こころの文庫(つねじいさんのエッ!日記)

家族を愛してやまぬ平凡な「おじいちゃん」が味わう日々の幸せライフを綴ってみました。

親孝行?

2017年11月18日 00時45分40秒 | Weblog
市の健康ポイント事業は、
健康に関する教室や
イベント体験でポイントがつく。
もちろん一
日八千歩以上歩けば加算だ。
ポイントは商品券に。
もちろん健康寿命は延びる。

「どないしたんや?
お前は運動嫌いやろが」

 父が頭を傾げる。

 ちいさい頃から
運動や体育の類は
全然ダメな息子を見てきた父。
外で遊ぶより
室内でひとり
自分の世界に浸る、
子供らしさに欠けた
可愛げのない子供を
持て余していた。

 一つ違いの兄は、
いつも友達と野外を遊びまわる。
親にすれば
素直で子供らしさがいっぱいの兄は
可愛かったに違いない。
その兄は
仕事で屋根から落ちて死んだ。
皮肉にも,
可愛げのない
ネクラなほうが残ってしまった。

「ほんまに何を考えとるんかのう、
お前は」

 父にはいまも
理解しがたい子供なのだ。

 ただ笑ってごまかす。
それも苦笑い。
体を動かすことに目覚めた動機が、
親孝行したいからとは、
照れ臭くてとても口にできない。

「運動しようって
きっかけは何ですか?」

「百歳近く長生きの父より
先に死ぬような親不孝は
絶対できません。
唯一の親孝行ですわ」

 ストレッチ体操講習会の事前検診で、
保健師さんに
ボロッと漏らしてしまった真意。

 目標は九十歳。
そこまでいけば、
いくら頑丈な父でも、
もはや人生を卒業している。

 颯爽とグランドゴルフを励む
父の姿に
舌を巻きながら、
息子の挑戦は始まったばかり。
健康寿命の限界へ!
夢は大きいほどいい。

 
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深夜のつれづれ

2017年11月17日 04時37分20秒 | Weblog
ふっと目が覚めた。
寝入っていたらしい。
時間は明け方の三時過ぎ。
ここしばらく忙しかったせいで、
かなり疲れがたまっていたのだろう。
どんな時間でも
目が覚めてしまえば、
もう眠るのは諦めるしかない。
習慣で
すぐパソコンと向き合う。
メールとブログを順次開ける。
これを怠ければ、
たまった項目の処理に、
あぐねてしまうのはわかっている。
やるっきゃない。
迷惑メールがほとんどの中に、
うれしい知らせがあった。
申し込んでいた、
イオンモールと市が共催する、
グリーンペアウォーク@スターバックスの、
参加が決まった。
イオンモール周辺を、
なにか緑のものを身に着けて(スターバックのイメージカラーである)
ペアで参加が必須条件だ。
ペアと聞けば、
男女、恋人、夫婦と思い込んでいたので、
参加はあきらめていたが、
よくよく聞けば、
友達でも親子でもいいと
条件が緩和されたらしい。
田舎町で特定のペアにこだわっては、
参加者の応募もままならかったのは想像に難くない。
(クスリと思わず笑ってしまう)
何はともあれ、
参加への道は切り開かれた。
それでも知人に
一緒に歩こう、
それも目立つ緑の目印をつけてなどという
酔狂な人間は思い当たらない。
再びあきらめかけた時に、
イオン仲間の一人がOKサイン。
彼は70半ば。私は70直前の、
老々コンビ誕生となった。
内緒だが、
彼の動機は、
歩いた後、
スタバのコーヒーが飲めるかららしい。
年金生活に
スタバのコーヒーはやや高すぎるのだ。
娘がアルバイトしているわたしでさえ、
なかなか手の出ないスタバのコーヒーである。(笑)

歩いてスタバコーヒーを飲もう!
そんな合言葉で本番の日を、
今や遅しと待っている。
そうだ、
緑のグッズを見繕っておかなきゃ。
のんきなおっさんだと自分でも思うなあ。(笑・笑)
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つれづれ・ドライブ

2017年11月16日 01時33分03秒 | Weblog
 いまだかって
カーナビを頼ったことがないのが
自慢です。

 といっても私は方向オンチ。
道に迷えば、
道沿いの商店や派出所へ飛び込むのです。
そして道案内をしてもらいます。

 これが実に楽しい。
各地域の人情と直接触れ合えるのです。
時々話が弾んで長居して
お茶をごちそうになったり
なんてこともありました。
派出所のおまわりさんも、
みなさん優しい。
丁寧に説明して頂き、
恐縮してしまいます。

 妻が助手席にいれば、
本当に楽しい。

「こっちじゃないよ」
「どっちや?」
「頼りないわね」
「だからお前が、
いつもそばにいてくれたら
ええんやないか」
「もう!」

 なんて倦怠気味の夫婦には、
刺激たっぷりの恋愛回帰にも
つながったりするのです。

 自動運転などと姦しいですが、
人工知能(AI)に任せていたら、
人だから生まれる
温かい心の触れ合いは
なくなってしまいますよ。
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つれづれ・スカーッと料理

2017年11月15日 01時51分31秒 | Weblog
そこで冷蔵庫を覗きます。
食材の賞味期限切れが間近のものが
やたら目につきます。
さあ、お料理タイムです。
ヒジキ煮、筑前煮、キンピラ、煮豆……、
竹輪とこんにゃく、ピーマン、ニンジン、ゴボーに
黒豆を水炊きにしておいたものと、
早く使ってしまうほうがよさそうなもので、
レシピを見繕いました。
IC調理台をフルに使って、
まずは煮豆をしかけておいて、
具材を切りそろえます。

料理は、
ストレス解消には
かなり効果があります。
思い通りの調味に
煮る焼くは自由自在。
スカーッとします。
ご飯も炊いて、
妻や娘の帰宅を待つ間に、
味見を兼ねたひとり夕食。
やっぱり、
伝統の家庭料理は、
昔人間の私の口にあいます。
一応精進風食事が終わると、
今度は娘のために、
唐揚げとフライものを作っておきます。
自家製の冷凍ストック分を使います。
フライパンに少な目に入れたサラダ油を、
IHにかけると、
同時にパン粉付けして冷凍したものを
油にいれます。
上げるのではなく焼く要領です。

キャベツの千切りはフードプロセッサーで、
後は味噌汁を作っておきます。

一息つくと、
料理に夢中の間忘れていた痛みが、
ぶり返しました。
ビデオ録画しておいたドキュメント72の
まとめ鑑賞しながら、
家族の帰りを待つことにしました。
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つれづれ・おでん

2017年11月14日 00時54分29秒 | Weblog
きょうは
福祉会館でストレッチの基本を知る
健康教室に参加しました。
これまで
ただ歩くだけだったウオーキングも、
ストレッチが必要だと
思い知ったからです。
2時間余りの初心者講習でした。
ストレッチも専門家の指導を受けると、
いやはや大変でした。
運痴を自認するだけに猶更です。
それでも、面白かったですね。

いま深夜過ぎ。
体中が痛い。
ストレッチが効いているんでしょうね。
パソコンに向かっていると、
隙間風(?)もあって寒い!
実はエアコンないんです。
暖房は、
よほど厳しい寒さにならない限り、
重ね着で対応します。
冬本番は湯たんぽです。
そして、食卓には鍋……
急におでんが食べたくなりました。(笑)
そういえば、
子供のころ、
あんな美味いものは他にはないと、
思っていましたね。
そう、あの頃は……?


 近くの町で祭りがあると、
もうワクワクしっぱなし。
兄に連れられて行くが、
手には十円硬貨をしっかりと握っていた。
祭りが真っ最中の境内に入ると、
もう別世界。
小学校の下級生には
喧噪すらファンタジーだった。

 兄のお目当てはおでん。
おでん売りの湯気が立つ鍋から、
空腹を刺激する美味い匂いが立ち込めて、
子供らが群がっていた。

 蒟蒻を三角に切ったものと
竹輪が別々の一本串で煮えていた。
わずかな小遣いで買えるのはせいぜい一本。
そのおでんは最高に美味かった。
家で母が作ってくれる煮物とは、
まるで別物だった。
熱いこんにゃくをハフハフ頬張ると、
なんとも幸わせになった。

 漫画おそ松くんのチビ太が
手にする蒟蒻と竹輪を
串に刺したおでんは贅沢だ。
どちらか一本選んで買うしかない貧しさは、
おでんを他にはない
美味いものにしてくれたのだ。

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つれづれ・歩け歩け

2017年11月13日 08時22分16秒 | Weblog
昨日は
小谷城跡散策ふれあいウォークに
参加。
距離は4キロほどですが、
標高230メートルの
城跡までの山登り付きが
キツイ。
嘉吉の乱で一度落城したものの、
応仁の乱で再興されたとか、
名家赤松の一族が治めていた城でした。
いくさには弱かったようですが、
最後の城主、祐尚公はかなりの名君で、
領地はかなり繁栄したらしい。
祐尚山陽松寺という大きな寺が、
城山のふもとに残存している。
赤松家の嘉吉の乱で討ち死にした家臣を、
そして一族を供養する墓石が、
ずらーっと並びたち壮観な光景でした。

下山した後は、
小谷の石文化を見て回りました。
興味深い由来ある石仏や石造五輪の塔など、
歴史を感じさせてくれ遺跡群でした。

帰宅すると3時前。
万歩計の表示は17923歩。
実は市の健康プラン事業で
一万歩歩くと、
40ポイントづつ加算されます。
年度終わりに精算されて
最高1万ポイント(商品券1万円相当)が
付与されるのです。
それでまあ毎日歩いているわけなんです。
(現金な話でごめんなさい。笑)
やはりそんな目的でもないと、なかなか歩けませんよね。
(エ?それは私だけ。笑)
健康づくりもかねてエッチラオッチラ歩きます。
加西市も時々いい事業を推進してくれますよ。
ふるさとバンザイ!です。

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つれづれ・どんよりどよどよ

2017年11月12日 02時12分43秒 | Weblog
深夜2時。
目が覚めました。
どうやら
寝込んでしまっていました。
昨日は徹夜明けのまま、
まちライブラリーに突入です。
すると、
なんと娘が孫を連れて現れました。
タイミングが悪いというしかありません。
一人芝居をやるのに集中すべきなのに、
「ほ~ら、おじいちゃんだよ」
と愛想笑い(?、大笑)を
しなくてはとジタバタ。
結局どっちつかず。
孫もおじいちゃんのアセアセ状況を
察したのか、
ちょっと距離を置かれていました。
とにかく、イベントはやり終えて、
その流れで、
市民会館の地域市民医療フォーラムへ。
きょうは連れの車に便乗でラクラク。
2時間ばかり、
加西市唯一の市民病院の
危機的状況をじっくりと聞かされました。
すこし暗い気分で、
孫の顔を見て癒されようと帰宅すると、
ああ~無常!
孫が帰ってしまっていたー!(ガックリ)
特養介護施設に勤める娘に、
訪看スケジュールが入っていたようでした。
それやこれやでドーン!と落ち込みました。
二兎を追うものは一兎も得ずです。

気分的に滅入ると、
もう日常から外れます。
そこはB型射手座、お手の物です。
つまり怠け。
テレビ録画しておいた、
「この声をきみに」を一気鑑賞。
この番組、
そう明るいストーリでもないので、
ますます気疲れしました。
それで11時過ぎにバタンキュー!
目が覚めたのは、
夜型人間の宿命でしょうか?
というわけでブログを開きました。
訪問は先送りせざる得なく、(ごめんなさい)
ブログの作成に入っています。
書き終えれば、
少しは落ち込んだ気持ちも
軽くなっているかもしれませんね。(笑)
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つれづれ・サミット

2017年11月11日 02時10分32秒 | Weblog
きょうは
市民会館まで
足を延ばしました。
第29回義士親善友好都市交流会議
『忠臣蔵サミットin加西』という、
大仰なイベントが行われる予定です。
忠臣蔵とか赤穂浪士は好きなので、
ちょっとワクワク
期待感いっぱいで会場に臨みました。
参加自治体は北海道か九州までの、
16都市とオブザーバーとして2都市。
そうそうたる市町の名前が並んでいました。
ますます期待で胸を膨らませて、
開演時間を迎えました。

1時間30分、
はっきり言うと、
しんどかったー!
各自治体の代表が演壇に登り、
地元アピールのオンパレード。
忠臣蔵とのかかわりが、
(え?)と思うような些細なことに、
ひっかけてあるだけとしか思えない市町も……?
それぞれのアピールにも、
赤穂浪士たちの影が薄すぎました。
赤穂市の市長さんが、
あの討ち入りの戦闘服で有名な羽織(?)姿だったのが、
唯一の救いでした。
各自治体が持ち回りで開催されているのですが、
もっと演出があって然るべきです。
一般傍聴席への集客を求めるなら、
それぐらいの工夫をしてほしい。

ちなみに加西市の一部は、
赤穂藩の飛び領地だったので、
大石内蔵助はじめ義士の逸話と、
忠臣蔵に由来するサンガクジのひとつ、
久学寺という名刹まであるのです。
内蔵助が座った大石(しゃれ?)まで現存しています。
内匠頭切腹、
藩お取りつぶしの早馬の急使が赤穂入りした時は、
久学寺で住職と碁を打っていたという
話まであります。

そんな加西人のわたし、
やはり忠臣蔵は
おろそかにできない物語なのです。

今後の視点を変えた、
面白く中身の濃いサミットを期待して、
会場をそそくさと後にした。(苦笑)

途中イオンに立ち寄ると、
値引きの牛乳をめっけ。
二本買ってしまいました。
最近ホームベーカリでパンを、
ほかにホットケーキやプリンなど作るので、
牛乳は何本あってもいいのです。
安ければおあつらえ向きです。(笑)
リュックに詰めて
おっちらこっちら家路につきました。
戦後の買い出しスタイルそのものです。
歩いた歩数は
16790歩でした。
お疲れさま。(笑)

明日はまちライブラリーの記念舞台。
ちょっと焦り始めている
自分を感じています。
うん!頑張ろう。
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つれづれ

2017年11月10日 01時52分49秒 | Weblog
まちライブラリー
1周年記念イベントの準備を
していると、
携帯に着電です。
公募ガイドの編集部からでした。
今月の読者さんに、
応募していたのが
取り上げられたようです。
時間を改めて電話取材を受けることに。

夕方携帯が鳴りました。
電話取材の始まりです。
ふだんしゃべる相手のいない時間帯が多いせいで、
ドッと堰を切ったように喋りました。
結局40分の約束が1時間に。
最後に、
取材のフリー記者さん、(女性です)
「実は私も兵庫県出身なんですよ。淡路島……」
これでまた話が盛り上がりました。
果たして取材の目的を果たされたのかどうか、
心配ですが、
写真3枚を撮影して送ることになりました。
公募ガイド1月号の
白黒1ページを飾ることになりそうです。
ついでがあればまたご覧ください。
ただし、写真の私は無視してください。
白髪の貧相なおじいさんが映っているだけですから。(笑)

いい年齢になってから、
不思議と自分をアピールしがちになりました。
これまで寡黙でお人好しで、
ちょっとネクラで押し通した人生でしたが、
ゴール間近になって進路変更です。
控えめさん、サヨ~ナラです。(笑)
人生もサヨ~ナラが近いのに、
手遅れですね。(笑)
今日は気分よく眠れそうです。
もちろん4時ころまで、
パソコンとにらめっこです。
明日の午前中までに
5枚の原稿を仕上げないと、
当日消印の締め切りに間に合わないから、
空っぽの頭を懸命に絞っています。
買わなきゃ当たらない宝くじ。
出さなきゃ入選しない。をモットーに、
実行するのも、
いやはやキツイですよ。
ああ、
言い忘れるところでしたが、
取材を受けて掲載されると、
〇〇〇〇円いただけるそうです。
これは妻には内緒で
私の小遣いにできそうです。(ほっ)
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若かったあの日

2017年11月09日 01時23分06秒 | 文芸
10数年前に書き留めた手記です。
こんな時代があったのです。

「将来飲食店で独立するんやね。
ならここで思い切り
勉強したらいいじゃないか」

 調理師学校に紹介された
H商工会議所内のレストラン。
面接相手は
何のこだわりも見せない。
自分の店を持つまでと
ハシゴ的な
身勝手過ぎる求職者を
「いいよ、いいよ」
という感じで迎えてくれる。
終始ニコニコと
緊張感や余分な考えを包み込む。
それがY専務だった。


 レストラン勤めは
順調だった。
調理師学校で学んだ調理技術は、
職場の上司M調理主任の
おおらかな指導のもと
生かされた。
優しい同僚たちにも恵まれて
楽しく仕事をした。

「専務さん、
仲人をお願いできますか?」

 就職して2年目。
つきあっていた彼女と
結婚を決め、
Y専務のもとを
二人で訪れた。

「ほうか。結婚するの。
喜んで引き受けましょ」

 彼女と二人、
感謝の頭を下げた。

 Y専務はすぐに動いた。
結納で彼女の親元に出向き、
結婚式場も早速押さえた。
レストランと提携する
結婚式場だった。

「これはという
メニューを考えてやるよ。
きみには一生に一度の
晴れ舞台だからな」

 W主任も喜んだ。
同僚らの好意的な冷やかしも
心地よく
嬉しかった。

「ありがとうございます!」

 何度も頭を下げながら、
にやけた。

 それが3週間後、
事態は一変した。

「結婚するの自信ない。
…結婚できない…!」

「え?」

 寝耳に水だった。
前日までは二人の未来を
あんなに
幸せいっぱい語っていたのに。

 彼女の心を取り戻すべく
懸命に慰留したが、
無駄だった。
彼女の思いは決意に変わった。

「結婚はやめる!」

 初めてだった恋愛経験、
その彼女との結婚しか
考えられなくなっていた
私には大ショックだった。
しかし、
もう彼女に
取り付く島はなかった。

 何も考えられなくなり、
職場を無届けで休み、
アパートの自室にこもった。
死にたいと思ったが、
それを実行する勇気はない。
知り合いの誰とも
会いたくなかった。
ただ布団を頭からかぶって
モグラ状態で過ごした。

(…どうしたらいいんだろう?
親には…専務さんは…主任さんは…)

 どの人にも
申し訳ないが先に立つ。
やっと落ち着いても、
破談の後始末なんて、
考えられるはずがない。
職場の上司や
同僚の顔を思い浮かべ、
焦燥感で
押しつぶされそうになるだけ。
結局3日間、
アパートは出られなかった。

 誰かがドアを叩いている。
フラーッと玄関に移動した。
でもドアのノブに手は出なかった。
何度も何度もドアを叩いたあげく
相手はようやく諦めた。
「ホッ」と緊張が解けたとき、
郵便受けに何かが差し込まれた。
一枚のメモ書きだった。

 ドアの向こうに
気配が消えたのを確かめると、
やっとメモを手にした。

『みんな心配している。
きょうの夕方、
仕事終わりに専務と一緒に来るから、
7時頃、家にいてくれよ M』

 3日間何も連絡せずに休む
スタッフを心配した主任が、
ワザワザ来てくれた。
(忙しいのに…)
また申し訳なくて堪らなかった。

時間を指定されてしまっては、
もう居留守を使う訳にはいかない。
Y専務とM主任、
あの優しい上司と
顔を合わせないわけにはいかない。

「オレ、外で待ってるからな」

 M主任の気配りで、
私はY専務と二人きりにされた。
罪悪感いっぱい、
気まずい思いにいる私を
慮った専務は
先に口を開いた。

「お父さんに☎を貰った。
向こうさんの家から
連絡があったそうだ。
えらく心配されていたよ」

 すべてを専務は知っている。
それなのに、
全く変わらない笑顔が
目の前にあった。

「…ぼ、ぼく…」

「無理しなくていいから。
ややこしい手続きは
私がやっておくから。
きみはこの週末まで休みをとるといい。
落ち着いたら仕事に出なさい。
みんな待ってるよ。
きみがいないと
みんな寂しいんだってさ」

 ボロボロと涙が出た。

「ただ、どんなことがあっても、
自分だけで持ち込むんじゃないよ。
ご両親だって、
僕も主任も、
ちゃんと相談に乗れるんだから。
お互いの人生で
せっかく出会えた相手だろ。
大事にしなきゃ」

 何も言えない。
止めどもなく流れ落ちる涙を
頻りに拭った。

 週明けに職場へ。
何とも言えない気恥ずかしさは、
同僚たちが
すぐ忘れさせてくれた。

「これからの君は、
今回のことを生かして、
強く成長しなきゃいけないよ。
人任せの人生は
何度も繰り返さない。
いいね、約束だ」

 改めて詫びる私に
向けたY専務の言葉は、
私の胸に深く刻まれた。
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