WATERCOLORS ~非哲学的断章~

ジャズ・ロック・時評・追憶

星へのきざはし

2010年06月02日 | 今日の一枚(M-N)

●今日の一枚 272●

New York Trio

Stairway To The Stars

Scan10007

 晴れだ。太陽が輝いている。そよ風がここちよい。周囲からは田んぼの蛙の鳴き声と小鳥たちのさえずりが聞こえる。気持ちのよい朝だ。こういう朝には音楽は必要ない。自然の音にただ身をゆだねていれば良い。至福の時だ。ただ、昨夜の楽天イーグルスの逆転劇に興奮してちょっと飲みすぎたため頭が痛い。また、その後音楽を聴きすぎたようで、まだ耳の中で鳴り響いている。Swing Journal 誌の休刊の報に接して感慨深く、同誌が協力にプッシュしていたvenusレーベルの作品のいくつかを聴きなおしてみたのである。

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 一昨日につづいて、ニューヨーク・トリオ。2004年録音作品の『星へのきざはし』である。Swing Journal 誌の読者リクエストに応えた企画盤であり、スタンダード曲中心の構成だ。企画盤だがなかなかよいできだ。ジャケットもロマンティックでいい。ビル・チャーラップのピアノは、時に繊細で趣のある響きを聴かせ、時にスウィンギンによく歌うピアノを披露する。気分が良い。

 ビル・チャーラップという人はやはりうまいひとだ。職人タイプの人といってもいいかもしれない。魂を揺さぶるような「呪われた」演奏を聴いたことはないが、どの曲も合格点というか、楽しくあるいはしみじみと聴くことができる。何というか、芥川賞タイプというより直木賞タイプなのだろう。けれども、私はいつかこのピアニストが魂を揺さぶる真の傑作を創り出すことを期待している。それは例えば、『Love You Madly』収録の「Star Crossed Lovers」などを聴いてからそう思うようになった。静寂で深遠な響き……。

 ところで、最近のニューヨーク・トリオはどんな感じなのだろう。Swing Journal 誌の購読をやめてから、venusレーベル盤との距離が遠くなってしまったようだ。今月発売の「最後」のSwing Journal は買ってみようかと思う。