HIROZOU

おっさんの夜明け

夏の思い出

2018-08-22 09:57:18 | メモリー

灼熱の陽がまだ余熱を発している夏の夕暮れ

あえぎあえぎ携帯片手にを長い坂道を上ると

「ここだよ」

見上げるとデッキの上から手を振る懐かしい笑顔の女性が

大きなビルが立ち並ぶオフィス街の古ぼけたマンション

30
年以上も時は流れ

彼女の笑顔に変わりは無かった

「疲れた?」

「いいや」

「もうお店を閉めるから」

「待ってる間、ビールでも飲んでて」

整理整頓された彼女の城

一人で生きて来たんだね・・

後楽園から九段坂まで

プラタナスの葉が幾らか日差しを防いでくれるけれど

熱を帯びたアスファルトは、まだ暑かった

「無意識に指を動かす癖は昔のままね」

「うん高校生の時から、根っから情緒不安定なんだ」

遠い昔の記憶の中に二人同じように並んで歩いていた

秋の気配が吹く夏の終わり

20
歳の僕と19歳の彼女

だれも見向きもしない地べたのタンポポのような二人

蹴られても、踏みにじられても

健気に咲く花

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