今日(2009年7月11日)は東京都議会議員選挙の選挙運動最終日なので、選挙カーがいれかわりたちかわりやってきて、言っていることがよく聞きとれないほどの騒音状態になっている。イスラム教徒が多い国では、アザーンを拡声器で流さず肉声でやろうという申し合わせがあるが、ほとんど守られていない。ちょうどラマダンあけの日のジャカルタの払暁といった騒がしさだ。
都議選で自民党が負け、そのあとの総選挙でも自民党が負けて、民主党が政権を握ることになるだろうと、自民党議員の多くが懸念しているようだ。杞憂ではなく、妥当な予想といえるだろう。
民主党政権になると当面はギクシャクした政治が続くことになるのだろう。民主党議員の多くが元自民党議員で、人間のメンタリティーは、それも年寄りとなると、なかなか変わらないから、はみ出しの元自民党議員と破綻した元社会党議員らが寄り集まって成立している民主党政権に、日本政治のコペルニクス的転回を期待するのは、ないものねだりだ。
しかし、政権担当政党が交代することはそれなりの意味がある。今話題の核持ち込みに関する日米密約文書破棄についての徹底調査など、やれば面白い展開になるのではないかと思う。
新聞報道によると、1960年の日米安全保障条約改定のとき、核を搭載した米艦船の一時寄港などは核持ち込みとは解釈しないという了解が日米間にあり、それを裏付ける文書もあったが、すでに廃棄されている、と元外務事務次官が語った。密約は存在しないと言い張ってきた日本国政府の公式的な立場と食い違う。とはいうものの、アメリカの方では、ライシャワー元大使の証言、ラロック元提督証言、それに密約に関する文書そのものが公開されているので、日本政府の言明がまっかな嘘であることはすでにみんなが知っている。
先月(2009年6月)下旬に成立した公文書管理法は、公文書は国民共有の知的資源であり、歴史資料として貴重な公文書は国立公文書館などに移管することを定めている。遅かりし由良之助。遺憾ながら、核持ち込みに関する日本側密約文書の文書はすでに破棄されている。朝日新聞の報道によると、「遠い昔の文書であり、表向きないと言ってきたものを後生大事に持っている意味がどこにあるのか」と、ある元政府高官が言ったそうだ。これなど公文書はお役所のもので、国民の共有財産などとはとんでもない、と思っている政府高官の信念をよく表している。
それで、誰が廃棄の決断を下したのか。みんなで書類にハンコをおして責任のありかをあいまいにする生き方に慣れているお役人が、素人がみても重要な歴史文書とわかる書類の廃棄を自発的に決断できるだろうか。おそらくは廃棄処分については、当時の政治家―政府首脳首相も関与していたのではなかろうか。こういった疑惑が生じてくるのであるが、麻生内閣の中曽根外相は調査しないと言ったそうだ。
もっとも、新聞報道によると、廃棄したというのは嘘で「極秘に保管されている可能性は残っていると思う」ともいわれている。捨てたということにしておけば、公開要求を拒否する格好の理由になる。
沖縄返還をめぐるいわゆる「外務省機密漏洩事件」では、日本政府は取材した毎日新聞の記者と資料を提供した外務省の事務官の情事を暴露し、2人を逮捕して裁判にかけ、深刻な政治問題を性事スキャンダルにすりかえて難を逃れた。やがて、沖縄返還をめぐる吉野―スナイダー密約が表ざたになり、メディアも国民もまんまといっぱい食わされたことを知ってホゾをかんだ。遅かりし由良之助。
民主党政権になったら、そのあたりのこともひっくるめて調査してもらいたいものだ。
名にしおう霞が関の木下闇
人目をしのぶ文をひそかに
大歩危閑散人
(2009.7.11 花崎泰雄)
都議選で自民党が負け、そのあとの総選挙でも自民党が負けて、民主党が政権を握ることになるだろうと、自民党議員の多くが懸念しているようだ。杞憂ではなく、妥当な予想といえるだろう。
民主党政権になると当面はギクシャクした政治が続くことになるのだろう。民主党議員の多くが元自民党議員で、人間のメンタリティーは、それも年寄りとなると、なかなか変わらないから、はみ出しの元自民党議員と破綻した元社会党議員らが寄り集まって成立している民主党政権に、日本政治のコペルニクス的転回を期待するのは、ないものねだりだ。
しかし、政権担当政党が交代することはそれなりの意味がある。今話題の核持ち込みに関する日米密約文書破棄についての徹底調査など、やれば面白い展開になるのではないかと思う。
新聞報道によると、1960年の日米安全保障条約改定のとき、核を搭載した米艦船の一時寄港などは核持ち込みとは解釈しないという了解が日米間にあり、それを裏付ける文書もあったが、すでに廃棄されている、と元外務事務次官が語った。密約は存在しないと言い張ってきた日本国政府の公式的な立場と食い違う。とはいうものの、アメリカの方では、ライシャワー元大使の証言、ラロック元提督証言、それに密約に関する文書そのものが公開されているので、日本政府の言明がまっかな嘘であることはすでにみんなが知っている。
先月(2009年6月)下旬に成立した公文書管理法は、公文書は国民共有の知的資源であり、歴史資料として貴重な公文書は国立公文書館などに移管することを定めている。遅かりし由良之助。遺憾ながら、核持ち込みに関する日本側密約文書の文書はすでに破棄されている。朝日新聞の報道によると、「遠い昔の文書であり、表向きないと言ってきたものを後生大事に持っている意味がどこにあるのか」と、ある元政府高官が言ったそうだ。これなど公文書はお役所のもので、国民の共有財産などとはとんでもない、と思っている政府高官の信念をよく表している。
それで、誰が廃棄の決断を下したのか。みんなで書類にハンコをおして責任のありかをあいまいにする生き方に慣れているお役人が、素人がみても重要な歴史文書とわかる書類の廃棄を自発的に決断できるだろうか。おそらくは廃棄処分については、当時の政治家―政府首脳首相も関与していたのではなかろうか。こういった疑惑が生じてくるのであるが、麻生内閣の中曽根外相は調査しないと言ったそうだ。
もっとも、新聞報道によると、廃棄したというのは嘘で「極秘に保管されている可能性は残っていると思う」ともいわれている。捨てたということにしておけば、公開要求を拒否する格好の理由になる。
沖縄返還をめぐるいわゆる「外務省機密漏洩事件」では、日本政府は取材した毎日新聞の記者と資料を提供した外務省の事務官の情事を暴露し、2人を逮捕して裁判にかけ、深刻な政治問題を性事スキャンダルにすりかえて難を逃れた。やがて、沖縄返還をめぐる吉野―スナイダー密約が表ざたになり、メディアも国民もまんまといっぱい食わされたことを知ってホゾをかんだ。遅かりし由良之助。
民主党政権になったら、そのあたりのこともひっくるめて調査してもらいたいものだ。
名にしおう霞が関の木下闇
人目をしのぶ文をひそかに
大歩危閑散人
(2009.7.11 花崎泰雄)