11月8日(土)。
残った蛹がいつ羽化するか,とてもたのしみに待っていました。しかし,予想日をうんと越しているにもかかわらず,一向に羽化する気配が見られませんでした。ところが11月6日辺りからはっきり色彩が変わってきました。いよいよ孵化が近づいたのです。
午後3時30分。見ると,殻が裂け始めました。じつにゆっくり,ゆったりとした感じで。「さあ,出発だ!」なんて指令は,どんなふうに発せられて,どのようにして全身がそれに向かって動いていくのか,考えればふしぎです。
おかげで,慌てることなく写真に収めることができました。裂け目がぐっと大きくなりました。
出たあとは,すいすいと向きを変えました。こういう一瞬の写真が記録できるのは,ほんとうにうれしいばかりです。いのちを切り取るといった凄みが湧き上がってくる感じがします。この場面,「いよっ! 大統領!」とでもいいたくなる光景です。
殻に付いた状態で,翅を伸ばしました。あとは順調に推移していったのです。
この個体のついて,前蛹からの推移をまとめると次のとおりになります。
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前蛹になった日時……10月 2日(火) 0:00~6:00
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蛹化した日時…………10月22日(水) 0:30
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羽化した日時…………11月 8日(土)15:30
今回の観察でわかったのは,秋が深まる中での変態の場合,その進み具合はたいへん遅い,のろいという点です。蛹期間でさえ,暖かい時期と比べて6日程度長くなっているのです。明らかに,気温に左右されていると思われます。
成虫は間もなく越冬に入ります。そうして早春の日だまりに,『春の使者』として現れるのです。今年最後の個体が無事に羽化してなによりです。