「開けっ放しで
不用心じゃないの!」
また妻に叱られた。
何度怒られても、
またうっかり玄関の施錠を
忘れてしまう。
確かに物騒な世の中で
うっかりは許されない。
それでも子供のころ
身についた習慣は
抜けない。
あの当時の田舎は
カギをかける家が少なく、
日中は開けっぱなしでも
平気だった。
集落は
生まれた瞬間からの
知り合いばかり。
気心が知れていて
家族同然で、
犯罪の心配など
これっぽっちもなかった。
もしも不審者がいても、
隣近所で
注意しあうので大丈夫。
いつでもどこでも
村人の姿が
そこら中に見られるのが
田舎のよさだった。
「今は十九世紀じゃないのよ。
開けっ放しの玄関を
想像しただけで
身震いしちゃうわよ」
よき昔の話をすると、
また妻がピシャリ!
言い分は正論過ぎて
二の句が継げなくなる。
玄関は開けっ放しで
村の誰もが我が家のように
出入りしていた時代は遠くなり、
カギが複数
必要な時代に
なってしまったのが
悲しい。
不用心じゃないの!」
また妻に叱られた。
何度怒られても、
またうっかり玄関の施錠を
忘れてしまう。
確かに物騒な世の中で
うっかりは許されない。
それでも子供のころ
身についた習慣は
抜けない。
あの当時の田舎は
カギをかける家が少なく、
日中は開けっぱなしでも
平気だった。
集落は
生まれた瞬間からの
知り合いばかり。
気心が知れていて
家族同然で、
犯罪の心配など
これっぽっちもなかった。
もしも不審者がいても、
隣近所で
注意しあうので大丈夫。
いつでもどこでも
村人の姿が
そこら中に見られるのが
田舎のよさだった。
「今は十九世紀じゃないのよ。
開けっ放しの玄関を
想像しただけで
身震いしちゃうわよ」
よき昔の話をすると、
また妻がピシャリ!
言い分は正論過ぎて
二の句が継げなくなる。
玄関は開けっ放しで
村の誰もが我が家のように
出入りしていた時代は遠くなり、
カギが複数
必要な時代に
なってしまったのが
悲しい。