老い生いの詩

老いを生きて往く。老いの行く先は哀しみであり、それは生きる物の運命である。蜉蝣の如く静に死を受け容れて行く。

1109;生き地獄

2019-05-15 12:13:58 | 老いの光影 第5章
季節外れの風景

生き地獄

生き地獄とは どんな世界なのか
生き地獄を味わった人でないとわからない

私が担当している婆さんではないが
さくらさくらデイサービスセンターに昨日から通い始めてきた
95才の婆さんの独り言を聴いてしまった。

「(いまのわたしは)生き地獄だ」
95才
覚束なくなった足になり 便所に間に合わず
粗相をしてしまった。
嫁から「臭い」と言われ
ブロックで積まれた8畳一間の小屋に棲まされた。

冬は寒く夏は暑く 人様が棲めるような処ではない
便所は母屋にしかなく
(ブッロク小屋に便所はない)
95才の婆が使うと 便所は汚れ臭くなるから
嫁は「トイレには行かずに紙パンツのなかにしなさい」と。

お尻は爛れ 痛々しい
これから暑くなってくるので褥瘡(床ずれ)が心配

便所に行くこともないから
足の筋肉は衰え 心まで萎えてきた

昼夜ベッド上の暮らし
部屋の片隅には小さな液晶テレビが申し訳なそうにあるだけ

さくらさくらデイサービスに来てわかったこと
まだ両肘、両膝の関節に拘縮はなく
手を尽くせば 立ち上がりや立つ
うまくいけばつかまり歩きもできる
可能性を秘めているのだが

歩かなくなったために
股関節が錆びれ 動かすと痛く
痛いが故にジッと動かさずにいる

歌を忘れたカナリヤではないが
歩くことを忘れてしまった95才の婆さん

一番心を痛めるのは 排せつ
ポータブルトイレを置くことも
きっとままならぬであろう

ポータブルトイレのバケツに溜まった糞尿は
誰が捨てるのか
嫁が捨てることは考えられぬ

捨てらずに溜まった糞尿がベッド脇に置かれると
それこそ臭くなりポータブルトイレもままならぬ

なんのために生まれて来たのだろう?
長生き過ぎてしまった
この世は生き地獄

これから、どうするか