はなこのアンテナ@無知の知

たびたび映画、ときどき美術館、たまに旅行の私的記録

(5)『酒井家のしあわせ』

2007年01月26日 | 映画(2007-08年公開)
結構深刻な内容の映画が続いたので、
すっかり肩が重くなってしまった。
これはバランスを取らなきゃと思って見たのが、
上映終了も近い『酒井家のしあわせ』

ピン芸人の友近(これは苗字なの?)が映画初出演で、
ユースケ・サンタマリアと夫婦を演じている。
舞台は山間の街、三重県の伊賀。
大阪女(友近)と東男(ユースケ)がなぜか暮らす静かな街。 
二人には中学生の息子とまだ年端の行かない娘がいる。
上の息子は前夫と死別した妻の連れ子で、
下の娘は現在の夫との間に生まれた子供。
しかし、夫は二人の子供を分け隔てなく愛しているようだ。

のどかな街で、ゆる~いテンポで物語は進む。
一見どこにでもあるような、ごくごく平凡な家庭。
でも、どの家庭にもそれなりの問題は起こる。

中学生の息子は反抗期真っ只中の生意気盛り。
まず朝寝坊だし、親の言うことは聞かないし、
何だかいつも不機嫌だし…
でもまあこんなもんでしょう。この時期の男の子は。
物語は、この息子の視点で展開する。
この時期の子供の目はやたらと親に対しては厳しいのよね。
そして親より友達の方が大事だったりする。
彼の目に、家庭の光景はどう映っているのか?
夫婦仲は上手く行っているのか?
親戚付き合いもそんなにキレイゴトでは済まない。
何だかどこかで見たような(笑)光景が続く。

友近は出産どころか、結婚もまだのはずなのに、
二児の母親役がハマッている。
日頃の芸達者ぶりを発揮して、
ちょっと疲れた中年の主婦を好演。
ユースケ・サンタマリアも、いつもながらの地なのか演技なのか
区別のつかない肩の力の抜けた演技でフツーの人を演じている。
この美男でもない美女でもない二人が夫婦を演じて、
実在感があって、現実感があって、
しみじみ夫婦の絆を感じさせる。

しかし、このテのホームドラマ映画を見ると、
映画とテレビの2時間ドラマの境目って何なのだろうと思う。
この作品を敢えて映画にした意図は何なのか?
テレビの枠では表現できなかったのか?
記録媒体としてのフィルムとビデオは、
やっぱり作り手にとっては大きな違いなのか?

それとも、作り手が組織(テレビ局や映画会社)に属せずに
作品を作る手段としての、こうした作品なのか?
(この作品は若い映像作家を発掘・顕彰するNHK・サンダンス
国際映像作家賞日本部門賞を2005年に受賞しているようだ。)

高視聴率獲得が至上命題であるテレビに、
この物語ではインパクトが弱いかもしれないなあ
(でもテレビドラマには、本作よりずっとつまらない、
どうしようもない駄作がゴロゴロ存在しているのも事実)。
かと言って、1800円を出して映画館で見るのも迷うところ。
私はレディースデイに1000円で見たけれど、
それでも見応えという点では、ちょっと物足りない感じ。
肩はほんの少し軽くなった、かな。
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