20歳の春に上京した
原宿でタケノコが踊り、聖子ちゃんとトシちゃんの全盛期
せっかく花の東京に出て来たと言うのに東京見物には行かず
行った先は案の定、パチンコ屋
学校が始まる前にあっという間に持ち金が全部無くなった
しょうがないのでアパート近くの電柱に貼ってあった弁当屋の求人を見てバイトを始めた
賄い付きだった
仕事中、さぼってばかりいたら3日でクビになった
幼なじみが大阪から出て来て
「東京を案内してくれ」
言うもんやから
「パチンコ屋しか知らん」
言うた
渋谷から歩いて行ける代々木公園まで行ったら
代々木の第二体育館でバスケット全日本のオールスターの試合が行われていた
何気に二人で入って試合を見ていたら
全日本Jrの4番が高校の同級生のTだった
試合後ファンの女の子からサインまで求められていた
僕はこの光景をそっと客席の隅から見ていた
Tとの出会いは中学1年のバスケットの練習試合
彼は隣町のバスケット部で一番背が高く
僕はうちの中学のバスケット部で一番背が高かった
Tは最初からレギュラーでポイントゲッターだった
万年補欠でどんくさい僕は毎日、上級生から殴る蹴るのイジメを受けていた
高校が同じになりTとクラスが一緒になり
Tはすごくもてて
僕は女子に鼻もひっかけられなかった
彼はすぐに全日本のJrに
僕はてっぱんの帰宅部に
高3の秋
Tは僕の隣か後ろの席だったんだが
鼻くそほじりながら、ふとTを見ると大学のパンフレットを見ていた
W大学やM大学の超有名大学
「どこに行こうかと思って・・」
(確かにこう言った)
僕はその頃、お気楽に卒業後の事なんてちっとも考えてなかった
確かにTは頭も良かった
反対にその頃の僕は追試だらけだった
帰宅部だのに
結局Tは茨城の国立大学に
僕は大阪でルンペンに
そして20歳の時にこのシツエーションで再会したわけだが
対極的な状況を上京したばかりの東京で経験した
それよりこの後、今でも忘れられない思い出がこの後、待っていた
Tには声もかけず幼なじみと二人で渋谷の歩道橋の上を歩いていた時
幼なじみに
「悪いけど金貸してくれるか?」
言ったら
幼なじみに
「どうせパチンコに使うんやろ?お前は信用ならんから貸せん」
こう言われた
「そうか、ははは!」
と濁したが
ショックだった
遠い昔
同じ体育館で向かい合っておじぎをした二人
一人は輝かしいスポットライトを浴びて
一人は友達にも信用されない日陰の道を歩いていた
ふぅ~~~
雨じゃ・・春雨じゃ!
昔、どっかのテレビで
「月さま・・雨が」
「春雨じゃ濡れて行こう」
とか言う場面があった
半平太さん、芸子さんと同伴出勤かアフターかな
京都の春・・・いいな
昔、鴨川べりを良く歩いたな
必ずパチンコでスッカラカンに負けて、まるで夢遊病者のように
いつも同じ事を思っていた
(こんな事ならパチンコをする前に新京極でうどん食っといたら良かった・・・)
(あのコシの抜けたふにゃふにゃなうどんが美味いんや)
(いっぺん、パチンコで大儲けしたら川床で飯し食いたいな)
とか
ふらふら歩いていちどなんか銀閣寺まで行ったな
哲学の小道を歩く一人のアホ
道は歩けても金が無いから寺には入れない
どこをどう歩いたか忘れたが帰りに京都大学の前を通ったんだ・・
門を見上げて
(わしには異次元な空間やな・・)
そうか
前原君はあの中にいたんやな・・
なんだか昔の光景がぐだぐだと・・
仕事をしよっと