HIROZOU

おっさんの夜明け

渋谷物語7

2021-09-09 17:00:00 | メモリー

桜ケ丘のほねほね学校が終わるのが夜の9時過ぎで

鉢山のアパートまではだいたい5分ぐらいで坂を下りてからまた坂を上る

代官山と一括りで呼ばれるこの地域に安い定食屋は全然無かった

唯一天ぷら屋とそば屋があったんだがこれがけっこう高いんだ

後に知ったんだがそば屋は渥美清さんの行きつけだったそうだ

(一度も見た事が無かった)

いまでこそこの界隈は高級フレンチなんかがその手の雑誌を賑わせていて

今日雑誌片手の大勢のおのぼりさん?を呼んでいる

夕食は5時に仕事先の病院で出た

それこそ食堂は夜間の医療系学校の授業に向かう学生たちばかりだった

それでもお腹が減ったのでいつも三浦さんのフルハムロード向かいのコンビニで買い出しした

だいたい一回2千円くらいかかったから月にしたら結構痛い出費だ

風呂屋にも寄った

恵比寿寄りの風呂屋、名前もずばりえびす湯だ

えびす湯でいつも煩い連中と一緒になった

いつも仲間同士で騒いでいた

その頃の人気バンド銀ばえの子分の子分連中だ?

わしは覚えとるその中の一人が役者Sだ

土地勘が出て来ると

中目黒の駅が近い事に気が付いた

アパートから歩いて10分ぐらい

一杯飲みたくなったら中目黒のガード下まで旧山の手通りの坂を下った

今でもあるけど大樽と言う名の大衆酒場

ツマミが皆、僕好みだと思っていたら創業者が高知出身だと後に分かった

昔は汚いお店(失礼)だったけど今では立派な建物になった

ガード下に大阪名物の串カツ屋が出来た事があった

それこそ串カツを目の前で揚げてキャベツ食べ放題二度漬け禁止の大阪スタイルだ

二千円程の出費で十分満足できた

熱燗の味を覚えたのがこの店だ

ご夫婦でやられていて愛想も良かったけれど

いつ行ってもお客が増えなかった

串カツは関西では受けても東京では請け入られなかったみたい

大阪でもそんなにファンが多くも無いもんな・・・

ある日、ひっそりとお店が無くなっていた

現在では中目黒のガード下はおしゃれな店ばかりだ

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渋谷物語6

2021-09-09 10:05:19 | メモリー

西武百貨店のウェイターを二時間で辞めてアパートに帰ろうとしたら

ロス疑惑の三浦さんの店フルハムロードの並びの弁当屋・・と言っても

宮内庁御用達の立派な仕出し屋がバイト募集と表に出ていた

賄い付きとあったので

「これや!」と飛びついた

弁当屋の仕事は洗い場だった

下げて来た仕出し弁当の器をひたすら洗う

たまに配達を手伝う

その年・・確か1982年

今でも覚えているけど浅草辺りに配達の途中か隅田川の吾妻橋にかかった時

吾妻橋の上と言わず現在の隅田川テラスの上といい

大勢の人が隅田川に竿を出してサンマを釣っていた

その時から後、何十年も隅田川にサンマが昇って来たなんて聞かないから

たぶんあの時だけなんだろう

あの頃に比べると隅田川は随分と綺麗になった

それでも今でも雨後の隅田川にはネズミの死骸が良く浮いている

弁当屋の洗い場は僕ともう一人同じ年ぐらいのO君と二人で働いていた

O君は少し知的障害があって仕事は雑なんだけど一心不乱にと言うぐらいに

マジメに取り組んでいた

僕はそれを良い事にしょっちゅう手を止めてうんこ座りして煙草を吹かしながら

「せいが出るのぅ~~」と横目でO君を見あげた

O君はそんな僕に興味が無いかのようだった

そんな僕の仕事ぶりを板場の向こうから眺めているおっさんがいた

賄いはさすがに仕出し屋と言うだけあって素晴らしく美味かった

初めて食べるような洋食が多かったな

僕は仕事はしないんだけど賄いだけはいつも大盛りだ

大盛り飯を食べてる最中に先ほどの板場のおっさんが近づいて来て

「僕はここの社長なんだけど君はいつ頃、辞めてくれるの?」

と聞かれた

(社長が現場で働いているなんて知らなかった)

(これはもう辞めろ)と言っているんだ

と思って

「今から辞めます」

とその時を限りに弁当屋を辞めた

僕の人生で病院以外にバイトをしたのはこの弁当屋が最後だ

その後のバイト先は皆病院の下働きだった

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渋谷物語5

2021-09-09 09:30:27 | メモリー

雨・・降るし暇やな・・

20歳で大阪から上京したんだけど学校が始まるまで大阪にいてもしょうがないんで

その年の2月にもう大阪のアパートを引き払って東京に出て来た

そうしたところ案の定と言うかやっぱりと言うか入学より2か月も前に

渋谷センター街のパチンコ屋に嵌って持ち金が付きかけた

しょうがないので入学より前にバイトを始めた

西武百貨店の社員喫茶室のウェイターを募集してたから

(社員喫茶室なんて絶対に暇だろう)と思って働き始めたけど

案に反してめっちゃ忙しい

それに少ない休憩時間にお茶しようとしている売り子さん?達の目つきが怖い

少しでもお茶出しが遅いと罵声がとんでくる

「やめさして下さい」とたった2時間で辞めた

同じ日にバイトで入った他の二人も2時間で辞めた

それ程に過酷な職場だった

(同じ時給ならラクな方がいい)

同じ日に辞めた二人のバイトと外に出て話をした

聞いてみたら二人とも同い年の20歳で無職だ

一人は沖縄から出て来たばかりで沖縄ではクラブのボーイをしていたそうだ

(クラブと聞いてそう言う世界もあるのかと感じ入った記憶がある)

もう一人は東京者で日曜日には竹下通りでタケノコをしていると言った

(20歳にもなってタケノコなんてアホちゃうかと正直思った)

東京者が

「2時間働いたんだから2時間分の給料を貰いに行こう」と言うので

僕は

「俺、そんな恥ずかしい事ようせんわ」と言うた

3人で喫茶店で話をして僕が上京したばかりでどうのこうのと言ったら東京者が

僕がまとまった金を持っているんじゃないかと僕の懐を狙った

うまい事言って何とか僕から金をせしめようとしているのがみえみえだった

「僕、今教習所に行ってるんだけど少しばかり貸してくれないかな」

・・とか言いよる

初めて会った奴に金を貸してくれと平気で頼む東京者に驚いた

 

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渋谷物語4

2021-09-09 08:42:14 | メモリー

ほねほね学校にはいろんな学生がいて

博多出身のKと知り合った

親もほねほねマンで2代目なんだけど

見た目に剃りこみに近いものがあって一見反社会勢力の若衆だった

趣味がボートレースでセンター街裏の風俗店にも出入りしていた

ある日そのKが

「ボッタクリにあったっちゃ!とりかえしに行くばい」

「ひろぞうさんも加勢してくれんな」

(それってひょっとして殴り込み)

ほねほね学校の同級生数人に加勢を頼んだ

九州出身の数人がそれに応じた

(わし・・四国やし・・気が小さいし)

「俺ぇ~最近腹の具合がなんとかかんとか」とかごまかして断った

その頃のほねほね学校は特に夜間なんだけど柔道の猛者?が何人もいて

一目見る限りどこぞの〇事務所?より迫力があったから

血の気が多い所もあった

空手道場に通い出した小学生が空手着を着た途端少し強くなったと勘違いするのと同じか

実際僕も柔道の時間?猛者に乱取りをつけて貰ったけどとても相手にならなかった

ボッタクリを取り返しに行った連中は話し合いだけで何とか解決したみたいだけど

Kが僕に対しての軽蔑感だけは拭えなかった

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渋谷物語3

2021-09-09 08:15:12 | メモリー

NHK近くの青山通りだったか男前のハナダと歩いていたら

怪しげな男が近づいて来てハナダに名刺を差し出しながら

「君、モデルにならない?」 と声をかけてきた

ハナダは胡散臭そうにしていたけど 僕が

「ええ話やないか、わしも一緒に付いていったるわ」と

二人して宮益坂にあったモデルクラブの事務所に行って見た

なかなか人の出入りのあった事務所だったけどスカウトマン曰く

レッスン料が30万円ほどかかると言う ハナダが

「ふざけんな!帰ろう」と言うので

「そやな」と僕も帰りかけたら スカウトマンが

「じゃレッスン料はいらないからモデルクラブの写真登録料2万5千円をはらってくれたら

仕事を回すよ」と言った

登録だけなら僕もどうだとスカウトマンが言ったけどハナダが

「帰ろう帰ろう」と言うので帰った

ハナダは芸能界に何の興味も無いみたいだったけど

僕はちょっとだけあった

えへへ!

ハナダとは帰って来たけど

その後、一人でハナダに内緒でモデルクラブに引き返し

「僕ぅ~2万5千円払ってモデルやりますわあ」とモデルクラブに所属した

3回ほど映画のエキストラの仕事に出たけんだけど

よく考えると月曜から土曜日の夜まで仕事と学校があって

モデル?の仕事が出来るのが日曜日だけと言う現実を考えたら

とても続かないので現実問題としてモデル?は辞めた

だけど俳優志望のエキストラ達と知り合って下北沢に飲みに出かけたり

有名なTと言う俳優さんが出番待ちの時に声をかけてくれたり

なかなか有意義な体験をする事が出来た

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