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年頭所感

2023-01-13 23:42:05 | 国際

ロシアがウクライナに攻め込み、ウクライナを支援する国々たいして天然ガスの輸出を制限し、エネルギー危機が生じた。ついでに穀物危機も。そのさなかに日本では通貨「円」の交換価値が下落し、物価が上昇した。2022年12月の東京都区部の消費者物価指数は生鮮食品を除く総合指数が前年同月比4パーセントあがった(総務省発表)。イギリスの消費者物価指数は2022年12月が10パーセントほどの上昇だった。物価上昇率は英国と比べると日本は低いが、物価指数を算定する商品の選定は国によって異なるので、生活する人の不安感や窮乏感は数字だけではわからない。

そうした中で、日本では物価の優等生である卵まで値上がりした。卵は物価の優等生といわれてきた。食品値上がりのさいも卵の値段だけは変わらなかった。鳥インフルエンザによる卵生産量の落ち込みも理由の一つのようだが、ついに「卵よお前もか」というわけで、これで物価高騰が新しい年の重要テーマの一つとして定着した。

卵の値上がりにひっかけて、夕方の某テレビが卵1つで3人分の親子どんぶりをつくる方法を伝えていた。みじめったらしいアイディアなので見る気もしなかった。卵値上がり、即、卵1つで3人分の親子どんぶりと発想したテレビの送り手の発想の貧困にげんなりしたからだ。

そうこうするうちに、中国が日本人と韓国人を対象にしたビザの発行を停止した。中国のこの措置は、中国を仮想敵国とみなした日本の敵基地攻撃能力構想と米軍との積極的な安全保障態勢の整備にある。つまるところ台湾有事のさいに、米国が日本をお供にしたがえて台湾防衛にあたるという意思を中国に見せつけることで、中国に対する抑止力としようとする日米安保体制強化という脅しに対する中国側の不快感の表れである。

日本国の岸田首相がフランス、イタリア、英国、カナダを歴訪し、米国のワシントンに到着した。すでに日本の外相と防衛相が米国の国務長官と国防長官とワシントンで会合を持ち、日本の適地攻撃能力の獲得と防衛予算の増加で意見の一致を見た。日米の周辺整備はすでに終わっている。

台湾問題の失策は中国共産党の権威失墜にもつながる問題である。習近平政権も神経をとがらせている。習近平政権はコロナ対策で上海市民の強い抗議を受けた。抗議を受けてあっさりとゼロコロナ政策をおしまいにした。対外的には体面を失った直後だ。

日本に対するビザ発行停止は、日本の敵基地攻撃と日米軍事一体化という脅しによる中国抑止に対するお返しである。中国経済あっての日本経済でしょう、日本人が中国に来られなくなったら日本経済はどうなりますか? 中国は黙ってみていませんよ、という脅しである。日本政府に対する脅しであり、中国国民に対する政権盤石のポーズである。

ロシアではプーチンが対ウクライナ戦争を仕切る将軍の首をせわしなくすげ替えている。ウクライナを簡単にひねりつぶすことができなかったプーチン大統領はメランコリックになっている。アメリカではバイデン大統領も機密文書を自宅に持ち帰っていた。トランプ前大統領と同じ失策だ。ブラジルではブラジルのトランプの異名で知られるボルソナーロ前大統領派の群衆が国会議事堂に乱入した。

ブリキの古バケツが空っ風にを受けて、ガラガラと音をた立てて転がりまわっているような、しけた正月風景である。

(2023.1.13 花崎泰雄)

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