生も半ばを過ぎると記憶力が減退し、固有名詞、特に人名が出てこなくなる。
え~と、ホラ、確か前川きよしと一緒になって、子供が芸能人のえ~と、ホラ…。
やっぱり出てこないので話を先にすすめます。
冒険をしなくなった日常が、少しずつ老化の準備を進めている訳で、その行く手には何があるのか。
そうです、ボケ、徘徊、たれ流し…。
冒険をしなくなった日常はこわい。
いずれ徘徊関係者となり、たれ流しの人生になる公算が大きい。
では、とりあえず何をすればいいのか。
僕はオムライスを食べなさい、と言いたい。
とりあえず食べ物あたりから、冒険の世界に入っていきましょう。
おじさんが焼鳥を食べている…。
これはごく当たり前の光景です。
おじさんがカツ丼を食べている、カレーを食べている、うな丼を食べている、おでんを食べている、いずれも当たり前だ。
ところが…
おじさんがオムライスを食べている、スプーンをあやつってオムライスをほじっている…。
どうです、これはあきらかに非日常の光景であります。
非日常の世界に自分を置いて、冒険をしようではないか。
オムライスを食べて、徘徊関係老人になるのを避けようではありませんか。
そういう訳で、わたくしは「オムライス歴訪の旅10日間ぐらいコース」に出発しました。
10日間というのは特に意味があるわけではなく、この間に3店ぐらい訪問してみよう、というぐらいの意味です。
第一日目は松江の名だたる名店、西洋軒です。
わたくしは、この西洋軒に入るだけでも大冒険なのに、さらにそこでオムライスを食べるという、過酷、緊張的世界に我が身を置き、恐怖と不安な心理状況に追い込んでいくのでした。
即ち、冒険の難易度を高めているのです。
店に入ると、とてもお洒落な雰囲気が漂っている。
一階席と二階席とがあり、どちらでも良さそうだったので、とりあえず一階席の片すみに席を取った。
野球場でいえば一塁側A指定席、ライトを守る選手の真横、前列から18番目みたいな席でオムライスを注文。
800円
昭和7年創業の老舗洋食店。
じっくり煮込まれたタンが絶品のタンシチューのエビフライ、カニクリームコロッケとのセットメニュー(各1300円)が有名だそうですが、デミソースのかかったオムライスも人気があるようだ。
うーん、とても美味しそうだ。
木の葉型のオムライス、どっちが頭でどっちが足か分かりませんが、左の隅から攻めましょう。
綺麗に玉子に巻かれた中は、熱々のケチャップライス。
アフアフとなる熱さ加減がちょうどいい。
なるほどこれが本物のオムライスであったか。
一口すくって法悦、二口すくって歓悦、三口すくって愉悦。
オムライスなんて子供の食い物だ、ぐらいに思っていると意外に手ごわい。
中高年のおじさんの味覚に充分耐えうるものだ。
不思議なもので、スプーンでほじくりながら食べているとボケ、徘徊、たれ流しの関係者にならないのでは?と微かな喜びを覚える。
これもレベルの高い冒険にチャレンジしているからか?
「ごちそうさまでした」と厳粛に御礼をいい、卓上にあった楊枝でシーハーシーハーしながら西洋軒を出たのだが、二軒目の店でオムライスの概念がイッキに打ち砕かれるのであった。
つづく…