年末の日経新聞記事で一番印象に残ったのが、"失敗から積極的に学ぶこと"を提唱する「失敗学」の権威、畑中洋太郎氏の言葉だ(2012/12/29付朝刊1面)。
震災復興、デフレ脱却、高齢化への対処等々、山積する難題を克服する為に、2013年の日本はどうすべきか?畑中氏は現代日本が抱える問題点を明快に指摘し、改善を促している。
■原子力発電所事故から、どんな教訓を引き出すべきか?
事故の原因は、「長時間の電源喪失は起こらない」との前提で運営していたこと
に尽きる。
「あり得ることは起こる」「思いつきもしない現象も起こる」と考えるべきだ
2000年に米国の原発の専門家にこう言われた。「日本の技術屋は言わないといけないことを言わない。いつか大事故に見舞われるぞ」と
■原発政策は衆院選の主要争点だったが、具体的な議論には繋がらなかった。これについてどう思うか?
国民の反応は極端で、視野が狭くなっている
反対派は事故が起きた途端に「脱原発」「放射能ゼロ」に傾斜し、電力需給の安定に気を配れなくなっている。
原発維持派の側も多くの人が「安全基準さえあれば再稼働できる」と過信している。
日本人は「黙る」「考えない」「思い込む」のどれかに陥っている。これらを正反対の姿勢に改めなければ、適切な技術開発はできない
原発に関してだけでない。
財政難の根っこにあるのも、「あり得ることは起こる」と考えない姿勢だ
国際収支が赤字になり、これ以上借金すれば、いずれ利払いができなくなる。最悪のシナリオは米国や中国に金を借りる事態が起こること、日本国債を米中に大量購入されることではないだろうか?
消費税率引き上げへの反対意見もわかるが、ほかの国に運命を左右される未来図に目をつぶるのも怖いことだ
■高速道路の天井崩落事故も起きたが、これについてもどう考えるか?
原発もそうだが、日本が世界一の水準に近いと思える技術はいくつかある。だが、ほかの国に大した技術がないと思うのは傲慢だ
公共投資を見ても、中国やインドは鉄道などの必要なインフラ技術を猛烈な勢いで磨き上げている。単に金をばらまくのではなく、目標を明確に絞り込んで取り組んでいる
インドの地下鉄は100秒おきに列車を運行させる目標を立てているという
今の日本でも最短120秒くらいかかる。そう遠くない時期に日本は追い越される時期に来ている
中国やインドの技術者は、自前のノウハウを押しつけようとする日本の姿勢を嫌がっている
彼らが望むのはノウホワイ(Know-Why)。どうやるかでなく、なぜやるか。それがわかれば、自国の風土や市場に合った技術を磨き上げられるというわけだ。
■大手電機メーカーが苦戦するなど国際的な競争力低下が深刻なのはなぜか?
中国で液晶や半導体メーカーの担当者に話を聞くと、市場の声に即した製品なら技術は周回遅れでも構わないと言う。
日本は「いい物を作れば売れる」と自社製品に自信を見せるが、そういう発想に凝り固まっているから、逆に市場の求めに応じきれていない面がある
例えば中国製品が市場をほぼ独占した太陽光パネルはどうか。品質などに問題はあるだろうが、安さを求める消費者に素直に応えた結果にほかならない。
日本の企業は欧米の真似をして高度成長を果たしてきたが、お手本がなくなり迷走している
これからの日本には、市場や社会の要求に謙虚に耳をすます姿勢が大切になってくる
【感想】
畑村氏の指摘はすべて耳の痛い話だが、日本が長い低迷から抜け出す為に、震災からの復興を1日も早く果たす為に、そして、未来への明るい展望を見出す為に、どれも看過できないものだ。かつて欧米に追いつき追い越せと遮二無二頑張って来た日本が、いつの間にか追われる立場になり、今や新興国に追い落とされようとしている。一国の栄枯盛衰のサイクルはなんと短いことだろう。
村上憲郎氏もその著書「一生食べられる働き方」で、企業が世界市場での熾烈な競争に勝ち抜く為に、また社員が一生食いっぱぐれない為に、いつまでも過去の成功体験に囚われることなく、常に変革することの重要性を訴えている。
先日、米ラスベガスで行われた家電見本市?で、日本のメーカー各社は最新の4Kテレビで攻勢をかけたけれど、果たして消費者ニーズに合致するのだろうか?今や市場占有率で韓国勢に後塵を拝す劣勢をひっくり返すことはできるのだろうか?ふと、不安になった。トヨタが販売台数世界首位に返り咲いたと言う自動車業界にしても、その強さに驕ることなく、常に市場動向を見極めることが大事なんだろうな。
過去の成功体験や、これまでの価値観を捨てて、新たな一歩を踏み出すのは勇気の要ることだけれど、日本がそうしなければどうにも立ちゆかないところまで来ているのも事実だろう。それは痛みを伴う改革なのかもしれない。しかも必ず成功するとも限らない。それでも、私達は前に進むしかないのだろう。何にしても、社会の変化に対応して生きて行くことは大変だね。
震災復興、デフレ脱却、高齢化への対処等々、山積する難題を克服する為に、2013年の日本はどうすべきか?畑中氏は現代日本が抱える問題点を明快に指摘し、改善を促している。
■原子力発電所事故から、どんな教訓を引き出すべきか?
事故の原因は、「長時間の電源喪失は起こらない」との前提で運営していたこと

「あり得ることは起こる」「思いつきもしない現象も起こる」と考えるべきだ

2000年に米国の原発の専門家にこう言われた。「日本の技術屋は言わないといけないことを言わない。いつか大事故に見舞われるぞ」と

■原発政策は衆院選の主要争点だったが、具体的な議論には繋がらなかった。これについてどう思うか?
国民の反応は極端で、視野が狭くなっている

反対派は事故が起きた途端に「脱原発」「放射能ゼロ」に傾斜し、電力需給の安定に気を配れなくなっている。
原発維持派の側も多くの人が「安全基準さえあれば再稼働できる」と過信している。
日本人は「黙る」「考えない」「思い込む」のどれかに陥っている。これらを正反対の姿勢に改めなければ、適切な技術開発はできない

原発に関してだけでない。
財政難の根っこにあるのも、「あり得ることは起こる」と考えない姿勢だ

国際収支が赤字になり、これ以上借金すれば、いずれ利払いができなくなる。最悪のシナリオは米国や中国に金を借りる事態が起こること、日本国債を米中に大量購入されることではないだろうか?

消費税率引き上げへの反対意見もわかるが、ほかの国に運命を左右される未来図に目をつぶるのも怖いことだ

■高速道路の天井崩落事故も起きたが、これについてもどう考えるか?
原発もそうだが、日本が世界一の水準に近いと思える技術はいくつかある。だが、ほかの国に大した技術がないと思うのは傲慢だ

公共投資を見ても、中国やインドは鉄道などの必要なインフラ技術を猛烈な勢いで磨き上げている。単に金をばらまくのではなく、目標を明確に絞り込んで取り組んでいる

インドの地下鉄は100秒おきに列車を運行させる目標を立てているという


中国やインドの技術者は、自前のノウハウを押しつけようとする日本の姿勢を嫌がっている

彼らが望むのはノウホワイ(Know-Why)。どうやるかでなく、なぜやるか。それがわかれば、自国の風土や市場に合った技術を磨き上げられるというわけだ。
■大手電機メーカーが苦戦するなど国際的な競争力低下が深刻なのはなぜか?
中国で液晶や半導体メーカーの担当者に話を聞くと、市場の声に即した製品なら技術は周回遅れでも構わないと言う。
日本は「いい物を作れば売れる」と自社製品に自信を見せるが、そういう発想に凝り固まっているから、逆に市場の求めに応じきれていない面がある

例えば中国製品が市場をほぼ独占した太陽光パネルはどうか。品質などに問題はあるだろうが、安さを求める消費者に素直に応えた結果にほかならない。
日本の企業は欧米の真似をして高度成長を果たしてきたが、お手本がなくなり迷走している

これからの日本には、市場や社会の要求に謙虚に耳をすます姿勢が大切になってくる

【感想】
畑村氏の指摘はすべて耳の痛い話だが、日本が長い低迷から抜け出す為に、震災からの復興を1日も早く果たす為に、そして、未来への明るい展望を見出す為に、どれも看過できないものだ。かつて欧米に追いつき追い越せと遮二無二頑張って来た日本が、いつの間にか追われる立場になり、今や新興国に追い落とされようとしている。一国の栄枯盛衰のサイクルはなんと短いことだろう。
村上憲郎氏もその著書「一生食べられる働き方」で、企業が世界市場での熾烈な競争に勝ち抜く為に、また社員が一生食いっぱぐれない為に、いつまでも過去の成功体験に囚われることなく、常に変革することの重要性を訴えている。
先日、米ラスベガスで行われた家電見本市?で、日本のメーカー各社は最新の4Kテレビで攻勢をかけたけれど、果たして消費者ニーズに合致するのだろうか?今や市場占有率で韓国勢に後塵を拝す劣勢をひっくり返すことはできるのだろうか?ふと、不安になった。トヨタが販売台数世界首位に返り咲いたと言う自動車業界にしても、その強さに驕ることなく、常に市場動向を見極めることが大事なんだろうな。
過去の成功体験や、これまでの価値観を捨てて、新たな一歩を踏み出すのは勇気の要ることだけれど、日本がそうしなければどうにも立ちゆかないところまで来ているのも事実だろう。それは痛みを伴う改革なのかもしれない。しかも必ず成功するとも限らない。それでも、私達は前に進むしかないのだろう。何にしても、社会の変化に対応して生きて行くことは大変だね。