の●今日の一枚 117●
Bill Evans Moon Beams
メロディーを聴く男、寺島靖国氏が「愛聴盤」だと語る、ビル・エヴァンスの1962年録音作品『ムーン・ビームス』(Riverside)。寺島氏によれば、かつてフランスの批評家がこの作品を評して「女の腐ったような作品」と言ったそうだが(『辛口ジャズノート』)、軍艦でいえば、「大鑑巨砲主義」、そういう時代もあったということだ。
最近のSwing Journal 誌上の論争などを見ると、寺島氏の意見にはあまり賛同できない私ではあるが、このアルバムを大きく評価する寺島氏の感性は大好きだ。美しいとしかいいようのないメロディー、繊細なタッチ、素晴らしいのひとことだ。
もちろん、林家正蔵(当時こぶ平)師匠のいうように、眠くなる、刺激が足りない、ベースがスコット・ラファロならもっと素晴らしいものになっただろうに……、などの評価もありうるだろう(『ジャズ批評別冊ビル・エヴァンス』)。けれども、心が疲れた時に聴くこのアルバムは格別である。② Polka Dots And Moonbeams の出だしを聴くと、あまりの美しい響きに、身体の力が抜け、心がとけていくような感覚を覚える。
Bill Evans (p) Chuck Israels (b) Paul Motian (ds)
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