Dr. 鼻メガネの 「健康で行こう!」

ダンディー爺さんを目指して 日々を生き抜く
ダンジーブログ

進行度予測

2006-03-17 | 医療・病気・いのち
 内視鏡や透視で胃癌が見つかった場合、その病変の形態、大きさ、周囲の変化、さらには生検(組織をほんの少し取ってきて検査する)などから大まかな進行度を予測します。

 この予測はある程度当たるのですが、時に大きくずれることがあります。

 そのずれが悪い方へ大きくて印象に残っているのは、50代後半の男性です。体のだるさを自覚して近所の医院を訪れました。内視鏡検査を受けたところ、胃の真ん中あたりに早期ではないけれど比較的小さな癌が見つかりました。肝臓や肺にも転移は無いとのことで、外科に紹介され入院となりました。

 内視鏡の所見などからは、6段階に分けた進行度の中のせいぜい3段階程度かなという印象でした。手術に必要な検査を手早く進めようとしたのですが、ご本人が背中の痛みを訴えられました。また、入院時の検査で貧血も強かったので、もしやと思い骨シンチの検査をしたところ、脊椎のほぼすべてにわたって骨髄転移を起こしていました。播種性骨髄癌症の状態です。頻度は比較的稀ですが、これはすでに末期の状態です。

 入院時はご自分で歩いてこられたのですが、日に日にあっという間に状態が悪くなり、入院後5日目に亡くなりました。まさに目の前を駆け抜けていったという感じです。

 紹介もとの医師も全く予想外。恐らく内視鏡の所見からそこまで進行していると予想できる人は(可能性としては考えたとしても)皆無だと思います。

 医師が癌について説明しているときは、過去の全国規模で集められたデータからの推測です。多くの場合はほぼ予想内なのですが、良い方にしろ悪い方にしろ大きくずれていることがあります。早期といわれても安心せず、進行していると言われても希望を持って治療して欲しいと思います。

水腎症

2006-03-17 | 医療・病気・いのち

 左右2個ある腎臓でできた尿は、尿管という管を通って膀胱に流れ込み、そこにたまれば尿意を催し、排尿することになります。

 胃癌再発で最も多いのは腹膜再発ですが、お腹の中の後ろ側を覆っている後腹膜へも当然拡がっていきます。そして後腹膜の後ろを通っている尿管を巻き込むことも少なくありません。すると尿の流れが悪くなり、さらには堰き止められ、腎臓が腫れてしまいます。この状態を水腎症と言います。

 これが左右両方に起こると腎機能が落ちてきてしまいますので、尿管ステントという尿管の内腔を確保する管を、腎臓と膀胱の間に留置することがあります。その管が入らないときには、直接背中から腎臓に管(腎盂カテーテル)を入れることもあります。

 でもここまで来ると、癌もかなり末期に近く、実際にそのような体に負担をかける処置をした方が良いかどうか、迷うことも多いものです。

 何がその人にとってより快適かを中心にして、何をするか、あるいは何をしないかを決断していかなければならない時期です。