子どもの頃の秋。
田舎の山は知る人ぞ知るマツタケの産地だった。マツタケが生える時期は、一家総出で山に入った。どこの家も似たようなものだった。
当時の農家は貧しかった。山の幸は、いい臨時収入になったのだ。特にマツタケは別格。わざわざ買い付けの業者が足を運ぶほどだった。
1回山に入ると、籠に入りきれないぐらい採れた。業者は選別して値段をつけて買い取った。
「こりゃカサが開いてしもうとるわ。惜しいのう。値打ちは半分になるぞ」
同じマツタケでも開きとツボミに分類された。花のツボミと違って、ツボミのマツタケはかなり高い値段で買ってくれた。
子どもごころには不思議だった。開いたカサのマツタケの方が立派に見えた。つぼみのマツタケは、まるでコケシに似た形で、とても好きにはなれなかった。
ただマツタケ狩りに掛かると、大人顔負けに欲張りになった。眼の色を変えて、ツボミマツタケを求めて山を駆け巡った。お小遣いが増えるのだ。つぼみマツタケは子どもの味方だった。
(2014・2・1原稿)
田舎の山は知る人ぞ知るマツタケの産地だった。マツタケが生える時期は、一家総出で山に入った。どこの家も似たようなものだった。
当時の農家は貧しかった。山の幸は、いい臨時収入になったのだ。特にマツタケは別格。わざわざ買い付けの業者が足を運ぶほどだった。
1回山に入ると、籠に入りきれないぐらい採れた。業者は選別して値段をつけて買い取った。
「こりゃカサが開いてしもうとるわ。惜しいのう。値打ちは半分になるぞ」
同じマツタケでも開きとツボミに分類された。花のツボミと違って、ツボミのマツタケはかなり高い値段で買ってくれた。
子どもごころには不思議だった。開いたカサのマツタケの方が立派に見えた。つぼみのマツタケは、まるでコケシに似た形で、とても好きにはなれなかった。
ただマツタケ狩りに掛かると、大人顔負けに欲張りになった。眼の色を変えて、ツボミマツタケを求めて山を駆け巡った。お小遣いが増えるのだ。つぼみマツタケは子どもの味方だった。
(2014・2・1原稿)