19歳の夏の終わり、住み込みでバイトをしていた白浜のホテルを引き上げて
大阪のアパートに戻って来た
風呂なし共同便所の三畳一間は申し訳程度に流しが付いていた
湿気った万年床に雨避けの庇の付いた窓ガラス
窓を開けて庇の隙間から外を覗くと雑草の茂った空地の向こうに鉄橋を走る阪急電車が見えた
左に向かうのは四条河原町行き
右に向かうのは梅田行き
僕は毎日どちら行きにも乗らずに毎日歩いて駅前のパチンコ屋に通った
「にぃちゃん、今日もパチンコかいな偉いせいが出るな」
毎朝寄る立ち食いうどん屋のおばはんが言うた
「ひろぞう、先に行っとるでぇ今日もアレンジや隣の台にタバコ置いとくわ」
「おう、たのむわ」
つれで同じプーのしげるに声をかけられた
しげるはシンナーを吸い過ぎて抜けた歯の隙間にタバコをはさんでしゃべれるという器用な男だった
白浜で貰ったバイト代はあっという間にパチンコ屋につぎ込み
しげると二人で倉庫番のバイトに行ったら二人とも三日でクビになった
結局いつもの親をだまくらかして金をせびり
また毎日パチンコ屋に通った
毎回金が無くなるまでパチンコ台に向かう
少し浮いても無くなるまでパチンコを打つもんだからほとんど儲かる事が無い
たまに風呂代を残して帰りに風呂屋による
一日パチンコを打ってると体中がなにやら脂っこいヤニの臭いがこびりつく
湯船浸かると
「ふぅ~~~ええ湯や、体も綺麗にさっぱりしてもうパチンコなんかせえへんぞー!」
とか言いながら
金が出来るとすっかりそんな事は忘れてパチンコ屋に向かう
確か
安威川?って言ったか
アパート近くに川が流れていてその鉄橋を電車が走っていたんだけど
秋風がそよそよと感じられる頃よく土手まで散歩した
川の中州にススキの葉が揺れて対岸の茨木の街のシルエットに赤い夕陽が浮かんだ
土手に座ってフーとタバコの煙を吹かした
その頃、女子体育大学が近くにあって
陸上部の子だろうか僕と同じ年くらいの子達が土手の上を走っていて
まぬけづらのプーの後ろをその子達が息せき切って走ってるんだよ
何かに向かって走り続ける彼女達と
止まったままの僕
その対比が印象的やったな
ふふふ
何気に図書館から借りて読んだ
一言で言うと・・すさまじい内容だ
エロ、グロてんこ盛り
数ページ読んで読むのを止めようかと思ったんだが
気が付いたら読破していて作者の他の本まで図書館でリクエストしてしまった
どういう思考回路の作者だろうかと思ったらホームレスをしているんだそうだ
人間的に直木賞作家の車谷長吉と少しだけダブりそうだけど
長吉は私小説が主だけどこの作者の場合は何と言うか・・
だけどしっかり文学作品してると思う??