●今日の一枚 421●
Charles Lloyd
Hyperion With Higgins
怒涛の3月になりそうだ。卒業式と祝賀会の準備。入学試験と採点、そして選考会議。少子化の影響で、今年は二次募集の試験・採点・選考もしなければなせない。成績処理と進級認定会議もある。幹事長を務める職員クラブの送別会の準備と運営もある。一方で、HCを務めるバスケットボール部のスプリング・キャンプもあり、それにむけてチーム作りも進めねばならない。
今年は単位認定できないかもしれない生徒がいる。昨日から追指導をはじめた。今日から約3週間、みっちり勉強してもらう。それでだめなら単位は認定すまいと心に決めている。生徒を「落とす」ことにはエネルギーと勇気がいる。「情」の問題もあるが、不認定を嫌がる校長らとの対決もある。学級担任らを納得させることも必要だ。何より、自分自身の授業への向き合い方が問われる。ずっとそう思ってやってきた。自分の授業に対する緊張感と厳しさがないとだめだと思ってやってきた。そういう生き方は疲れる。もう少し妥協して楽に生きる方法もあるのだと思う。けれども仕方がない。性分なのだ。それがささやかな誇りでもある。
「宇宙のかけらになったビリー・ヒギンズへ捧ぐ」
実に魅惑的なコピーだ。チャールス・ロイドの1999年録音作品、『ハイペリオン・ウィズ・ヒギンズ』である。あの大傑作『ウォーター・イズ・ワイド』(今日の一枚36)と同一セッションである。そのセッションのうち、ロイドのオリジナル曲を集めたアルバムである。このセッションにも参加した名ドラマー、ビリー・ヒギンズが2001年の5月に急逝したのを機に発表されたものだ。チャールス・ロイドは、当初、このセッションを2枚組で発表するつもりだったようだが、諸般の事情で、2000年にバラード曲を集めた『ウォーター・イズ・ワイド』を先行して発表したようだ。ビリー・ヒギンズの急逝を受けもう一枚が急遽発表されることになり、追悼の意味を込めて『ハイペリオン・ウィズ・ヒギンズ』というアルバムタイトルになったようだ。
実にいい演奏である。発売とほぼ同時に購入していたのだが、なぜかあまり聴いてこなかった。けれど本当にいい演奏だ。① Dancing Waters , Big Sur To Bahia の美しさは筆舌に尽くしがたい。ビリー・ヒギンズの死を念頭におくとき、涙なくしては聴けないような演奏だ。この曲におけるブラッド・メルドーのピアノのリリカルさは、ちょっと言葉では言い表せない。チャールス・ロイドの哀しみを湛えた神秘的なサックスもいい。その音色に心が洗われていく。サウンドが心に沁み込んでゆき、リンパ液に溶け込んで身体全体にいきわたっていくようだ。不信心な私だが、何かしら敬虔な心もちになっていく。