自然となかよしおじさんの “ごった煮記”

風を聴き 水に触れ 土を匂う

ルリタテハ,今年最後の羽化(前)

2014-11-22 | ルリタテハ

11月8日(土)。

残った蛹がいつ羽化するか,とてもたのしみに待っていました。しかし,予想日をうんと越しているにもかかわらず,一向に羽化する気配が見られませんでした。ところが11月6日辺りからはっきり色彩が変わってきました。いよいよ孵化が近づいたのです。

午後3時30分。見ると,殻が裂け始めました。じつにゆっくり,ゆったりとした感じで。「さあ,出発だ!」なんて指令は,どんなふうに発せられて,どのようにして全身がそれに向かって動いていくのか,考えればふしぎです。


おかげで,慌てることなく写真に収めることができました。裂け目がぐっと大きくなりました。


出たあとは,すいすいと向きを変えました。こういう一瞬の写真が記録できるのは,ほんとうにうれしいばかりです。いのちを切り取るといった凄みが湧き上がってくる感じがします。この場面,「いよっ! 大統領!」とでもいいたくなる光景です。


殻に付いた状態で,翅を伸ばしました。あとは順調に推移していったのです。


この個体のついて,前蛹からの推移をまとめると次のとおりになります。

  • 前蛹になった日時……10月  2日(火)  0:00~6:00
  • 蛹化した日時…………10月22日(水)  0:30
  • 羽化した日時…………11月  8日(土)15:30

今回の観察でわかったのは,秋が深まる中での変態の場合,その進み具合はたいへん遅い,のろいという点です。蛹期間でさえ,暖かい時期と比べて6日程度長くなっているのです。明らかに,気温に左右されていると思われます。

成虫は間もなく越冬に入ります。そうして早春の日だまりに,『春の使者』として現れるのです。今年最後の個体が無事に羽化してなによりです。

 


ヒラタアブの幼虫,あちこち

2014-11-21 | ヒラタアブ

ヒラタアブにはいくつかの種類があります。キクの花を訪れて産卵するものにも,いくつかの種類があります。それで,どのアブの幼虫なのか,よくわかりません。アブのことを調べ尽くそうとしているわけでもないので,わからないことがわからないまま残っていきます。マア,しかたないことですが。

キクの葉にたくさんのアブラムシが付いています。わたしは,それを消毒しないままにしています。それで,生きものを観察できればしめたものという気持ちなのです。そこに,ヒラタアブの幼虫を発見。下写真の個体はすこし大きくなっています。 


この葉には3個体の幼虫がいました。アブラムシの存在をちゃんと察知して,そこに産卵した成虫の能力の程が窺えます。下写真は 初齢幼虫です。


別の葉には2個体。卵殻も残っていました。左の個体は,アブラムシを捕えています。 


拡大してみると,よくわかります。 


こんな世界が広がっているのは驚きです。人によっては,「ゾッとする」といって避ける方もあるでしょう。それは人それぞれで止むを得ないことではありますが,目を逸らさずに観察を続けることによって新しい知見が得られます。そこにわたしは魅力を感じています。 

 


ブロッコリーの葉の幼虫

2014-11-20 | 昆虫

温室内に,なにかの拍子にブロッコリーの種子が落ちたらしく,たった一本ですが弱々しい姿で育っていました。引き抜くのはなんともかわいそうな気がして,そのままにしていると,結構育ってきました。

ところがところが,日が経つにつれてどんどん葉が惨めになっていきました。葉を食する幼虫の仕業です。収穫する気がないので,そのままにしていると,さらにひどい状況になっていきました。

 

 

 
モンシロチョウでも入って来て,産卵した結果,こんなふうになったのだろうとてっきり思っていました。しかし,幼虫はモンシロチョウでもなさそうなのです。

葉の硬い部分も,芯に近い軟らかい部分も,ばりばりといった感じで平らげています。葉でくらし,葉と同じ色で身を防衛しているので,外敵の目にとまりにくいのはモンシロチョウなどの幼虫とそっくり。

 
尺を取るような格好をするので,もしかするとシャクガの幼虫なのかもしれません。頼りないのですが,調べてもどうも同定できません。

 
からだを大きく曲げたとき,すごいカーブを描きます。大きな特徴です。


さてさて,いったいどんな蛹になり,どんな成虫に育つか,待つことにしましょう。 

 


イナゴの交尾

2014-11-19 | 昆虫

イナゴの交尾風景については,先日にも触れました。それで,今回は3回目ということになります。

畑に行くと,ブロッコリーにオス・メスのペアがいました。どうもここの住み心地がよいようで,たぶん同じペアだと思うのですが,よく見かけます。 このペアは,わたしを警戒する動きはちっとも見せません。


その数日後。畑のすぐ傍の農道に同じようなペアが一つ。こちらは,まさに交尾中でした。虫の目レンズで撮ると,メスの腹端が反り上がっているのがわかります。これを撮るのに,道に腹這いになりました。人に見られていたら,「あの人,道であんな格好になって,なにをしよってんかなあ」という感じでしょう。 


おもしろいなと思ったのは,こんな態勢なのに糞をすることです。これは至近距離から観察して初めてわかったことです。つまり,腹這いのお蔭なのです。

わたしの住む地域で,イナゴがとくに復活していきたという印象はありません。多少いるかなといった程度です。やはり,いったん自然が変わってしまうと,元通りになるのはそうたやすくはないということなのでしょう。 

すこしずつでも殖えていってほしいものです。間もなく,成虫はいのちを卵に託して姿を消します。冬間近です。

 


意外に見かけるテングチョウ,大発生しているテングチョウ

2014-11-18 | 昆虫

今年はテングチョウが思いのほか多く発生しているのでしょうか,いろんなところで見かけます。職場のプランターに植えているソバが開花すると,たくさん。ウォーキング道(国道の側道)沿いに生えたセイタカアワダチソウの花にもどっさり! 一本の穂に,三匹いることもあります。自動車が通過するたびに穂が揺れ,チョウたちがパアッと舞い上がります。見事な景観です。そんなわけですから,先日は家のアゲハの庭園でも見かけました。


それに,この間ヨッさんと話をしていると,次のようなことをおっしゃいました。「あんなあ,小さいきれいなチョウ,黒っぽうて赤っぽいチョウをよう見かけるんや。家の庭に飛んできて,2匹がちょこちょこもつれ合うように飛ぶんやな。機敏な動きやった。これまで見たことがなかった。あれ,なんというチョウかなあ」と。

これはまさにテングチョウの特性です。それで,そのことを伝えておきました。

さて,テングチョウの生態とそれについてのわたしなりの関心事を書きとどめておきます。

植樹はエノキ。集落内では,わたしが知る範囲では大発生している場所とはずいぶん離れたところに一本生えているだけ。年1,2回の発生。ふつうは成虫越冬して春産卵。4月下旬~5月上旬に孵化,その後羽化。夏眠して,秋に再び活動。そのまま越冬。つまり,1個体の生活環は比較的長いということです。

わたしの知らない箇所にもエノキが生えているのかもしれません。あるいは,テングチョウの移動能力がかなり大きいのかもです。来春,エノキに注目しておいて,新芽に卵はないか,葉に幼虫がいないか,関心を向けていこうと思っています。できれば,それらを画像に記録していきたいのです。 

 


マンサクの種子

2014-11-17 | マンサク

マンサクの実・種子について報告しましょう。早春,昆虫の力を借りて受粉に成功した子房が膨らんで,6月にはこんなにかたちの実ができてきました。


秋になってその実が熟し,中の種子がこぼれ落ちかけました。晴れた日,硬い実が縦方向に4裂して中から種がのぞきます。種は二つ入っています。たぶん,天気のよくない日は実が開かないのではないでしょうか。これも想像なのですが,大気の乾燥具合に応じて,うまく縦割れするのでしょう。


裂果の様子を観察しようとタイミングを待っていたのに,知らぬ間に種子がこぼれ落ちてしまっていて,ガッカリした経験が何度かあります。そうかといって,無理やり硬い実を手で開けようとしても大苦労します。採種するには,熟しているものを早めに採取して,袋に入れておけばやがて自然に実が開くのだとか。やはり,自然のなすがままがいいようです。

ところで,種子を集めようと思って木の下を探しても,落ちた種を見つけるのはまず無理です。というのは,庭に落ちた種子を偶然にも敷石の上で見つけたのですが,そこは木から2m離れたところでした。たぶん,種子は,落ちるというより軽く飛び散ったにちがいありません。その方が種子拡散に効果的な戦略です。ただ,実際その瞬間を見届けなくては推測の域を出ません。

それでわたしは,実が縦割れする直前のものにビニル袋を被せて観察しながらその様子を撮影し,種子を採取することにしました。

結果わかったのは,実が開き始めるとどんどん開いていくというより,じつにゆっくりとしたペースで開き終わるという点です。肝心の飛び散るかどうかは確認していません。このことから,たくさんの実が付いた木ではよく探していけば,開きかけた実のいろんな段階のものを見つけることができるように思われます。

採取した種子を来年の2月末には播種したいと思います。芽生えを観察したいのです。

 


あれこれ,いろいろあった11月16日

2014-11-16 | 日記

11月16日(日)。晴れ。日中は穏やかな天気で,とても過ごしやすい一日となりました。いろんなことをして,「今日はずいぶん動いたなあ」という感じがします。

午前。植木鉢に植えているウマノスズクサにジャコウアゲハの幼虫が一匹いるのを発見。霜が降りる日が続いているというのに,この姿。無事に蛹化するのでしょうか。


畑の手入れと収穫作業をしました。キャベツとブロッコリーの出来が思いのほかよく,自然の恵みに感謝するばかり。畑の片隅に植えているレモンにも,実がたっぷり。今日はその初収穫(夕方,知人宅に届けました)。


アゲハの庭園で,白菊を訪れた昆虫たちを追って写真に収めました。庭園にあるレモンの木では,アゲハの前蛹が蛹化間近。


午後,虫の目写真展の打ち合わせで,科学館を訪ねました。

暗くなって,日課にしているウォーキングに出かけました。途中,畦に立つシカ侵入防止用の支柱に,フクロウが! 懐中電灯で前方を照らして歩いていると,支柱になんだか大きなものがいるのを発見。5mほどに近づいたとき,フクロウの姿がくっきり見えたのです。フクロウは,突然の出来事にびっくりしたようで,パッと飛び去りました。

 

 


ふるさとを感じる『ちょこっと探検隊』

2014-11-16 | 随想

ふるさとを感じ,自然に親しむ,そんな機会が今の子には確実に減っています。仕事場にやって来る子に「土曜日,なにをしているの?」と尋ねると,「家でゲームをしている」という返事がいちばんに返ってきました。時間があれば,ゲーム漬け・テレビ漬けになっている一端が見えてきます。

それなら,すこしでも子らが外に出て活動できるように仕組むのがわたしたちの仕事になるのではないかと思い,土曜日だけに活動する『ちょこっと探検隊』を結成することにしました。ただ,これは不定期に行い,1時間だけのメニューにして,その内容についてはわたしが主導するものの,子らとの相談で決めることにしました。

今描いている内容は,裏山探検・発見ごっこ,山頂から「ヤッホー!」と叫ぶ,冬の昆虫探し,落ち葉で焼き芋づくり,ターザンごっこ,冬のセイヨウタンポポ探し,冬芽探し,杉玉鉄砲づくり,象糞ペーパーづくり,……,そんな感じです。子どもから出てくるものもたくさんあるはず。自然がある限り,テーマは事欠きません。マアいってみれば,ミニ自然教室なのです。

集まったのは小学3年生4人。この子らはギャング時代の真っ只中にいます。屈託なく思ったとおりに話し,行動します。反応がはっきりしているので,わたしも遠慮なく付き合えます。仕掛け人として,また地域人として,子らにできるだけ質のいい体験を提供したいと思っています。そして,わたしも子らからどっさり学んでいきたいと思うのです。

11月8日(土)は近くの川原で火打石を探しました。メンバーの1人は,今夏,「火打石で火を起こそう」という体験教室で学んだTさん。彼がリーダーになって,他のメンバーにコツを伝えてもらいました。石は次から次へと見つかり,子らは活動に大満足。

11月15日(土)。わたしが子らのためにつくっておいた火打ち金をプレゼント。火の怖さ,扱い方を伝えてから,Tさんに発火法を実演してもらいました。簡単に成功。この後,各自が試みました。驚くほど簡単に,みんなが成功。火との新しい出合いがここにはあったはずで,十分に充実感を覚えたようです。1時間ちょうどの活動で,「えっ! もう1時間が経ったの?」といっていましたから。

 


次は簡単な調理をすることになりました。火を起こして,その火でポップコーンをつくるのです。ついでに焼き芋づくりをしてもいいなと密かに思っています。ゲームやテレビより,はるかにたのしさが味わえるでしょう。 

 


ルリタテハ,前蛹直前の動き

2014-11-15 | ルリタテハ

ルリタテハの蛹が二つ,コップに挿したホトトギスの茎・葉に付いています。それらが前蛹になる直前の話,よくよく観察していて「ほほーっ!」と納得できたことがあります。

タテハチョウの蛹は腹端を固定面にくっ付けてぶら下がります。いわゆる“垂蛹型”をするのが特徴です。からだが垂れ下がったときに,ほかの障害物,たとえば他の葉や茎に触れるのは安全上よくないことです。蛹がそうなので,前蛹もまたその態勢に円滑に入れるようにしておかなくてはなりません。つまり,予め蛹化する位置をきちんと決めておかなくてはならないということなのです。

そのつもりで,前蛹に入ろうとしている終齢幼虫の動きを観察してみました。

脱皮とか,前蛹化とかといった大変化に移行する前,幼虫の動きはピタリと止まります。ふつう一日,二日は当たり前といった感じです。そして前蛹に移行する直前,終齢幼虫は少なくとも数時間じっとしています。それで,「ははーん,間もなく前蛹になるな」と直感できます。

やがて動き始めて,葉や茎やらを移動します。場合によっては葉の裏側で逆さまになってぶら下がります。きっとこれは,距離感を確かめているのでしょう。頭部が下にある障害物につかえないとなると,「ここは蛹になるのに適している」と本能がはたらくにちがいありません。すると,そこを前蛹になる位置と心得て,遠くに移動せずしばらくじっとしています。


そのうちに,腹端をくっ付ける絹糸を吐き出します。頭が左右に移動するので,よくわかります。この作業を終えると,逆さ向きになって腹端を付けてぶら下がるのです。


下の個体は別のものですが,やはり同じ動きを見せました。


体内に組み込まれた,こうした巧妙なしくみに脱帽です。ヒトの歴史よりずっとずっと長い生命史の中でかたちづくられた習性には,すっかり感動してしまいます。

 


初霜の降りた日

2014-11-14 | 日記

11月14日(金)。晴れ。最低気温0.4℃(午前6時32分),最高気温13.1℃(午後1時01分)。

今秋いちばんの冷え込みとなりました。朝起きて外を見ると,空は青く晴れ渡り,家周りの田に薄っすら霜が降りていました。放射冷却による冷えでしょう。さっそく家の前の田に行き,霜模様を撮りました。


そのあとアゲハの庭園に行ってみると,キクの脇で巣を張って獲物を待っているクモが,寒々とした姿を見せていました。まだ陽が当たっていないなかでの風景です。虫の目レンズを向けても,まったく動こうとしません。さすがにからだが冷えきっているようです。

 


観察を続けてきたアゲハの幼虫が前蛹に変わっていました。見ると,からだの表面に寄生バチ“コマユバチ” がいました。それも三匹も!


一度にこんなたくさん観察したのは初めて。それで接写レンズで撮っておきました。 

 
今頃になると,さすがにコマユバチの宿主は減っているのでしょう。「ここぞ」とばかりに,三匹も集まってきたにちがいありません。大した感知能力の持ち主です。

この結果アゲハはどうなるのか,気になります。コマユバチが産卵していたら,無事に羽化するはむずかしいと思われます。アゲハの受難です。

いろいろないのちとの出会いがこんなふうに続きます。寒さが増すにつれ,その機会は減るでしょうが,寒さに耐えて生きる姿は印象に残ります。この時期,まだまだたのしみが尽きることはありません。