はなこのアンテナ@無知の知

たびたび映画、ときどき美術館、たまに旅行の私的記録

他者に寛容であれと願う~アフガン拉致事件に思うこと

2007年07月31日 | 気になったニュース
 アフガニスタンではキリスト教系韓国人ボランティアが反政府組織タリバーンに拉致され、26日朝にはその内のひとりの遺体が確認されました。アフガニスタンの為に良かれと思って参加したボランティア活動で牧師と目される男性が命を落としたことに深い悲しみを覚えます。

 タリバーンはかつて世界の貴重な文化遺産であるバーミヤン遺跡を破壊しましたね。自文化を尊ぶのは当然のことですが、同時に他者の文化を尊重することも大事なことであります。それが多文化共存共栄の唯ひとつの方法であろうから。しかし残念ながら彼らは視野狭窄に陥って、その行動には寛容さが微塵もない。

 タリバーンにより破壊されてしまったバーミヤン遺跡

 行き過ぎた原理主義思想(原理主義そのものが悪いわけではない。その思想をどう行動づけるかの問題。また原理主義は何もイスラム教の専売特許でもない。キリスト教にもその一派がある)は他者との摩擦を生むだけで、それが今や世界情勢の重大な不安定要素となっています。

 そうした不安定要素に対抗しうる人間の智慧について、考えずにはいられません。ジョージ・ソロス氏の国家や民族や宗教を超越したボーダーレスなフィランソロピー活動はそのひとつ。さらに、昨年の今頃講演会を聞く機会があったピーター・フランクル氏の処世術にも学ぶところが大きいと思っています。

 今朝も、男性の人質がさらに一人殺害されたとの報道がありました。
日経オンラインより

 当初、病院や保育所などでのボランティア活動の為アフガン入りしたと思われていた拉致被害者ですが、昨日、拉致前の活動の様子が記録されたビデオを見る限り宣教活動も行っていたようですね。韓国メディアでも、彼らの落ち度(韓国外交局のアフガンへの渡航自粛勧告を無視しての渡航。さらに警告を無視しての危険な陸路での移動)について言及していたり、教会の売名行為ともとれる、現地の事情を無視した無謀な海外宣教活動への批判記事が見られます。

拉致被害者が属するムンセル教会とは?(朝鮮日報)

アフガン拉致:タリバン「キリスト教信者は解放できない」(朝鮮日報)

アフガン拉致:過熱化する海外宣教に韓国国内で批判~米タイム紙電子版で報じる(朝鮮日報)

 偶然ですが、最近WOWOWで放送が始まった米TVドラマ『ザ・ユニット~米軍極秘部隊』でもアフガン拉致事件発生前に、「東南アジアのイスラム教区で宣教活動を行う米キリスト教会者が現地のイスラム過激派に拉致され、米軍特殊部隊に救出される」というエピソードが放映されました。このエピソードではせっかく救出したのに数人が避難場所から抜け出して現地に戻り、再び特殊部隊員が救出に奔走するという場面も。「なぜ危険を冒してまでここに留まるのだ」と諫める隊員に対し、宣教師は「私達がここを去ってもまた新たに誰かが来るだろう」と応じるのです。

 韓国政府は自国の外交交渉の限界を認め、アフガン政府に対し収監中のタリバーン兵士の釈放など、事件解決への協力を求めましたが、アフガン政府に拒否された模様。韓国政府及び拉致被害者とその家族にとっては気の毒な話ではありますが、アフガン政府の立場からすれば治安維持の観点から反政府分子をそう簡単には釈放することはできない。

 日本でもイラク人質事件では同情と批判と~世論を二分するほどの議論が沸き起こりましたが、韓国でも今後拉致被害者の「自己責任」が問われることになるのでしょうか?
コメント    この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« ミーハー気分で「脳内イメー... | トップ | (29)ケネス・ブラナー版『魔... »
最新の画像もっと見る

コメントを投稿

ブログ作成者から承認されるまでコメントは反映されません。