30数年前、2度目の大学受験の年
最後の大学の合格発表の日は大学まで掲示板を見に行った
大学の校舎は坂の上に建っていて坂の所々に泥にまみれた根雪が残っていた
その大学は当時住んでいたアパートと同じ市内にあって
パチンコで負けてバス代も無かったし歩けない距離じゃ無かったから
てくてくと歩いて合格発表を見に行った
その日まで受けた大学すべて落とされ、この大学が最後の砦
究極のすべり止めだったから過去の受験を通して初めて発表を見に行った
が、しかし掲示板に僕の番号は無かった
またてくてくとアパートに歩いて帰った
途中に反対側から歩いて来た高校生のグループから
「兄ちゃん、ズボンのチャックが開いとるで」
と笑いながら指摘された
三畳一間のアパートに帰って水道の蛇口に口をつけて水を飲んだ
台所にいつの頃からか洗われずに置かれた食器が溢れ
2合炊きの炊飯器の中の飯は腐って異臭を放っていた
万年床の上に炬燵が置かれ
炬燵の上はゴミだらけ
金網の入ったすりガラスの窓を開けたら冷たい風が部屋に吹き付けた
空地の向こうに茶色の阪急電車が鉄橋を渡っていた
右に走るのは梅田行き
左に行くのは京都の四条河原町行き
春になると大学の新入生達がどちらか行きの電車に乗る
夢と希望に胸を膨らませ
しかし
右も左も僕の乗る電車は無かった